給料の未払いがあったときには専門家に相談されることをおすすめします。給料未払いの相談先としては、弁護士や司法書士、労働基準監督署、社会保険労務士などが考えられます。

この記事では、給料の未払いがあったときの相談先について詳しく解説します。

 

給料未払いが起きる原因

給料など労働の対償として雇い主が労働者に支払うものを「賃金」といいます(労働基準法11条)。賞与や手当など名称は関係ありません。雇い主が支払うべき給料が未払いとなっているときは労働基準法24条等に違反することになります。給料未払いへの対処法は給料未払いの原因によって変わってきます。

 

給料の未払いに気づいていない

給料支払いには「経理」、「総務」、「人事」部門が関わります。事業者にもよりますが給料計算と支払いが別部署に分かれていることがあります。給料の支払い手続きのどこかで事務処理上のミスが発生して未払いとなる可能性があります。

規模の大きくない事業者の場合には単に給料の支払いを忘れている可能性も考えられます。

いずれのケースであっても給料未払いの原因が事務処理上のミスに過ぎないため担当者に連絡することで問題が解決することが期待できます。もし給料の未払いを認めてもらえないときには給料を支払ったことの証拠を求めていきます。残業代については反論されることもあるため証拠を集めておきます。

 

経営状況の悪化

事業者の資金繰りが悪化して給料が未払いとなることもあります。業績の悪化があったとしても給料未払いは正当化されません。給料は原則として全額を一定期日に支払う必要があります(労働基準法24条)。給料債権は先取特権に当たり優先的に弁済してもらうこともできます(民法306条2号、308条)。先取特権は抵当権のような担保権の一種であり訴訟をしなくても一定の財産を差し押さえることができます。ただし先取特権があることを裁判所に証明しなければなりません。詳しくは弁護士にご相談ください。

 

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雇い主とのトラブル

労働者が業務上のミスを起こして損害を与えたなどの理由で給料が未払いとなることもあります。たとえ損害賠償金であったとしても原則として給料から差し引くことは全額払いの原則に違反します。したがって労働者の同意なく一方的に天引きする行為は違法となります。

 

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給料未払いの主な相談先

給料未払いがあったときは下記のような専門家に相談することが大切です。

・弁護士

・司法書士

・労働基準監督署

・社会保険労務士

 

弁護士

弁護士は、交渉や訴訟などの法的手続きを代理したり相談に乗ったりする法律専門家です。給料未払いのトラブルについて特に制限なく対応することができます。代理人となって交渉してもらうことや、先取特権の行使や訴訟など法的手段により強制的に回収することも可能です。

ただし弁護士には専門分野があるため給料未払いや債権回収を専門にしている弁護士事務所を探して相談することが大切です。

 

司法書士

司法書士は登記の専門家ですが裁判所に提出する書類を作成する所もあります。一部の司法書士は認定司法書士と呼ばれ未払いの給料金額が140万円以下の場合に限定されますが、法律相談にのることや簡易裁判所での手続きを一部行うことが認められています。給料未払いについては事業主と交渉したり簡易裁判所に訴訟を起こしたりすることができます。労働審判の代理はできません。

 

労働基準監督署

労働基準監督署は厚生労働省の出先機関として労働者からの相談受付や労働環境の改善などを行っています。給料未払いなどの問題があるときには労働基準監督署に相談することで行政指導につながり状況が是正される可能性があります。

 

社会保険労務士

社会保険労務士は労働や社会保険に関する手続きについて申請書等の作成や提出手続を代理する専門家です。また特定社会保険労務士については一定の労働関係の法律に基づくあっせん手続きなどについて当事者を代理できることがあります。

 

弁護士に相談するメリット・デメリット

給料未払いについて弁護士に頼るメリットは業務に制限がなく選択肢が広い点にあります。例えば訴訟を行うことが適切なケースの場合には請求金額の問題で司法書士では代理人となることができないことがあります。

社会保険労務士の場合にも示談交渉などに制限がありますが弁護士であれば制限なく事業者と交渉することが可能です。

弁護士に依頼するデメリットとしては費用がかかりやすいことが挙げられます。ただし事務所によって報酬費用は異なるため必ずしも司法書士よりも高額とは限りません。費用倒れにならないためには弁護士か司法書士かに関わらず事前に費用についてよく相談することが大切です。

 

