養育費は請求時点以降の分について認められることが一般的です。そのためなるべく早く請求を行うことや請求した証拠を残すことが大切です。

 

この記事では、養育費を内容証明郵便で請求する方法についてひな形を含めて解説します。

 

養育費とは

養育費とは、子どもが健やかに成長するために必要な監護や教育にかかる費用のことです。つまり子供が社会的、経済的に自立するのに必要な費用のことであり食費、住居費、教育費、医療費など子供の成長に通常必要な費用です。

親である限り子どもを扶養する義務があるため同居の有無や婚姻の有無に関係なく養育費を負担する必要があります。一般的には子どもを実際に監護している者から非監護者である親に対して養育費の請求がなされます。

 

養育費は親として子供に対し自分の生活と同程度の生活を保持する義務(生活保持義務)として支払わなければならないものです。扶養義務者は自分の生活水準を落としてでも養育費を支払う義務があります。

 

内容証明とは

内容証明とは、いつどのような内容の文書を誰から誰あてに送付したのか証明してもらう郵便局の手続きです。送付した文書の謄本は郵便局に5年間保管されます。利用する際は配達証明もつけた方がいいでしょう。

 

養育費として合意すべき内容

養育費は離婚後であっても請求することができますが後日のトラブルを避けるためになるべく離婚時に取り決めておきます。養育費の合意は重要なものなので書面で作成するようにします。お互いが保管するために2通作成しておきます。公正証書(執行証書)で作成しておくと裁判をせずに強制執行することもできます。

公正証書についてはこちらの記事をご参照ください。

 

金額・支払い方法

養育費の具体的な金額については話し合いで決めることが基本です。一般的には裁判所の算定表を参考に決めることが多くなっています。算定表はあくまで参考でありそれぞれの事情によって適切な金額を決めることが大切です(養育費算定表「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」)。

 

支払時期について毎月末払いなど明確に定めておきます。振込先口座など支払方法も定めます。

支払期間については始期と終期を明確にしておきます。例えば、「〇年〇月〇日から子が22歳に達した後に初めて到来する3月末日まで」と定めます。大学進学を考慮するのであれば卒業まで養育費が支払われるように合意します。養育費は子どもが経済的な自立が期待できるまで支払うものであるため成年に達した時点で当然に打ち切るというものではありません。

 

進学など特別な出費

毎月の養育費は通常必要な費用にすぎません。大学などの進学時には大きな出費が生じることになります。しかし学費などは事前に算定することが難しいものです。特別な出費が必要となったときに負担をどのようにするのか決めておくことも重要です。例えば、「高校、専門学校、大学等に進学したときは費用について改めて協議する。」などと定めます。

 

養育費の変更

養育費は合意したとおりに支払うことが原則です。しかし養育費は長期間支払い続けるため監護者や非監護者の経済状況や社会の変化により、当初約束した内容では困ることもあります。

例えば、子供が病気やけがをして監護費用が足りなくなったり、相手の収入が減ったり再婚をして扶養しなければならない家族が増えたりすることがあります。

このようなときには話し合いで解決することが基本ですが、家庭裁判所の調停(審判)を利用する方法もあります。

 

養育費を内容証明で請求するメリット

内容証明郵便を利用して養育費を請求することには次のような利点があります。

 

相手との関わりを減らせる

相手と関わりたくないために養育費の請求をあきらめてしまうことがあります。内容証明郵便は請求書を送付するだけですので電話などで直接催促するよりも心理的な負担を減らせる可能性があります。相手から連絡を受ける可能性があるときは弁護士に代理人となってもらう方法もあります。

 

相手にプレッシャーをかけることができる

内容証明郵便は通常の郵便とは異なるため養育費請求の強い意志が伝わります。内容証明は法的手段の前提として利用されることも多いため支払いを真剣に考えるきっかけになることがあります。

 

請求した事実が証拠に残る

養育費について合意をしないで離婚することがあります。このよう場合には過去の養育費を支払ってもらえるかが問題となります。一般的には養育費を請求した時点以降のものについて支払ってもらうことになります。

過去の養育費について請求されても高額のため支払いが難しいことや、養育費がなくても生活できていたという事実から請求前の分については認められにくいのです。

つまり養育費を請求した時以降であれば相手に不意打ちにならないため認めてもらいやすくなります。

問題は請求した事実を証明する方法です。家庭裁判所に養育費の調停を申し立てるのが確実ですが、その前であっても内容証明郵便により養育費を請求しておくことで有利になる可能性があります。

 

ただし過去分について請求できるケースであっても時効には注意が必要です。5年で時効にかかる恐れがあるからです。

 

<関連記事>債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!

