養育費が不払いになると生活が難しくなります。一刻も早く養育費を支払ってもらえなくては困ります。

養育費の不払いについてはいろいろな法的な制度が用意されています。

養育費の額を定めるところから、履行勧告、相手の勤め先を突き止めたり、給料などを差し押さえたりなどです。

 

この記事では、養育費不払いの対処法についてくわしく解説していきます。

 

養育費とは

養育費とは、子供を育てていくために必要な費用のことです。具体的に言えば、子供が社会的に自立できる年齢までに必要となる費用のことであり、衣食住にかかる費用のほか、医療費や教育費などが含まれます。

両親には子供を扶養する法的な義務があります。そのため、両親が離婚するなどして一方の親が監護・養育していたとしても、両親がともにそれぞれの経済力に従って養育費を支払う義務があります。

 

ところが養育費の支払いについて分担額が決まらなかったり、支払うと約束したのに約束を守ってくれなかったりという問題が起こることがあります。

 

養育費の不払いが発生した場合の対処法

養育費を支払ってもらえない場合には、落ち着いて対処することが大切です。

ひとつひとつ順を追って対処していきましょう。

 

相手に連絡する

養育費の回収では、まずは不払いの相手方に対して電話やメールで催促をしていきます。他人に知られないで催促できるのであれば、LINEなどでも問題ありません。「〇月〇日まで払ってください」と支払いの期限を決めて催促します。

 

養育費の不払いが起きたときには、ソフトな方法からスタートし、相手が応じない場合は少しずつ力の強い方法に変えて行くことがポイントです。

 

家庭裁判所の制度を利用する

養育費の額が決まっていないときには家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。

裁判官と調停委員(民間人2人)が間に入って解決案を提示してくれます。

 

養育費の支払義務を定めた調停調書や審判書、確定判決がある場合には、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうことができます。公正証書や当事者間の合意のみでは利用できません。

 

履行勧告は、調停や審判での取決めを守らない人に対して家庭裁判所から「取決めを履行しなさい」と勧告してもらう制度です。履行勧告の手続きを取ると家庭裁判所が相手方を説得したり、勧告したりしてくれます。家庭裁判所からの勧告ですので、相手方がプレッシャーを感じて養育費の支払いに応じる可能性があります。

 

履行勧告の手続きに費用はかかりませんが、強制力がないという特徴があります。あくまで説得や勧告に留まるため、無視する相手から強制的に養育費を回収することはできません。

 

履行命令は調停や審判での取決めを守るよう「命令」してもらう制度です。相手方が正当な理由なく履行命令に従わない場合は過料に処されることがあるなど、履行勧告よりもさらに強いものとなっています。

ただし、過料に処されても養育費に充てられるわけではありませんし、相手の経済状況を悪化させることもあるので、履行命令については慎重に検討する必要があります。

 

強制執行の手続をとる

強制執行は債務名義(調停調書や審判書、執行証書などの公的な文書)がなければできません。履行勧告に強制力はありませんが、強制執行の場合には強制的に養育費の回収をすることができます。

 

養育費の不払いに対しての強制執行では、元配偶者の給与などを差し押さえていきます。給与は毎月の安定収入なので、養育費を回収しやすいのです。また、給与の差押えは、元配偶者が給料をもらっている会社へ通知が届きます。そのため、給与の差押えをする旨を元配偶者に告げれば、職場への体面を気にして養育費の支払いに応じてくれる可能性があります。

 

 

裁判所費用

電話での申出

効果

履行勧告

なし

できる

制裁なし

履行命令

なし

できる

過料の制裁あり

強制執行

あり

できない

強制的に回収できる

 

将来の養育費

養育費の強制執行では、不払いの養育費があれば、支払期限が未到来の養育費(将来の養育費)も差押えできるという特徴があります。養育費は毎月発生するにもかかわらず少額であるという特徴があり、不払いのたびに強制執行しなければならないとすると負担が大きく、事実上養育費の支払いが受けられないことになってしまいます。そのため、給料や家賃収入などの継続的に発生する金銭については将来分も差し押さえることができることになっています。

ただし、全額を差し押さえてしまうと相手も生活ができなくなってしまうため、原則として給料等の2分の1までに制限されています。

 

<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説

 

弁護士に相談する

養育費の不払いの問題では、相手方に連絡を取りたくないという方もいらっしゃいます。

 

ご自分で連絡することが難しい場合は、弁護士に代理人となってもらうことで直接交渉せずに済ませることもできます。

 

また、弁護士であれば相手が支払いに応じてくれなくても状況に応じて柔軟に対処することができます。話し合いで支払いに応じてくれることもありますし、公正証書を作成したり、強制執行をしたりなどさまざまな方法を適切にとることができます。

