立替金も金銭債権の一種であり適切に回収していくことが大切です。早期に回収することが予定されているため、長期間回収できないと貸付金等に認定され追徴課税などのリスクが生じることもあります。立替金は比較的金額が小さいことが多く回収が後回しになりやすいため注意が必要です。

 

この記事では、立替金とは何かについて仕訳方法も含めて解説します。

 

立替金とは

立替金とは、他者が負担すべき金銭債務について一時的に立て替えた場合の勘定科目です。自社の役員や従業員、取引先、関連会社などに代わって支払いをすることで生じます。

立替金の特徴は、「他社が負担すべきもの」を代わりに支払うことと、「一時的」なものでありすぐに回収されることが予定されている点にあります。

立替金が生じたときには仕訳が必要です。立替金は、売掛金や未収金と同様に本来負担すべき者に支払いを請求できるため、金銭債権として「資産」にあたります。

 

企業が立て替え払いをするケースには以下のようなものがあります。

 

立替金の発生する具体例(従業員や役員のケース)

・従業員が支払うべき社会保険料を立て替えた場合

・従業員が負担する社内行事の費用を立て替えた場合

・役員が支払うべき旅費を立て替えた場合

・給与の前払い(貸付金など別の勘定科目での処理が適切なことも)

 

例えば、従業員が負担する雇用保険料について休職しているため自社が代わりに支払った場合には立替金の勘定科目を使って仕訳することになります。

従業員が負担すべき忘年会や送別会、社員旅行などの費用について会社がいったん負担することもありますが、このようなケースでは会社は債権者として従業員に請求できるため立替金として仕訳します。

給与を前払いすることがありますが、それが短期のもので利息をつけないのであれば「立替金」で仕訳することが考えられます。利息をつけるようなケースでは「貸付金」で処理します。

 

立替金の発生する具体例(取引先のケース)

・取引先が負担することになっている配送料を立て替えた場合

・取引先が支払うべき材料費を立て替えた場合

・取引先が負担すべき手数料を立て替えた場合

・取引先が支払う約束の交通費を立て替えた場合

 

業務で出張した際の交通費や配送料、各種手数料、材料費などを立て替えた場合には「立替金」などとして処理します。ケースによっては売上として処理することも考えられます。

 

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仮払金とは

仮払金とは、勘定科目や金額が不明確な支払いについて使用する一時的な勘定科目のことです。経費の内訳や金額が明確でない支出をするような場合や、仕訳の際に使途不明のものがあるときなどに使用されます。

例えば、従業員の出張費用や取引先の接待費用をあらかじめ支出する際に「仮払金」の勘定科目を用います。

仮払金は費用ではなく(流動)資産にあたります。返金される可能性があり費用として確定していないからです。

あくまで一時的な勘定科目であるため具体的な使途や金額が確定した際に、本来の勘定科目に再仕訳が必要になります。

 

立替金との違い

立替金は金銭債権です。本来負担すべき人に代わって支払ったので、その人にお金の返還を請求できる権利です。支出の目的や金額も当初から明確です。

これに対し仮払金は、支出の目的や金額が不明確な際に使用される暫定的なものです。自社が負担すべき性質のものが多く、費用として最終的に処理できるものが多いのも特徴です。

 

 

立替金

仮払金

支出の目的・金額

明確

不明確

最終的な負担者

第三者

自社が多い

経費

経費にできない

経費にできるものが多い

 

その他立替金と混同しやすい勘定項目

仮払金以外にも間違いやすい勘定科目があるため整理しておきます。

 

貸付金

貸付金とは、誰かにお金を貸し付けた場合の金銭債権であり勘定科目です。貸し付けた相手方に対してお金を請求できる権利があるため資産項目です。返済期日が1年以内のものは「短期貸付金」(流動資産)、返済期日が1年を超えるものは「長期貸付金」(固定資産)となります。

