貸したお金を返してもらうには状況に合わせて方法を変えることが大切です。

借用書がない場合や返済期日から何年もたっている場合、相手に支払う意思がない場合などケースごとに対処法は異なります。

 

この記事では、貸したお金を返してもらう方法について詳しく解説していきます。

 

貸したお金を返してもらうには

お金の貸し借りのことを法律用語で、「金銭消費貸借(きんせんしょうひたいしゃく)」といいます。

 

消費貸借というのは、借りた人が借りたものと同じ種類、品質、数量の物を返す契約のことです。借りた物そのものを返す必要はないわけです。

普通はお金が対象であり、特に「金銭消費貸借」と呼ばれます。銀行や不動産屋さんは、略して「キンショウ」と呼ぶこともあります。

 

あなたがお金を貸して相手がそれを返すと約束したのであれば、金銭消費貸借契約が成立しているので、相手はお金を返す義務(債務)が生じることになります。

 

言い換えると、お金を貸した人は借りた人に対して、お金を返してほしいと請求できる権利(債権)があることになります。

 

借用書がない場合

契約というのは原則として契約書を作らなくても成立します。

一部の特に重要な契約については書面で契約しないと効果がないものもあります。例えば、保証契約は書面でしなければ効果がありません。

 

金銭消費貸借契約の場合、すでにお金を貸し渡しているケースでは、書面を作成することは求められていません。

そのため、契約書(借用書)がなくても返済を求めることができます。

 

ただし、契約書に意味がないわけではありません。

相手が「お金なんて受け取っていない」とか、「お金は受け取ったがもらったものだ」などと言い訳をすることがあります。

そのようなときに契約書があれば、このような言い訳は通用しなくなります。

契約書がなければ契約書以外でお金の貸し借りを証明しなければならなくなります。

 

お金を渡したという事実と、それを返す約束をしたという事実を証明することになります。

 

お金を渡した事実は、銀行口座の履歴などから確認することができます。

返す約束をした事実は、手紙やメール、会話などの相手とのやり取りが重要な証拠となります。立ち会った人がいるのであれば証人となります。銀行口座に振り込みがされているのであればそれも証拠となります。

また、渡した金額の大きさや相手とどのような間柄であるのかなども裁判になったときには重要な判断材料となります。

 

このように借用書がなかったとしても、貸したお金を返してもらう方法はあります。

 

貸したお金の時効

貸したお金はいつまでも返してもらえるわけではありません。

お金の貸し借りにも時効があるからです。

 

長い間権利を使わないでいると権利を失うことがあります。このような制度を「消滅時効」といいます。

 

人に対して何かを要求できる権利のことを「債権」といいます。

一般的な債権の時効期間は次の通りです。

 

起算点

時効期間

権利を行使できることを知った時から

5年

権利を行使することができる時から

10年

 

どちらか早い方で時効が成立しうることになります。

もっとも、お金の貸し借りについては通常「5年」が時効期間となります。

返済期日を定めていたときには、お金の返還請求権を行使できるのは返済期日ですが、お金を貸した人は返済期日を知っているからです。

 

返済期日を特に定めていないときには問題があります。

消費貸借では相当な期間を定めて催告することになっています。

「返して」といわれてもすぐに返せないことが多いからです。

そのため、契約が成立してから相当な期間を経過した時から数え始めるという見解があります。一方で契約成立の翌日から数え始めるという見解もあります。

 

いずれにせよ早めに行動を起こすことが大切です。

 

※2020年4月1日に新しい民法が施行されました。この日より前に契約をした場合には、時効期間は原則「権利を行使できる時から10年」(商行為にあたる場合5年)となります。

 

期間が過ぎたとしても当然に時効が成立するわけではありません。

時効は一定の事実があるとストップするからです。

 

時効について詳しくは、「債権回収には時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご覧ください。

 

貸したお金を返してほしい時の返済請求

貸したお金は黙っていても返してもらうことはできません。

状況に合わせた適切な方法で返済を求めることが大切です。

 

メール・電話等で連絡をする

お金を返してもらえない理由が単に返すことを忘れているだけということもあります。

そのため、お金を返す必要があることを思い出してもらうことが大切です。

初めはメールや電話など簡単な方法で連絡を入れるのがいいでしょう。単に支払いを忘れていただけであればそれで問題は解決します。

 

「もう少し待ってほしい」などの返信が来たら証拠として保存しておきます。

電話やメールで連絡がつかないときには郵便で催促することも有効です。

 

<関連記事>【弁護士監修】支払催促状の書き方と送付方法{テンプレート付}

 

訪問をする

相手が近くに住んでいるときには訪問して催促する方法もあります。

ただし、相手の生活にも配慮する必要があるため夜遅くや朝早くに尋ねることは避けた方がいいでしょう。

訪ねたときに「帰ってほしい」と言われたら居座らないように気を付けてください。

「不退去罪」という犯罪に問われることがあります。

 

内容証明郵便を送る

連絡が取れないときや返してくれる様子がないときには「内容証明郵便」を送ることも有効です。

内容証明郵便とは、誰から誰に対して、いつどのような内容の文書を送ったかを証明してくれる制度です。

証拠に残るため相手に強いプレッシャーをかけることができます。

 

<関連記事>債権回収の内容証明作成方法を弁護士が解説!債権回収を効率よく解説!

