自分で債権回収をする場合、実際どのように行えばいいのか不安になると思います。自分でできる範囲はどこまでなのか、具体的にどのようにすればいいのか参考になる情報が欲しいと思います。

 

この記事では、自分で債権回収を行う方法や注意点について解説していきます。

そもそも自分だけで債権回収はできるのか

自分で債権回収を行うことは可能です。必ず弁護士に頼まなければいけないわけではありません。支払督促や訴訟などの法的手段も自分で行うことができます。

 

もっとも、自分で債権回収を行うことが最善かは別問題です。

債権回収をするには必要な証拠の収集や財産の調査、相手との交渉などが必要となります。弁護士が催促すれば簡単に支払ってくれるケースでも、支払いに応じてもらえず訴訟をせざるを得なかったり、債権回収に時間がかかり相手が自己破産してしまったりするなど、かえってリスクが高いこともあります。

 

大切なことは、リスクを把握した上で自分で債権回収をするか、リスクを減らすために弁護士に依頼するか、よく考えて選ぶことです。

 

自分で債権回収を行う方法

自分でできる範囲で債権回収を行う場合には以下の内容を意識することが大切です。

 

債権回収する前に確認するべきこと

債権回収に障害がないか事前にできる範囲で調べておきます。

 

財産の調査

債権を回収するには相手に財産や収入が必要です。もし相手に収入がなく財産もない場合には債権回収にかける時間や手間、費用が無駄になってしまいます。

特に訴訟などの法的手続きをとるときには時間や費用をかける価値があるのか事前に検討する必要があります。

 

例えば、預金があるのか、あるとしてどの金融機関に預けているのかが分からないと将来差し押さえることが難しくなります。弁護士と違い自分で調べる方法は限られますが、債務者を訪問した際に金融機関の粗品(カレンダーやボールペン等)から取引先銀行が分かることがあります。

 

時効の確認

債権には時効があります。2020年4月1日以降に発生した債権は基本的に5年(または10年)が時効期間となっています。債権の種類や2020年3月31日以前に成立した債権については期間が異なることがあるため注意が必要です。

ただし、時効は単に債権が成立した時点から一定期間が経過しただけでは成立しません。時効は延長されることや、リセットされて始めから計算し直すこともあるからです。

リセットされる理由はいくつかありますが、自分で債権回収するときに利用しやすいのは「債務の承認」です。

債務者が債権の存在を認めると時効期間がリセットされるのです。承認の方法は問わないので口頭でも有効ですが、証拠にすることが大切なので書面に署名や押印をしてもらった方がいいでしょう。

時効が迫っているときや期間が経過しているときには無理をせず弁護士に相談されることをおすすめします。

 

時効について詳しくは「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご参照ください。

 

メール・電話で督促する

はじめはメールや電話などで催促することが基本となります。未払いの理由が単純な支払い忘れのようなケースもあるため自分にとっても相手にとっても負担の少ない方法で債権回収をしていきます。

特に電話の場合には相手の受け答えを直接確認することができるため、単なる支払い忘れなのか資金繰りの悪化など他の理由なのかヒントが得られることもあります。

相手と連絡が取れた場合には返済日を約束してもらうことが大切です。期間があいまいだと同じことが繰り返される恐れがあるため、返済期日を明確にすることが有効です。

 

<関連記事>貸したお金を返してもらうには?催促方法や対処法について詳しく解説

 

催告書で督促する

債務者が支払いに応じなかったり電話などに応答しなかったりするときは文書で催促することが基本です。

債務者が支払期日を忘れている可能性があるときは、高圧的な文面にならないように注意します。返済の必要性に気づいてもらうことが主な目的だからです。

相手が返済の必要性や返済期日が経過していることを知っているときは、より強い表現で支払いを促すことになります。

 

<関連記事>【弁護士監修】支払催促状の書き方と送付方法{テンプレート付}

 

内容証明郵便を郵送する

電話や通常の郵便での催促では債権回収が困難なときは内容証明郵便も検討します。

内容証明郵便は、誰にどんな内容の書面を送付したかを郵便局が証明してくれるものです。

客観的な証拠になりますし通常の郵便とは異なることから、債務者に心理的な圧力を加えることができます。内容として保証人への連絡、弁護士への依頼、訴訟などの法的手続きを予告することも効果的です。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

訴訟を提起する

自分で債権回収のために訴訟を起こすことは難しいといえます。ですが少額訴訟であれば手続きが簡易的なため自分で行える可能性があります。

 

少額訴訟は元本債権額が60万円以下の請求をするときに利用できる簡易裁判所の手続きです。訴訟の一種ですが1日で審理し判決を出してもらうことが可能であり一般の人でも自分で手続きできる可能性があります。

 

