自分で債権回収を行う場合における注意点と違法性

 

目次
はじめに
一般的な注意点
債権というものの本質
国家による取立て
法的な債権の回収手続
自分でできること
債権回収と関係の深い注意すべき犯罪
窃盗の罪
暴行の罪
脅迫の罪
恐喝の罪
強盗の罪
住居侵入の罪(建造物侵入の罪)
不退去罪
まとめ
 

■はじめに

他人にお金を貸したり、あるいは商品を販売したり、レンタルした場合、お金や商品を返してくれと請求できる権利が発生します。
 
借りた側の立場から見れば、お金や物を借りた以上、いついつまでに支払う、という約束をしていたのであればその時までに借りた物やお金を返さなくてはなりません。
 
貸した側から見れば貸したことによって生じた権利、借りた側から見れば借りたことによって生じた義務があるわけです。
 
権利をもっている者(債権者)からすれば、借りたまま支払わない返す義務のある者(債務者)に対して、返さないのが悪いのだからという理由で、どのような手段を使っても取り立てることが許されるようにも思えます。
 
しかし、方法によっては犯罪になってしまうようなこともあります。
 
例えば、お金を返さないからという理由で、刃物で脅してお金を無理やり支払わせれば、強盗になってしまいます。
 
ほかにも、借りた人が留守のときに、家主の許しがないのに家に入り、自分が貸した物であってもこれを持ち出せば、住居侵入罪や窃盗罪になってしまいます。
 
ここでは、他人の力を借りずに貸したお金や物を返してもらう際、違法とされる方法を避ける方法や、一般的な注意点について、その対処法を見ていきたいと思います。
 

■一般的な注意点

・債権というものの本質

本質的なことを理解すれば多くのことは理解できるようになります。
債権回収における本質的なことの一つは、「債権とは何か」ということです。
 
ひと言で言ってしまいますと、「他人に対してあれこれしてほしいとお願いできる権利」といえます。
 

・国家による取立て

「お願いできる権利」にすぎませんから、貸した物をその人が自分から返そうとしない限り、原則として返してもらえないわけです。
 
もちろん、約束は守られるべきですし、強制的に約束を守らせる方法がなければ、安心して契約をすることができません。
 
そこで、「司法」というものがあります。
最近の民主的な国家は、権力を集中させないため3つに分けることが一般的です。
 
法律を作る「立法権」、作られた法律を実行する「行政権」、そしてもめごとが起きた場合に法律をあてはめて問題を解決する「司法権」の3つです。
 
国会が立法権を、内閣が行政権を、裁判所が司法権を担当しています。
 
民主的な国家で、司法権が確立している社会では、それぞれの人が腕力や、武器、社会的権力などを使って自らの権利を守ることは、基本的に許されていません。
 
もし、そのようなことを認めれば、「力」を持った人だけが報われて、そうでない人たちは蚊帳の外におかれることになってしまいます。
 
また、暴力的な事件が頻発することにもなり、社会が不安定なものとなってしまいます。
 
そこで、民主的な国家では、国家が責任をもって、国民ひとりひとりの正当な権利を、その人自身に代わって、守る仕組みが必要となります。
 
それが、「司法」であり、それを担う裁判所の役割です。
 

・法的な債権の回収手続

裁判所に対し、自分には権利があって、誰それに対してこのようなことを求めることができると約束したので、代わりに国家の力で取り立ててください、と申し立てることで、国家がその人に代わってお金や物を取り返してくれるのです。
 
もちろん、裁判所に自分の言い分をわかってもらうためには、自分の権利が発生したといえなければならず、そのためには、法律上の個々の権利が生じるとされるための要件を満たす具体的な事実を裁判官に示し、なおかつ、その事実が実際にあったということを、証人を連れてきたり、契約書を持ってきたりして、証拠を示すことで証明しなければなりません。
 
そのようにして、強制執行のために必要な債務名義である勝訴判決を手に入れたとしても、財産を差し押さえるためには、さらに強制執行の手続を別にしなければなりません。
 
さらに、裁判をしていた時点では、めぼしい財産があったとしても、いつの間にか見当たらなくなってしまうこともあります。隠されてしまったり、使われてしまったり、まったく別の人に先に差押えられてしまうこともあるからです。これに対処するには仮差押えや仮処分という手続きが必要となりますが、また別の手続きが必要になるのです。
 