 

相手にお金がない場合の対処法

相手がお金に困っているときには約束したとおりに返してもらうことは難しくなります。

そのため違う方法で返してもらうことを考えます。

 

支払いの分割や返済期間の延長に応じる

今すぐに借りたお金を返すことができないとしても分割払いや返済期限を延ばすことで支払いが可能なことがあります。

 

契約書を作成していなかった場合にはこのときに作成するのがいいでしょう。

ただし、借用書には印紙税がかかるため所定の収入印紙が必要となります。

 

<関連記事>債務承認弁済契約とはなにか?売掛金の確実な回収につなげる3つのポイント

 

相手の資産状況を確認する

相手の主張だけでは本当にお金が返せないのかわかりません。実際には多額の預金や不動産、有価証券などを持っているかもしれません。

 

財産の調査は簡単ではないため弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士であれば法的な権利を使って一般の人では難しい調査をすることが可能です。

 

<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説

 

貸したお金を返してもらう法的手段

催促してもお金を返してもらえない場合には法的な方法を検討することになります。

法的な手段といっても話し合いで解決するものなど色々なものがあります。

 

民事調停

民事調停というのは、裁判所で話し合いをして問題を解決するための手続きです。裁判官と民間人である調停委員が間に入って交渉の手助けをしてくれます。

ただし、話し合いをするための手続きですから相手の所在が分からないときには利用することができません。

 

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支払督促

支払督促は、簡易裁判所の書記官から相手にお金を返すように命じてもらう方法です。

訴訟と比べて費用が安いことや書類のやり取りだけで手続きができるメリットがあります。

ただし、相手の所在が分からないと利用ができないことや相手から異議が出されてしまうと訴訟に移行してしまう問題があります。

 

少額訴訟

少額訴訟は、元本が60万円以下のお金を目的とした場合に、通常の訴訟よりも手続きを簡易化したものです。原則として1日で判決を出してもらうことができます。

 

少額訴訟について詳しくは、「少額の売掛金の回収と少額訴訟のやり方、費用、メリット、デメリットを解説」をご覧ください。

 

訴訟

他の方法で返してもらえないときには訴訟を検討することになります。

一人で行うのは難しいため弁護士に相談することが大切です。

 

<関連記事>債権回収の裁判(民事訴訟)知っておきたいメリットとデメリット、手続き、流れを解説

 

お金を貸すときにするべきこと

お金を返してもらうためには貸すときに工夫をしておくことが重要です。

 

返済期日をはっきりと定める

お金の貸し借りをする際に返済期日を定めないことがあります。

ですがこれでは借りた方はいつ返せばいいかわかりませんし、貸した方もいつ請求すればいいかわかりません。

返済日を明確にすることで無用なトラブルを避けることができます。

 

借用書を書いてもらう

借用書がないと記憶があいまいになってしまいますし、書面にすることできちんと返すという意識が生じやすくなります。署名や押印があると訴訟になったときに重要な証拠ともなります。

 

ただし、1万円以上の借用書では印紙税がかかることに注意してください。

 

返済請求をまめに行う

返済請求をおろそかにすると返してもらうことが難しくなります。返済期日からだいぶ過ぎてから請求すると借主にとってもよくありません。お金を借りていたことを忘れていてお金に余裕がなくなることもあるからです。

 

まとめ

・貸したお金を返してもらうには「借用書」が重要ですが必須ではありません。

貸したお金には時効があります。返済期日から5年で返してもらえなくなることがあります。貸した時期によっては10年のこともあります。

・時効はストップすることができます。期間が経過していたとしてもお金を返してもらえる可能性があります。

・弁護士から返済を求めると素直に返してもらえることがあります。

 

債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

お金を返してもらえず困っている方へ。

 

借主に遠慮して強く返済を求めることができない方もいます。

ですがお金を返してもらうことができず困っていることを相手に伝えることは大切です。

 

もし、相手が財産を持っているのに返済してくれないときには毅然とした対応をとる必要があります。

弁護士から請求することで素直に支払いに応じてくれることも多いです。

貸したお金を返してもらえず困っている方は、一度弁護士にご相談ください。

 

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