司法書士に相談するメリット・デメリット

司法書士は訴状の作成や一定の範囲で代理人として交渉すること、訴訟の代理人となることができます。

しかし司法書士は弁護士と違い代理人としての活動に制限があります。司法書士は簡易裁判所で取り扱える140万円以下のケースでしか代理人として業務を行うことができません。

つまり給料未払いで司法書士が代理人として対応できるのは未払いが140万円以下のケースに限られることになります。

また司法書士は労働審判手続きの代理人となることもできません。労働審判は給料未払いなどのトラブルを迅速かつ実効的に解決するための制度であり非公開で行われます。この手続きは地方裁判所で行われるため司法書士に認められていません。労働審判は給料未払いを解決する有力な選択肢となります。書類の作成のみを司法書士に依頼することも考えられますが労働審判手続きは簡単とは言い難くよく考える必要があります。費用の問題もありますがなるべく弁護士に相談して対応を検討することをおすすめします。

 

労働基準監督署に相談するメリット・デメリット

給料未払いについて労働基準監督署に相談するメリットは費用がかからないことです。匿名でも可能なため在職中の残業代未払いなどに対して有効なことがあります。一方でデメリットとしては給料未払いの根本的な解決になるとは限らないことが挙げられます。労働基準監督署は労働者の代理人ではなくあくまで労働法規違反に対する是正をすることにあります。たとえば事業主に刑事罰が科されたとしても給料の未払いが解決するわけではありません。是正勧告が出されたとしても事業主が従わないときには訴訟や先取特権の行使などの手段を検討することになります。

 

労働基準監督署について詳しくは、「給料の未払いは労働基準監督署に相談すべき?サポート内容や注意点を解説」をご参照ください。

 

社会保険労務士に相談するメリット・デメリット

社会保険労務士は労働法令に詳しいことや、一定のADR(裁判外紛争解決手続き)の中で示談交渉や相談ができる点がメリットといえます。

デメリットとしては業務に制約があることから、給料未払いの問題については対応に限界があることです。例えばADR手続きでは120万円を超えるケースでは弁護士との共同受任が必要です。労働審判や訴訟の代理人になることはできずその活動のための相談もできません。

 

未払いの給料を回収するためにすること

未払いの給料を回収するためには以下の点に注意します。

 

請求に必要な証拠を揃える

給料の未払いを証明できないと目的を達成しづらくなります。下記に示すような証拠をなるべく多く集めておきます。

 

労働条件を確認できる資料

雇用契約書、雇用通知書、就業規則など

労働時間を証明できる資料

タイムカード、日報、勤怠記録、メールの履歴、メモ

その他

給与明細書、振込口座の履歴

※このほかにも関係がありそうな資料は個人的な記録も含めてできるだけ集めておきます。

 

会社と給料の支払いを交渉する

給料の未払いを解決するには事業主と交渉することが基本です。直接交渉が難しい場合には弁護士に代理人となってもらうことや労働組合に相談する方法も考えられます。

 

希望の解決方法を明確にする

給料の未払いを解決する方法にはいろいろなものがあります。時間や費用をかけてでも全額の支払いを求めていくのか、多少減額されても早期の解決を目指すのかによって手段に違いが生じます。ご自分が何を望んでいるのかを明確にすることで弁護士に相談するときに迷いが少なくなります。

 

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まとめ

・給料未払いが起きる原因は、「給料の未払いに気づいていない」、「経営環境の悪化」、「雇い主とのトラブル」などが考えられます。

・給料未払いの相談先は、「弁護士」、「司法書士」、「労働基準監督署」、「社会保険労務士」などがあります。

・司法書士は140万円以下の給料未払いについて示談交渉や訴訟代理をすることができます。しかし金額が大きい場合や労働審判の手続きは代理できません。

・労働基準監督署は給料未払いなど労働者の相談を無料で受け付けています。しかし望んだ対応をしてもらえるとは限らず給料未払いの解消につながらないことがあります。

・社会保険労務士は給料未払いについてADRなど一定の労働関係法令の手続きを代理できることがあります。しかし訴訟への対応や相談ができません。

・弁護士は給料未払いについて制限なく交渉や労働審判、訴訟手続きなどの代理、相談に乗ることができます。

 

給料未払いでお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

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給料の未払いトラブルはおひとりで悩んでいるよりも誰かに相談された方が解決しやすくなります。

一般の方々にとって弁護士は気軽に相談することが難しいようです。

当事務所はご相談者のお気持ちを一番に考えて気軽に相談できる法律事務所を目指しています。

 

※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事もご参照ください。