工事の請負代金で債権回収トラブルに発展させないための4つのマニュアル

 

目次
信用によって成り立つからこそ請負の債権トラブルは多い
仕事上の関係を考え積極的に債権の回収ができないという問題
1、請負代金の回収でトラブルが起きやすいケースを知っておく
請負代金の回収トラブルが起きやすい4つの具体例
2、契約書面などの形に残る証拠をしっかり準備する
弁護士に契約書のテンプレートを作成してもらう方法もある
3、請負の工事範囲や変更をしっかり確認することでトラブル防止を
引渡し時に口での確認だけでなく書面や写真でも確認を
4、弁護士に書面や仕事のことで相談できる環境づくりを整える
まとめ

 

 
世の中には色々なタイプの債権問題があります。売掛金の未払いから家賃の回収案件まで、「お金のやり取り」が存在すれば、そこに債権トラブルが発生する火種が秘められています。その火種が大きくなり、債権トラブルに発展しがちなお金のやり取りの1つとして、「工事の請負代金」があります。
 
先方と揉めずに工事の請負代金を回収するためには、どんなことを心得ておけばいいのでしょうか。債権の回収トラブルを防止するためにできる4つの方法についてお話します。
 

■信用によって成り立つからこそ請負の債権トラブルは多い

 
債権の回収トラブルの中でも、請負によるトラブルは非常に多いと言われています。工事の請負は「信用」「信頼関係」によって成り立っているからだと考えられます。請負の契約者同士の信用が、トラブルを増加させているのではないかと言われているのです。
 
請負では、契約書などの書面を用意することが一般的です。ですが、請負では、仕事を発注する側の個人や建築会社、建設会社などと職人が厳格な段取りで書面を取り交わさず、仕事の段取りや双方のタイミングに合わせて書面を取り交わすことがあります。「信頼関係」や「信用」があるからこそできることです。昔ながらの信頼関係が活きる取引であると考えることもできます。
 
しかし、信頼関係や信用によって書面の準備や確認などを怠ることや後回しにすることが、時に請負代金の回収トラブルに繋がってしまうのです。発注する側である個人や法人と、される側である職人の関係に配慮することも、債権の回収トラブルの火種になることがあります。
 

・仕事上の関係を考え積極的に債権の回収ができないという問題

 
請負の場合、懇意にしている建築会社や建設会社と債権の回収トラブルを起こしても、解決のため積極的に動くことが難しいという側面があります。請負代金を払ってくれと強く督促すると、建築会社や建設会社との関係が悪化し、今後の仕事の受注に関わるのではないかという懸念があるからです。そのため、請負代金が未払いでも、督促をしたり、法的手段に訴えて回収をはかったりすることに不安と抵抗を覚え、泣き寝入りしてしまうことがあります。
 
請負代金の回収をスムーズに進めるためには、常日頃からトラブルを防止することを心がけておくことが重要です。請負代金の回収をスムーズに進め、発注者との間に軋轢を生まないためにも、次の4つを注意する必要があります。
 
請負代金の不払いを訴訟などの法的手段で解決することに不安があるなら、トラブルを起こさないことや防止策を講じておくことも「1つの賢い解決策」です。
 
請負代金の回収でトラブルになることを防止する方法は、
「請負代金の回収でトラブルが起きやすいケースを知っておく」
「契約書類などの形に残るものをしっかり準備する」
「請負の仕事範囲や変更をしっかり確認する」
「弁護士に書面や仕事のことで相談できる環境づくりを整える」の4つです。
 

■1、請負代金の回収でトラブルが起きやすいケースを知っておく

 
請負代金の回収トラブルを防止する方法の1つ目は、「請負代金の回収トラブルが起きやすいケースにはどんなものがあるのか、よく知っておくこと」です。請負代金の回収トラブルの具体例を知っておけば,酷似した状況を想定して、あらかじめトラブル防止の対策を講じることができます。
 

・請負代金の回収トラブルが起きやすい4つの具体例

 
請負代金の回収でトラブルが起きやすいケースには、次のようなケースがあります。
 

  • 契約内容が曖昧なまま工事を進めてしまった

 
請負では、「どのような内容の仕事をするのか」「いくらの請負代金で行うのか」「期間」「工事の範囲」をしっかりと定めなかったせいで、後で「言った」「言わない」「話と違う」というトラブルになることがあります。
 