こういった手続きを行うには専門的な知識が必要で、しかも時間がかかりますし、いろいろと大変ですから、現実的には弁護士などの法律家に頼むことが多いといえます。
 

・自分でできること

もちろん、できれば自分でやってしまいたいと考えるのは自然なことです。自分でできる範囲のことは自分でやるというのが基本といえます。
 
しかし、自分でできる範囲というのが問題です。
 
法的な複雑な手続きについては弁護士などの法律家に任せるにしても、それはあくまでも最終手段であって、とりあえず自発的に返してもらえるよう、根気よく催告していくことが多いと思います。
 
問題なのは自発的に返してもらえないときに、どこまでの言動が法的に許されるのかという見極めです。
 
犯罪に当たらない範囲であったとしても、せっかく受け取ったお金や物を返さなくてはいけなくなったり、損害が発生したとして賠償金を支払うように逆に請求されたりしてしまうこともあります。
 
犯罪にあたれば、違法性が強いので、賠償金の支払い義務が発生するうえ、刑事罰を受けることにもなります。
ここでは債権回収にあたって気をつけておくべき犯罪について見ていきたいと思います。
 

■債権回収と関係の深い注意すべき犯罪

・窃盗の罪

「窃取」とは、財産的な価値のある物について、誰かがそれを現在持っている場合に、自分のものにしてしまおうと考えて、持っている人の了解なく、勝手に持ち去ることをいいます。
直接身につけている必要はありません。自分の直接の影響力のある状態にあれば持っていることになります。
 
例えば、AがBさんのポケットから財布をスリとったようなときは、「窃取」したといえます。
 
問題なのは、自分が債務者に貸している物を、債務者が返してくれないので勝手に持っていったような場合です。
 
例えば、Aが自分の自動車をBに貸していたが、Bが返却期になっても返してくれないので、Bの事務所にとめてあった自分の自動車を勝手に持っていったような場合です。
 
このような場合も、窃取したことになり、原則として窃盗の罪が成立すると考えられます。
Aの自動車を現在事実上持っているのはBなので、Bの了解なしに持ち去っているからです。
 
自分のものであったとしても、勝手に持ち去っていいということになりますと、時間も費用もかかる司法制度を誰も利用しなくなってしまいかねず、社会秩序が維持できなくなるからです。
 
盗まれた物を取り返す場合であっても原則として窃盗の罪に当たると考えられます。
 
例えば、Aさんが自分の自転車を駐輪場にとめておいた所、何者かに持ち出され、後日、近所のB宅にとめてあるのを見つけ、勝手に敷地内に入り持ち出したような場合、窃盗の罪に問われる可能性があります。
社会秩序を維持するためにはやむをえないことです(実際にはこのような場合には、警察に被害届を出し、警察が捜査をした結果、罪を軽くするために示談の前提として、Bさんが自分から返してくれることも多いかと思います。)。
 
ただし、犯人がどこの誰かもわからないような場合など、裁判を起こすこと自体不可能ですから、このようなやむを得ないときは、例外的に窃盗の罪で検挙されることはないと考えられます。
 
なお、物を貸していたような場合に、保証人をつける義務があるのにつけないなど、担保を提供しないためその物を返してもらうときは、期限の利益喪失を理由に返してもらうことができますが、勝手に持っていかれたと言われないために、返却についての承諾書を書いてもらったほうが安全といえます。
 

・暴行の罪

「暴行」というのは、債務者の身体などの人体に対して、物理的な力を使うことです。
 
例えば、胸ぐらをつかめば、暴行にあたるわけです。
 
注意すべきなのは、直接債務者などの身体に触れなくても、問題になることがあります。
 
例えば、債務者の足元の地面に石を叩きつけたような場合です。
直接身体にあたらなくても、「暴行」にあたります。
 
殴りつけたり胸ぐらをつかんだりしなければ問題ないと考える人が少なくないと思いますので、注意してください。
 
大声をはり上げる行為も問題になります。
「音」も、物理的な力だからです。実際に拡声器を用いたケースで問題になった事案があります。
 

・脅迫の罪

「脅迫」というのは、一般の人であれば怖がるであろうくらいの、悪い出来事を引き起こすぞ、と債務者などに示すことです。
 
例えば、「破産手続きをとったら家に火をつけるぞ」と述べるようなことです。
 
あくまで本人が引き起こせる範囲のものでなければならないので、「天罰が下るぞ」というようなことを述べたとしても、それだけでは問題になりません。
 

・恐喝の罪

「恐喝」というのは、さきに述べた力や脅しによって、債務者などを怖がらせて、怖がっていることをいいことに、お金や物を渡すことを要求して、受け取ることを言います。
 
例えば、言いがかりをつけて、胸ぐらをつかんだり、「痛い目にあいたいのか」などと言ったりして、金品を受け取ることをいいます(結果的に受け取れなくても問題になります)。
 