 

養育費を内容証明で請求するデメリット

内容証明で養育費を請求することには以下のようなデメリットもあります。

 

書面の内容に強制力がない

内容証明郵便には裁判所の手続きや公正証書のような強制的な効果がありません。内容証明郵便を無視されてもそれだけでは相手の財産から強制的に支払ってもらうことはできません。

 

<関連記事>内容証明郵便を拒否・無視された場合の対処法|内容証明郵便の効力を弁護士が解説

 

作成や送付に手間がかかる

内容証明郵便は一定の形式で作成しなければならないため手間や時間がかかります。

 

相手の住所がわからないと利用できない

内容証明も郵便物であるため配達先がわからなければ利用できません。訴訟であれば相手の所在が分からなくても利用できることがあります。

 

<関連記事>音信不通の相手から債権回収する方法と注意点を詳しく解説

 

内容証明の書き方

内容証明は形式面と書くべき内容の2つに注意する必要があります。

 

記載すべき内容

養育費の請求であることを明確にすることが大切です。すでに養育費について合意しているときには合意した内容と滞納の事実、請求額、振込先、支払期限等を記載します。状況により法的手段も予告します。

養育費の合意ができていないときには暫定額を請求しつつ、適正額を算定するために年収がわかる資料や話し合いの機会などを求めます。

差出人と受取人の住所氏名、書面を作成した年月日も記載します。

 

形式

内容文書以外のものは同封できません。英字は固有名詞に限り利用できるなど制限があります。

 

文字数・行数の制限

内容証明には郵便局の窓口で送付する方法とネットから送付する方法があり条件が異なります。窓口で送付する際には送付文書のほかに謄本が必要となりますが、謄本には以下のような字数等の制限があります。

縦書きのケース

・1行20字以内、1枚26行以内

横書きのケース

・1行20字以内、1枚26行以内

・1行13字以内、1枚40行以内

・1行26字以内、1枚20行以内

※ネット上から送付するときは1枚1584文字が目安です。

 

<内容証明による養育費請求書の文例>

養育費請求書

私はあなたと〇年〇月〇日に離婚し、私とあなたの子である長男〇〇は私が親権者となり養育監護しております。〇年〇月〇日(離婚の際)、あなたは子どもの養育費として毎月〇万円を〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで毎月〇日までに下記口座に振り込む約束をしました。しかし、〇年〇月分から養育費の支払いが一切なく生活が苦しくなっております。〇年〇月〇日までに滞納養育費〇万円を下記口座にお振込みください。今後の養育費についても必ずお支払いください。万が一お振込みがないときは、子どもの生活を守るため法的な手続きをとることをご承知おきください。

<振込先>

A銀行B支店 普通〇〇〇〇 X

〇年〇月〇日

東京都〇〇区〇〇丁目〇〇

X

東京都〇〇区〇〇丁目〇〇

Y殿

※事案により適切な内容は異なります。養育費の請求は裁判所の判断にも影響する重要なものです。実際に送付されるときには弁護士にご相談ください。

 

内容証明の書き方については、「債権回収の内容証明作成方法を弁護士が解説!債権回収を効率よく解説!」もご参照ください。

 

内容証明の請求に応じない場合

養育費の支払いに応じてくれないときや話し合いがまとまらないときには以下のような手段を検討します。

 

調停を申し立てる

養育費については家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。話し合いで解決できないときには裁判官に審判をしてもらいます。

 

民事裁判

養育費について合意済みの場合には家庭裁判所ではなく通常の裁判所に訴えを起こす方法もあります。算定表よりも高額の養育費を合意している場合や養育費の請求をしておらず過去分の養育費が認められにくいような場合に選択肢となります。ただし相手から家庭裁判所に養育費の減額調停の申し立てがなされることがあります。減額の可能性により将来の養育費請求が否定されることがあり一概に民事訴訟が優れているとは言えません。

 

強制執行

公正証書(執行証書)や裁判所での手続きにより養育費の具体的な取り決めがあるときには相手の財産から強制的に養育費を取り立てることができます。例えば給料を差し押さえれば全額の差し押さえはできませんが毎月継続して養育費の支払いを受けることもできます。

 

<関連記事>養育費未払いの相談先や対処法、弁護士に相談するメリットを解説

 

まとめ

・養育費は親が子供に自分の生活と同程度の生活をさせる義務として支払うものです。離婚後に請求することもできます。

・養育費の合意は書面に残すようにします。公正証書にしておくと支払いが滞ったときに強制執行しやすくなります。

養育費は請求時以降の分について認められることが一般的です。内容証明により養育費を請求した証拠を残すことができます。

 

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※借金などでお困りの方はこちらの記事もご参照ください。