<関連記事>少額訴訟の費用相場は?費用倒れを回避する方法も解説

 

強制執行を行う

勝訴判決をもらっても債務者が自分から支払ってくれるとは限りません。もし債務者が支払ってくれないときには強制執行により相手の財産を差し押さえて強制的に債権回収を行うことになります。

強制執行可能な財産には不動産や動産、債権があります。自分で債権回収を行うのであれば債権執行が比較的しやすいかもしれません。

債権執行は、金融機関に対する預金や給料などの金銭債権が対象となります。売掛金も対象です。差し押さえをすると債務者の代わりに支払いを受けることが可能となります。

 

<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説

 

自分で債権回収を行うデメリット

弁護士に依頼せずに自分で債権回収をすると次のようなデメリットがあります。

 

手間と時間がかかる

債務者への連絡や必要な書類の作成には手間や時間がかかります。特に訴訟などの法的手続きにより債権回収をするのであれば書類の収集など事前準備が必要となります。関係する法律を調べるだけでなく裁判所での手続きも自分でする必要があります。訴状や準備書面を作成するときは必要な主張を書き漏らすと敗訴する原因となるため神経も使います。

 

債務者が債権回収の危機感を感じにくい

自分で債権回収をするときのコツは、いかに債務者にプレッシャーをかけて任意に支払ってもらえるようにするかという点にあります。法的手続きは個人でするにはハードルが高いからです。

ところが一般の人が自分で債権回収を行っても債務者に危機感を感じさせにくいのです。たとえ内容証明郵便で訴えを起こすと警告してもなかなか本気にしてもらえないのです。そのため、内容などを工夫してハッタリだと思われないようにする必要があります。

弁護士が内容証明郵便で催促をすると債務者が危機感を覚えやすく支払いに応じてもらえることが少なくありません。そのため、内容証明郵便の作成だけ弁護士に依頼するという方法もあります。必ず支払ってもらえるわけではありませんが自分で債権回収をするときの選択肢の一つにはなります。

 

証拠が足りなくて敗訴しやすい

債権の存在や金額に争いがあるときには証拠を示す必要があります。

特に訴訟では主張した事実を相手が認めない場合、証拠を提出して立証していくことになります。どの事実に対してどのような証拠を提出する必要があるのか自分で債権回収を行うときには判断が難しくなります。証拠は適切な時期に提出しなければならないため、証拠があったのに敗訴することもあります。

 

最適な債権回収手段を判断するのが困難

債権回収方法にはさまざまなものがあり、ケースによって最適なものが違います。自分で債権回収をするときには数ある債権回収手段の中から適切なものを選ぶ必要があります。

ところが手段を間違えてしまうと債権回収が困難となることがあります。

例えば、少額訴訟が適切なケースなのに支払督促を選択してしまい債務者から異議が出されてしまうことがあります。異議が出されると訴訟に自動的に移行するのですが相手の住所地にある裁判所で訴訟をすることになります。

普通は債権者の住所地を管轄している裁判所に訴えを起こすことができるので、相手が遠方に住んでいるときにはかえって不利になるのです。

 

違法行為にも注意が必要です。

例えば、訪問して債権回収をすることがありますが、「帰ってくれ」と言われたのに居座ってしまうと「不退去罪」という犯罪になることがあります。

また、債権回収の際の言動が問題となることもあります。債務者を怖がらせるような言動を使ってしまうと「恐喝罪」に問われることもあります。

 

このように自分で債権回収をするには知識や経験だけでなく神経も使います。

少しでも債権回収に不安がある方は弁護士に相談することをおすすめします。

 

<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説

 

まとめ

・自分で債権回収をすることも可能です。ただし、債権回収に時間がかかりやすいことや手間がかかるというデメリットがあります。時効にも注意が必要です。

・自分で内容証明郵便を作成し債権回収を試みる方法もありますが、弁護士から送付した方が効果的です。

自分で債権回収をすることも大切ですが無理をせず専門家を頼ることも必要です。

 

債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

自分で債権回収をすることに不安がある方へ。

 

債権回収は迅速かつ効率的に行うことが必要です。

債権回収に時間がかかってしまうと不安な気持ちが長く続くことになります。

1日も早く心配事をなくして、やるべきことに集中できるようにすることが大切だと思います。

そのため、専門の弁護士に相談し不安を解消することをおすすめします。

 

当事務所は債権の回収に強い事務所であり実績も多数あります。

自分でするには難しい債権回収の方法であっても専門の弁護士に任せることができます。

 

特に定期的に未払いが発生したり、滞納者が多くいたり、未収金が高額になっているようなケースでは、債権回収業務を外注してしまうことで不安や負担が軽くなります。

 

債権回収にお困りの方は一度当事務所にご相談ください。