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売掛金や未収金など金銭を目的とした債権にはいろいろなものがあります。
契約の内容によっては、「金額債権」や「金種債権」の違いもあります。債権の種類や内容によって債権回収の方法も変わってきます。
この記事では、金銭債権とは何かを基本的な部分から詳しく解説していきます。
金銭債権とは
債権とは、特定の人に対して一定の行為を請求できる権利のことです。この一定の行為のことを「給付」といいます。反対に、特定の人に対して給付をしなければならない義務を債務といいます。
金銭債権とは、金銭の給付を目的とした債権のことです。普通は一定額の金銭の支払いを目的とします。反対に、金銭の支払いをしなければならない義務のことを金銭債務といいます。
金銭債権の特徴
金銭債権は金銭の支払いを請求できる権利のことです。つまり、金銭という「物」の引き渡しを求める権利といえなくもありません。
ですが普通、金銭の価値は物としての価値ではなく、そこに表示された価格にあります。
そのため金銭を支払うときには、直接現金を引き渡す必要はなく金融機関を通じて相手の口座に振り込むなどの方法も取り得ることになります。この点で、家や自動車などの「物」を給付の目的とする通常の債権とは異なることになります。
金銭債権の債務者は、原則として債務者自身の選択により各種の通貨で支払うことができます。
例えば、1万円の支払い債務がある場合、原則として債務者は1万円札で支払うことも、5千円札で支払うことも、千円札で支払うこともできます。ただし、契約や慣習で特定の種類の通貨で支払うことになっているときにはそれに従うことになります。
通常の物の引き渡し債権では目的物を特定しなければなりません。特定されることで実際に引き渡すことが可能となるからです。ですが金銭債権の場合には価値そのものが目的となっているため金銭の特定は問題となりません。そのため、目的物が滅失してしまうことはなく給付できなくなることはありません。通常の物の引き渡し債務であれば特定された目的物が滅失してしまえば履行不能となります。
これに対し、金銭債務の場合には履行不能の問題は生じないことになります。
損害賠償責任についても特徴があります。
債務をきちんと履行しない場合に、それが債務者に責任があるときには、債権者は損害賠償を求めていくことができます。通常の債務不履行の場合には、それが不可抗力によって生じたときには損害賠償請求することができません。
これに対し金銭債務の場合には、支払いが遅れた理由が不可抗力であっても責任を免れることができないことになっています。
また、通常の損害賠償請求については債権者が損害を証明しなければなりませんが、金銭債権については証明が不要とされています。この場合、原則として遅滞の責任が生じた初めの時点の法定利率が賠償額となります。法定利率は年3%が原則ですが3年ごとに見直されることになっています。2020年3月31日以前の遅滞については年5%(商行為の場合年6%)が適用されます。契約で約定利率を定めていた場合に、それが法定利率を超えるのであれば約定利率を請求することができます。
通貨
通貨とは、強制通用力のある支払い手段のことです。
「強制通用力」とは、法律により認められた支払い方法として通用する力のことです。
強制通用力がある通貨で支払いがされると、債権者は原則として受け取りを拒否することができません。
現在、日本で発行されている紙幣は日本銀行が発行する「銀行券」ですが強制通用力が認められています。これに対し貨幣(硬貨)は、額面価格の20倍の範囲で強制通用力が認められています。つまり、一つの種類ごとに一度で20枚まで強制通用力があります。
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金銭債権の具体例
金銭債権にもさまざまなものがありますが、身近な債権である「預金債権」、「売掛債権」、「賃料債権」について説明しておきます。
預金債権とは、預金契約に基づき生じる金融機関に対する金銭債権のことです。
預金とは、銀行などの金融機関を受寄者とする金銭消費寄託のことをいいます。消費寄託というのは、受寄者(預かった人)が預かった物を消費することができる保管契約のことです。預かったお金を使うことができるため、銀行は預金を運用して利益をあげることができます。
預金には「普通預金」、「定期預金」などの種類があります。「普通預金」は期限の定めがないため、いつでも返還を請求することができます。「定期預金」はいつでも引き出せるわけではなく契約に基づいて返還を請求していくことになります。
売掛債権とは、営業活動として商品やサービスを提供した場合に、支払いを後払いにしたときの支払い請求権のことです。売掛金や、受取手形、電子記録債権などの種類があります。
賃料債権とは、賃貸借契約に基づく対価として賃貸人が賃借人に対し請求できる金銭債権のことです。借地借家法では「借賃」といいます。
金銭債権にはいろいろなものがあり、契約内容によって行使できる条件が異なることもあります。そのため、契約書に書かれている内容をよく確認することが大切です。
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金銭債権の種類
金銭債権にも種類があります。一般的に「金銭債権」というと「金額債権」を意味しますが、他にも「相対的金種債権」、「絶対的金種債権」、「特定金銭債権」があります。契約の内容によって種類が変わります。
金額債権
金額債権とは、一定額の金銭の給付を目的とした債権のことです。特に理由がない限り金銭債権といえば「金額債権」のことを指します。通貨価値そのものが目的となるため物としての個性は問題となりません。そのため、強制通用力がある限りどの通貨で支払うかは基本的に債務者の自由です。
例えば、Aが10万円の商品をBに販売した場合、Aは10万円の金額債権を取得したことになります。Bは契約や慣習などがない限り、強制通用力のあるどの通貨で支払ってもいいので、千円札で10万円全額を支払ってもいいことになります。
ただし、法律で規制されているようなときを除き、契約自体を強制することはできないため対面販売などであれば契約自体を断ることは可能です。
相対的金種債権
「金額債権」に対して、「金種債権」というものもあります。
相対的金種債権とは、特定の種類の金銭の一定量の給付を目的とした債権のことです。
例えば、100万円の商品の売買契約において支払いの際に1万円札で支払う約束をしたような場合です。この場合には、1万円札で支払わなければならず5千円札や千円札で支払うことはできません。1万円札である限りどの1万円札で支払っても問題ありません。あくまで物としての価値ではなく通貨としての価値を重視しているからです。そのため、目的の通貨が弁済の時に強制通用力がなくなっているときには他の通貨で支払う必要があります。
絶対的金種債権
絶対的金種債権とは、指定した種類以外の金銭での給付を認めない金銭債権のことです。
収集家がコレクション目的で記念通貨やめずらしい貨幣を集める際などに利用されます。
例えば、「〇年オリンピック開催10万円記念硬貨」などと給付の目的が指定されたものです。この場合、1万円札など別の通貨で10万円を支払うことはできません。目的を達することができないからです。たとえ強制通用力を失っても指定された金銭で支払う必要があります。
特定金銭債権
特定金銭債権とは、特定の金銭の給付を目的とした債権のことです。金銭の種類ではなく、「目の前にあるこの通貨」というように物として特定したものです。
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まとめ
・債権とは、特定の人に対して一定の行為を請求できる権利のことです。一定の行為のことを「給付」といいます。一定の行為をしなければならない相手方の義務のことを「債務」といいます。
・金銭債権とは、金銭の給付を目的とした債権のことです。
・金銭債権の債務者は原則として各種の通貨で支払いをすることができます。
・金銭債務は履行不能となることはありません。履行遅滞の際には損害賠償(遅延損害金)を請求することができます。損害の証明は不要であり、債務者は不可抗力を言い訳にすることもできません。
・金銭債権には種類があり、「金額債権」、「相対的金種債権」、「絶対的金種債権」、「特定金銭債権」があります。金銭債権といった場合には通常「金額債権」のことをいいます。
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