貸付金は、返済期日や利息が定められていることが多いのに対し、立替金は期日や利息が特に定められていないことが多いといえます。

立替金の支払いが遅れている場合には貸付金に変更し返済期日や利息を定めることも検討します。

 

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預り金

預り金とは、他人のために保管している金銭であり、預けた本人または第三者に支払うための金額を表す勘定科目のことです。流動負債にあたります(返済期限が1年を超えるものは固定負債となります。)。

役員や従業員、取引先などから、その負担する債務の支払いを代わりに行うときなどに使用します。

例えば、源泉所得税や給与から天引きした社会保険料は会社が形式的には支払いますが、本人である従業員のお金で支払っているので預り金です。

 

立替金との違いは、「誰のお金か」という点です。

立替金の場合は自社のお金で支払っています。そのため債権者として本来の負担者にお金の返金を請求していきます。預り金はあくまで他人のお金なのでそこから支払っても債権は発生しません。

 

未収入金

未収入金とは、営業活動以外の取引により生じた金銭債権のことです。例えば、事務所用途として使っていた土地や建物を売却した際の代金債権などです。

立替金が本来の負担者に代わって第三者に支払った結果生じた債権なのに対し、未収入金は直接の取引によって生じた債権です。

 

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立替金の仕訳方法

基本的な立替金の仕訳についてまとめておきます。

 

立替払いをした場合

立替払いをしたら仕訳も必要となります。立替金ではなく貸付金などの他の勘定科目を用いることが適切なケースもあるため注意します。

 

<ケース1>社員の親睦会費用5万円を立て替えるため現金で支払った

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

立替金

50,000円

現金

50,000円

 

<ケース2>取引先が負担することになっている交通費1万円を立て替えた(領収書を渡して実費精算する場合)

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

立替金

10,000円

現金

10,000円

 

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立替金を回収した場合

立替金が支払われたときには消込処理を行っていきます。立替金は資産である債権ですから支払いがされ減少したときは貸方に記帳します。

 

<ケース1>親睦会費用として立て替えた5万円が現金で支払われた

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

現金

50,000円

立替金

50,000円

 

<ケース2>取引先のために立て替えた交通費1万円が振り込まれた(領収書を渡して実費精算する場合)

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

普通預金

10,000円

立替金

10,000円

 

立替金は金銭債権ですから忘れずに回収することが大切です。立替金の回収が長期に渡ってできないときは貸付金に切り替えることも検討します。

 

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立替金が売上金になる場合

取引先に対する立替金について領収書を先方に渡さない場合には、立て替え時に経費として仕訳し、相手からの入金時に売上として処理する方法が考えられます。

 

<ケース3>取引先が負担することになっている交通費1万円を立て替えた(領収書を相手に渡さない場合)

 

【立て替え時】

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

旅費交通費

10,000円

現金

10,000円

 

【入金時】立て替えた交通費が売上金10万円と一緒に振り込まれた

借方科目

借方金額

貸方科目

貸方金額

普通預金

110,000円

売上

110,000円

 

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※仕訳や経費、領収書などの処理については解釈やケースによって異なることがあります。実際の処理については税理士などに必ずご相談ください。

 

まとめ

・立替金とは、他者が負担すべき金銭を一時的に肩代わりしたことを示す勘定科目です。本来の負担者に金銭を請求できる債権であるため資産の一種です。

・立替金は、従業員や役員が負担すべきものについて生じるだけでなく、取引先が負担すべき費用を肩代わりすることでも生じます。取引先の立替金については領収書の宛名や交付の有無によって仕訳方法が異なることがあります。

・仮払金とは、勘定科目や金額が不明確な支払いについて使用する一時的な勘定科目のことです。立替金との違いは、支出の時点で使途や金額が明確であるかなどがあります。

 

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立替金も債権であるため適切に回収していく必要があります。回収に時間がかかると時効にかかる恐れがあるだけでなく、貸付金など別の勘定科目として認定され追徴課税などのリスクが生じることもあります。たとえ少額であっても適時に回収することが求められます。

 

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