つき合いの長い会社と職人の場合、前回の請負と同じで大丈夫だろうと、曖昧なまま工事を進めてしまうこともあります。そのため、工事が終了してから発注者である会社側から工事の内容や範囲についてクレームを受け、最終的に請負代金の回収にまで影響が出ることがあります。信用と信頼関係があったからこそのトラブルであるといえます。
 
契約内容があやふやだったことを利用して、発注者側が請負代金を踏み倒すという悪質なケースもあります。
 

  • 工事の着手を急がされてしまった

 
工事の完成を急ぐ発注者側から着手を急がされることもあります。請負代金や期間、請負の範囲などをきちんと確認する前に工事への着手することを要求されるため、仕事に追われて請負契約の重要事項について確認することが後回しになってしまうのです。これも、発注者に「急ぎです」と発注されたら、確認を後回しにして仕事の準備をスタートしてしまう程信頼関係が出来上がっているからこそだと言えます。
 
着手を急がされて契約の確認を後回しにした結果、請負代金や仕事の範囲が発注者と請負人との間で食い違ってしまい、回収トラブルに発展することがあります。
 

  • 追加の受注のさいに料金や工事範囲の確認を怠る

 
請負では、工事の変更や追加発注などが頻繁に起こります。変更や追加発注が発生した際に、変更や追加発注についてよく確認しないと、いざ請負代金を請求する時に支払いを渋られたり、そんな約束はしていないと齟齬が生じたりする可能性があります。請負代金を回収しようにも契約書の不備などできちんと証明できなかったり、発注者との関係に亀裂が生じてしまったりすることを恐れて、回収を諦めてしまうケースがあります。
 
たとえば発注者が「こんな感じにしてもらえたら嬉しい」と口にしたとします。請負人である職人が「では、そのようにいたします」と応じて、発注者の要望に添う形で工事を完成させました。しかしその工事は、発注者の要望に添うと、追加で請負代金が発生するタイプの要望でした。
 
職人側は要望を受ける形での追加発注と解釈して工事をしました。しかし発注者は追加発注だと考えておらず、追加で請負代金が発生することも把握していませんでした。説明不足と齟齬、確認不足が重なり合ったケースです。このような場合、「確かに受注しました」「そんな注文はしていない。要望を述べただけだ」と、トラブルに発展し、請負代金の回収に支障が生じることが考えられます。
 

  • 瑕疵を主張して請負代金の支払を引き伸ばしにする

 
工事の完成後に瑕疵があることを指摘して延々と支払いを引き延ばすという事例もあります。また、瑕疵に基づく損害賠償と請負代金の相殺により、支払額をゼロまたは少額にしようとする発注者もいます。発注者との関係に軋轢を生じさせないため、そして訴訟などの法的な解決を回避するため、請負代金の回収を諦めてしまうケースもあります。
 
請負代金の回収トラブルに発展しやすいケースをおさえておき「類似ケースには慎重にあたる。注意する」ことによって、トラブルを未然に防ぐことができます。
 

■2、契約書面などの形に残る証拠をしっかり準備する

 
請負代金の回収でトラブルになりやすい事例を知っているだけではトラブル防止に繋がりません。どんなトラブル事例があるのかを知っておき、それぞれのトラブルに有効な対策をとることが必要になります。①から④のトラブルを防止する上で第一に重要なのが、「契約を書面などの形に残すこと」です。
 
信頼している発注者の工事であっても、きちんと契約内容に沿った契約書として形に残す。追加発注や変更の時も、書面という形に残すことが重要です。
 
見積書はあくまで見積もりとしての意味しか持ちません。形に残すなら「請負代金」「工事の範囲」「危険負担や所有権」「担保権」「契約解除について」などの記載がしっかりした契約書などの書面を作成することが重要です。後に「言った」「言わない」「話と違う」といったトラブルを防止すると共に、確かに発注を受けその内容で工事をしたということを証拠として残すことが大切です。
 

