保証人は融資契約や賃貸借契約など多くの契約で必要とされます。特に連帯保証人は債務者と同等の責任を負うため債権者にとっては債権回収の可能性が高くなるメリットがあります。一方で通常の保証人の場合には責任が制限されるためあまり利用されません。

 

この記事では、保証人と連帯保証人の違いや保証人からの債権回収方法について解説します。

 

※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。

 

保証人とは

保証人とは、債務者が必要な義務(債務)を履行しない場合に、債務者の負っている債務を代わりに履行する義務を負う人のことです。保証人となるためには一定の要件があり、①行為能力者であり、②弁済できる資力を持っていることが求められます(民法450条1項)。ただし、債権者が指名して保証人となるときはこの要件は不要です(同条3項)。

保証人が負担する債務のことを「保証債務」といいます。保証債務は主たる債務の利息や違約金、損害賠償などを含みます。保証債務に関して特別に違約金や損害賠償の額を定めることも可能です(447条)。

ケースによっては保証人が本来の債務よりも債務の目的や態様から見て重い負担を課せられることがありますが、このような場合には本来の債務の限度まで負担は軽減されます。(民法448条1項)

 

保証契約とは

保証契約は書面又は電磁的記録によりされなければ無効となります(民法446条2項、3項)。

保証契約(民法446条)とは、主たる債務の履行を担保することを目的として債権者と保証人との間で締結される契約のことをいいます。

保証契約を債務者と保証人との間の契約であると誤解されることがあるため注意が必要です。保証契約は債権者と保証人との間の契約のことを指すのであり、債務者と保証人との間では、保証委託契約が結ばれる場合があるにすぎません。

 

保証人と連帯保証人の違い

保証人と連帯保証人は大きく違います。実務上は通常の保証契約ではなく連帯保証契約にするのが一般的です。保証人と連帯保証人は以下の点で異なります。

 

主債務者への請求を求める権利

普通の保証人は債権者から債務の履行を求められた場合、とりあえず債務者に対して支払いを請求するように求める権利があります。これを「催告の抗弁権」といいます。また、債務者に債務を履行する財産があり、強制執行も容易であることを証明した場合、債権者に対してまず債務者の財産に執行することを求める権利があります。これは「検索の抗弁権」といいます。

これは通常の保証人には認められますが、連帯保証人の場合には認められていません。

 

保証人間の負担分配

保証人が何人かいる場合には、各保証人の責任は原則として平等の割合で分割した額に制限されます。これを「分別の利益」といいます。例えば、150万円の債務についてA、B、Cが通常の保証契約をした場合、A、B、Cは各自50万円ずつ責任を負うことになります。

これに対して連帯保証人の場合には各自が債務全額について責任を負うことになります。前例でいえば債権者はA、B、Cのうち任意の人に150万円全額を請求することも可能です。

 

時効更新(中断)の効力範囲

2020年4月1日に民法が改正され時効や保証人に関する部分にも影響が及んでいます。改正前は連帯保証人に対して訴訟を提起し勝訴判決を得ることで主債務者に対しての時効中断が認められていました。これに対して通常の保証人に対して裁判上の請求をしても主債務者に対して効力はありませんでした。そのため通常の保証契約よりも連帯保証人にした方が時効の観点からも債権者にとっては有利でした。

しかし民法改正以後は連帯保証人に生じた時効更新(中断)事由は主債務者に対して効力が生じないこととされました(相対的効力の原則、民法458条、441条本文)。ただし、債権者と主債務者が効力を生じさせる旨の合意をしたときは効果が及びます(同条ただし書)。

つまり、時効について別段の合意をせずに連帯保証契約をしただけでは通常の保証人と特に違いはありませんが、主債務者との間で連帯保証人に時効更新事由があるときは主債務者にも効力が及ぶ旨の特約をしておくと債権者にとって時効面でも有利となります。

 

時効の更新については、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご参照ください。

 

保証人を求める際の注意点

保証人を付けてもらう際には「連帯保証人」にすることが重要ですが、他にも以下の点に注意が必要です。

 

保証人の資力をしっかり調べる

保証契約は不動産のような物的担保と異なり保証人個人の資力を担保にとるものです。そのため将来における財産状況も考慮して保証人にふさわしいか判断する必要があります。

特に注意した方がいいのはすでに他の債権者によって保証人とされているケースです。中小企業の経営者の場合には会社が金融機関からの融資を受ける場合に連帯保証契約を結んでいるケースが多いはずです。そのため会社が主たる債務者の場合に代表取締役を連帯保証人にしたとしても、会社が債務不履行となった際には代表取締役にもほかに債権者がいる可能性が高く、満足のいく債権回収ができないおそれがあります。

このようなケースでは他の保証人候補を探すか、物的担保や債権譲渡担保などほかの担保を検討することが重要です。

 

<関連記事>債権譲渡とは?メリット・デメリットや注意点を分かりやすく解説

 

契約時の手続きを確実に行う

一般的な契約は書面でする必要はなく口頭での約束であっても法的な拘束力が生じます。もちろん書面でする必要のない契約であっても証拠に残すことが重要であるため代金の支払いや商品の引き渡しが後日になる場合には契約書を作成することが重要です。

これに対して保証契約については書面や電磁的記録によりなされなければ効力が生じないことになっています(民法446条2項)。

 

※事業用融資における第三者保証については公正証書による保証人の保証意思確認が必要となることもあります(民法465条の6以下)。

 

<関連記事>契約書作成におけるチェックポイントと注意事項を解説

 

保証人からの債権回収の流れ

連帯保証人は主債務者と責任が同じため債権回収方法は債務者に対するものと基本的に変わりません。

 

内容証明郵便で督促

電話や通常の督促状で連絡がつかない場合には内容証明郵便での督促も検討します。配達証明付きで送付することで相手が督促状を受領したことが分かりますし、債権回収の本気度も伝わりやすくなります。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

交渉、合意書の作成

連帯保証人は債務者が問題を起こした場合にはじめて責任を問われることが普通です。そのため連帯保証人に債務の履行を求めても寝耳に水ですぐに支払いができないこともあります。そのため現実的に支払い可能な方法を連帯保証人と話し合って決めることも重要です。例えば、一括での返済が難しい場合には分割払いにすることがあります。このような合意が成立した際には証拠に残すため合意書を作ることを忘れないようにします。費用は掛かりますが公正証書(執行証書)にすると支払いが遅れたときに訴訟をせずに財産を差し押さえることもできます。

 

<関連記事>借用書は公正証書で作成するべき?確実に債権回収ための手順を解説

 

訴訟

連帯保証人が支払いに応じない場合には法的手段を検討します。民事調停支払督促といった手続きもありますが、一般的には民事訴訟が確実な方法です。

請求金額が60万円以下の場合には少額訴訟という簡易的な訴訟手続きをとることも可能です。通常の訴訟を選択する場合でもお互いに妥協できる可能性があるときには和解により解決することもあります。通常の訴訟の場合には手続きが専門的であるため弁護士に相談することをおすすめします。

 

<関連記事>連帯保証人に支払い拒否されたらどうする?対処法をご紹介

 

まとめ

・保証人とは、債務者が債務を履行しないときに債務者の代わりに債務を負担する約束をした人のことです。

・保証契約は書面や電磁的記録によりしなければなりません。

保証人と連帯保証人は責任に違いがあります。通常の保証人には、①催告の抗弁権、②検索の抗弁権、③分別の利益がありますが、連帯保証人にはありません。そのため通常は保証契約を結ぶ際は連帯保証契約にします。

 

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