 

不払い養育費を強制執行により差押えできないケース

養育費が不払いとなったとしても強制執行ができないケースもあります。

 

債務名義がない

強制執行するには調停調書、確定した家事審判書や判決書などの債務名義が必要になります。口約束や普通の文書だけでは、すぐには強制執行することができません。

 

公正証書も債務名義になりえます。養育費の取り決めを公正証書に残していれば、訴訟や調停を経ずに強制執行ができる可能性があるのです。

ただし、すべての公正証書が債務名義になるわけではありません。

公正証書が手許にある場合、まずは文面の確認をしてください。

「養育費の支払いを履行しない場合はただちに強制執行に服する旨の記載(執行認諾文言)」があるかどうかがポイントになります。執行認諾文言が記載された「養育費の支払いを命じた公正証書正本」があれば債務名義になります。

 

このような公正証書がない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てたり、通常の書面などで養育費について合意している場合には訴訟を起こしたりして債務名義を取得する必要があります。

 

相手の住所が不明

元配偶者の所在がわからない場合もあります。所在がわからなければ催促をすることもできません。

元配偶者が行方不明になっている場合、住民票や戸籍の附票を確認することによって足取りを追うことができます。戸籍の附票には住所の履歴が記載されているからです。

 

戸籍の附票を確認することによって元配偶者の現住所を確認することができます。弁護士に依頼することで代わりに住所を調べてもらい請求手続きもすべて任せることができます。

 

<関連記事>お金を貸した相手の住所がわからない場合はどうする?住所を調べる方法とするべきこと

 

相手の支払い能力に問題がある

相手方の経済力に問題があり強制執行したくても差押え対象となる財産がないときもあります。まとまった財産がなくても給料などの収入があれば勤め先を特定し給料の差し押さえを検討します。勤務先が分からないときでも「第三者からの情報取得手続」によって突き止められる可能性があります。手続きが少し難しいため弁護士に依頼することをおすすめします。

 

弁護士に依頼するメリット

養育費の不払いがあったときに弁護士に相談するメリットを見ていきます。

 

内容証明郵便で請求してもらえる

内容証明郵便は、誰から誰に対してどのような内容の文書が送られたかを郵便局が証明してくれるサービスです。

内容証明郵便を受け取るだけで相手方は心理的なプレッシャーを受けて支払いに応じることもあります。特に弁護士の名義で内容証明郵便が送られてくるとプレッシャーは大きくなります。

 

内容証明郵便は一般の人から送ることもできますが、インパクトが弱くなりますし適切な文章を書くことは簡単ではありません。

弁護士であれば内容証明郵便を送付するのが適切なケースなのか判断し、送付すべき時に適切な内容で請求することができます。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

任意に支払ってもらいやすくなる

養育費の不払いを続けてきた相手であっても、弁護士から請求をすることで素直に支払ってもらえることがあります。弁護士が乗り出したことで法的手続きをとられることを懸念して自分から支払ってくれることがあるのです。

 

交渉を弁護士に任せられる

養育費の交渉をすることは簡単ではありません。適切な養育費がいくらくらいなのか一般の人では判断がつきにくく相手の言いなりになってしまうおそれがあります。また、相手との関係によっては相手となるべく関わりたくない人もいると思います。

不払い養育費の交渉は、ご自分で行うと大変な思いをすることも多いですが、基本的に面倒な交渉は弁護士が引き受けてくれます。養育費の相場や法的な根拠に基づいて交渉してくれるので安心して任せることができます。

 

法的な手続きが利用しやすい

法律に詳しくない一般の人では家庭裁判所の手続きを利用することはハードルが高いと思います。調停や審判手続き、場合によっては訴訟になることもありますが個人で行うには荷が重いと思います。その結果として適切な養育費を受け取ることができず泣き寝入りになってしまうこともあります。

弁護士に依頼することで適切な法的手続きを利用することが可能となり、難しいことは弁護士に任せることができます。

 

<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説

 

まとめ

・養育費の不払いが起きたときには、相手に電話などで催促することから始めます。相手の態度に応じて請求の強さを変えていきます。

・養育費の不払いがあったときは、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうことができます。

・調停調書などの債務名義があれば給料などを差し押さえることができます。

相手との交渉や法的な手続きは大変ですが、弁護士に依頼することで任せることができます。

 

養育費の不払いでお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

養育費を支払ってもらえなくて困っている方へ。

 

養育費についてはさまざまな法的な手続きが用意されています。

ご自分で手続きをすることに不安がある場合には弁護士にご相談ください。

弁護士が交渉することで素直に支払ってもらえることもあります。