・弁護士に契約書のテンプレートを作成してもらう方法もある

 
請負の契約内容を書面として残すことが大切だとしても、1から自分で契約書類のテンプレートを作成することは大変です。
 
特に請負の場合、工事ごとに代金や工事の範囲が違ってくるため、1つのテンプレートで全ての請負の契約書面を作成することは難しいと言えます。しかも、1枚ずつ1から自分で作成することも、時間的かつ労力的にも難しいと考えられます。そこで、よく受注するタイプの契約だけでもすぐに書面を作成できるように、テンプレートを作成しておくという方法があります。
 
また、よく請負を受注する取引先ごとに契約書面のテンプレートを作成しておくという方法もあります。工事の内容に合わせてテンプレートを修正して契約書面として活用することができますし、追加発注があってもすぐに対応できます。弁護士に依頼して契約に必要なテンプレートを用意しておくという方法もあります。
 
書類の準備や保管を怠らず、契約や確認事項については書面として形に残す。請負の仕事内容に合わせた契約書面などのテンプレートをしっかり用意し、作成する。「きちんと書面という形に残すこと」によって、請負代金の回収率アップとトラブル防止を期待することができます。
 

■3、請負の工事範囲や変更をしっかり確認することでトラブル防止を

 
仕事内容や発注者に関わらず、請負の工事範囲をしっかり確認しておくことがトラブル防止に繋がります。何度も同じ内容の工事を受注している場合、「今回も同じように工事をして大丈夫だろう」と考え、発注先への確認を怠ることがあります。既に良い関係を築いている発注者に対しても、今後の関係をさらに良いものとし、請負代金の回収トラブルによって関係に亀裂を生じさせないように、しっかりと確認を行うことが重要です。
 
ただ確認するだけでなく、確認後は形に残すことを徹底すれば、さらなるトラブル防止に繋がります。
 

・引渡し時に口での確認だけでなく書面や写真でも確認を

 
工事が完了して建物や工作物を引渡す時に、瑕疵がない旨を確認してもらい、書面を交わすことも請負代金の回収トラブルを防止する方法の1つです。さらに、工事中の建物や工作物の写真を撮影しておき、工事の手抜きがなかったことや瑕疵がないことを証明する資料にするという方法もあります。
 
面倒に感じるかもしれません。しかし、「こまめに確認すること」と「証拠をきっちり残して管理すること」が後のトラブル防止に役立ちます。
 

■4、弁護士に書面や仕事のことで相談できる環境づくりを整える

 
請負代金の回収トラブルを防止するためには、弁護士へすぐに相談できる態勢を整えておくことも重要です。
 
訴訟や調停などの法的な手段での解決を望む場合でなければ弁護士に相談できないというわけではありません。また、法律トラブルに直面していなければ、弁護士に相談できないというわけでもありません。債権の回収問題や契約問題などを未然に防ぐために相談したり、リーガルチェックを依頼したりすることも可能です。
 
たとえば、請負の契約書についての相談や、請負契約を結ぶ上での疑問点などを相談することで、自分では気づかなかった契約の落とし穴やトラブルの可能性、ケースに即したトラブル対策をどのように進めたらいいかのアドバイスを受けることができます。具体的なトラブルが発生する前にアドバイスを受けることにより、よりスムーズに請負代金の回収が可能です。
 
常日頃から弁護士をパートナーとして活用することによって、債権の回収を含めたトラブルが発生する可能性をより低くすることができます。
 

■最後に

 
請負契約では、発注者と請負人の間に「既に築き上げた信頼関係」があることが多いため、その信頼関係が裏目に出てしまうことにより、請負代金の回収トラブルに発展してしまうことがあります。
 
工事の請負代金の回収は、信頼関係を壊さないようにという配慮や、今後の受注への不安から、訴訟などの法的手段を講じることにためらいを覚えるという特徴があります。
だからこそ大切なのは「請負代金の回収トラブルを防止すること」ではないでしょうか。
 
工事の請負代金で債権の回収トラブルに発展させないための方法は4つです。常日頃から相談できるパートナーとして弁護士を活用し、トラブル防止の方法をマニュアル化しておくことが重要です。

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