特に問題なのは、「返さないと訴えるぞ」、と述べたような場合です。
 
これは一般の人であれば怖がる内容といえますし、本人が引き起こせることでもありますから、問題になりそうです。
 
しかし、裁判所に助けを求める権利は誰にもあることですので、単純に「恐喝」に当たるということはできないように思えます。債務者としても実際に訴える前にその予告をしてほしいと思うこともあるはずです。
 
この点は争いがあり、なかなか難しいところなのですが、社会一般上の常識から外れるような言動であれば、問題になるとされています。
 
具体的には、実際には訴えるつもりがないのに「訴えるぞ」と述べたり、お金や物を返してもらう以外の目的で述べたりしたときは、問題になりうると考えておいたほうがいいかと思います。
 

・強盗の罪

「強盗」というのは、抵抗することが一般的に期待できないような暴行や脅迫をして、金品をとる行為です。5年以上の懲役とされていて、ここで説明している犯罪の中でもっとも重いものです。
 
恐喝と似ていますが、暴力や脅しが、特に強い場合が強盗とされています。
 
例えば、ナイフをのど元に突きつけて金品を要求するような場合は、恐喝ではなく強盗とされます。普通抵抗することができない程度の力や脅しです。
 
特に問題なのは、無理やり金品を奪った場合に、窃盗や恐喝ではなく強盗とされる場合があるということです。
 
例えば、債務者が頑なに引き渡すことを拒んでいるお金や物を無理やり奪い、引きずり倒したような場合です。

個別的なケースでは強盗の罪に問われることもありうると考えたほうが安全といえます。

 

・住居侵入の罪(建造物侵入の罪)

「侵入」というのは、住んでいる人や建物の管理者が認めていないのに生活上のスペースや事務所やビルなどに入り込むことをいいます。

フェンスなどに覆われた庭なども、住居などに含みますので、勝手に庭に入り込んでも問題になります。
 
特に問題なのは、家に入ることを認められた場合に、金品を探すために、家の中の個別の部屋に勝手に入りこんだような場合です。
 
例えば、債権者が債務者の家を訪れ、応接室に通されたような場合に、寝室や子供部屋などに勝手に入った場合です。このような場合には、たとえ家に入ることが認められていたとしても問題になります。
 

・不退去罪

「不退去」というのは、住居などの建物やその敷地から出ていくように責任者から言われたのに出ていかないことをいいます。
 
例えば、「帰れ」と言われたのに帰らないで居座ったりすると、問題になります。
 
債権回収にあたってもっとも注意が必要な犯罪といえるかもしれません。
気をつけないと債務者に逆に訴えられかねないからです。
 
たとえ正当な権利者であったとしても、法治国家においては実力を行使して、自ら強引に満足を図ることは許されないのです。
 

■まとめ

・債権とは、「他人に対してあれこれしてほしいとお願いできる権利」のことです。そのため、債権者であったとしても自由に競売にかけたりできるわけではありません。
・自分の利益を守るためには、催告しても債務者が自分から応じてくれない限り、原則として、裁判所において、仮差押えや仮処分をした上で、一般の訴訟、少額訴訟、支払督促などをおこない、債務名義を取得した上、強制執行手続きとして差押えをしたり、競売したりする必要があります。
自分の権利を実現するために裁判所を使わないと、違法な行為、場合によっては犯罪として刑罰の対象になることもあります。
・自分のものだからといって勝手に債務者の自宅や事務所から商品を持ち出せば、「窃盗の罪」が問題となります。
・殴ったり、胸ぐらをつかむなど、債務者の身体に直接触れていなくても、石を近くに投げつけたり、大きな音を立てたりすれば、「暴行の罪」が問題となります。
・「訴えるぞ」と述べるだけでも、本当に訴えるつもりがないようなときは、「恐喝の罪」が問題となります。
・「帰れ」と言われたのに、家や事務所、その敷地から出ていかないときは、「不退去の罪」が問題となります。
 
債権回収は手続が難しいだけではなく、その手段によっては犯罪になってしまうこともあります。
 
よくわからない、難しいと感じられる方は弁護士にご相談ください。
時間がかかってしまいますと消滅時効にかかり権利がなくなってしまうこともありますので、注意してください。

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