債権の回収を確実に行うには、「第三債務者」が大切になります。

債務者に現金や不動産がなかったとしても、「債権」を持っていることがあります。

この債権からの回収をする際に「第三債務者」との関係が重要になります。

 

この記事では、第三債務者とはなにかを債権回収の視点から解説します。

 

第三債務者とは

第三債務者とは、「債務者の債務者」のことをいいます。

債務者が第三者に対して、売掛金などの債権を持っていることがあります。その第三者のことを「第三債務者」というのです。

 

例えば、AがBに対して売掛金を持っている場合に、BもCに対して売掛金を持っているときは、Aから見るとAが債権者、Bが債務者、Cが第三債務者となります。

 

AはBから債権を回収したいだけなのに、なぜ直接関係ないはずのCが出てくるのでしょうか。

実は、Bが支払いに応じてくれないときには、AはCから直接債権を回収できることがあるのです。

 

債権者が第三債務者から直接債権を回収する方法としては、「債権執行」、「債権質」、「債権者代位権」の行使といった色々なものがあります。

 

ここでは一般的な債権回収方法である「債権執行」を中心に解説していきたいと思います。

 

債権執行手続の流れ

債務者が支払いに応じてくれないときには強制執行をすることになります。

強制執行とは、権利を強制的に実現していくための裁判所の手続きのことです。金銭債権の場合には、債務者の財産を差し押さえて売却し、売却金から債権を回収することになります。

債務者の財産にも色々なものがあります。不動産や自動車、貴金属などの動産、預金などです。財産的な価値があれば基本的に差押えの対象となります。売掛金や預金などの金銭債権も財産的価値があるので差し押さえることができます。「預金」は、債務者の銀行に対する債権です。

 

債権を対象に強制執行することを「債権執行」といいます。

 

金銭債権には不動産や動産にはない有利な特徴があります。それは、金銭的価値が比較的明確だという点です。不動産や動産は基本的に売却しないと債権の回収ができませんが、金銭債権であれば直接第三債務者から弁済してもらえれば手間がかかりません。

 

そのため、債権回収における強制執行の方法として、「債権執行」は特に効果的なものといえます。

 

債権執行の申立て

預金や給料など、差押えできそうな債権を見つけたら必要な書類を準備し、管轄裁判所に提出します。

 

・申立書

・債務名義の正本(判決書や公正証書など執行力があるもの)

・送達証明書(債務名義が送達したことを示すため)

・収入印紙(手数料として4,000円分)

・郵便切手など

 

差押命令の送達

不備がなければ裁判所から差押命令が出されます。差押命令は債務者と第三債務者に送達されることになります。相手に言い分があるときには、執行抗告や請求異議訴訟を起こされることがあります。

 

弁済の禁止

差押命令の内容は、債務者に対しては取立てなどの行為の禁止、第三債務者に対しては債務者への弁済の禁止となっています。

差押えの効果は第三債務者に差押命令が送達された時点に生じます。

 

取立てと転付命令

債務者に差押命令が送達されてから1週間経過すると、債権者は第三債務者から直接債権を回収することができます。ただし、給与債権など生計の維持に必要な債権については4週間です。

 

単に取り立てるだけでなく、債権を移転してもらうこともできます。これを「転付命令」といいます。

転付命令は第三債務者に対する正式な債権者になるということです。転付命令があると券面額(債権額)の範囲で弁済されたことになります。取立ての場合には他の債権者がいるときには按分して回収できるだけなのに対し、転付命令を受けると独占的に回収できることになります。その代わり、第三債務者から回収できなくても債務者に対する債権は券面額の範囲でなくなってしまいます。

 

そのため、転付命令は大企業のような資力のある相手のときに利用し、それ以外は取立ての方法を基本とするのがいいでしょう。

 

<関連記事>売掛金の回収する手段としての差押え

 

債権回収における第三債務者の重要性

債務者の支払い能力に問題があるときであっても第三債務者がいるときには債権回収の可能性が高くなります。

 

債権回収における第三債務者の役割

普通の金銭債権は不動産のように登記されているわけではないため、本当に債権があるのか明確ではありません。債権があったとしても第三者がすでに差押えていることもあります。

そこで、差押命令の申立てをする際に「債権の存否」や、「差押えの有無」などについて回答するように求めることが普通です。このような回答を求めることを「第三債務者に対する陳述催告」といいます。陳述催告は実務では必ず行うものです。

 

第三債務者の回答により目当ての債権から回収できる見込みがあるのか早い段階で判断がつくことになります。

 

第三債務者が回答してくれなかった場合や不正確な回答をしたときには、損害賠償請求をしていくことも可能です。

 

第三債務者に対する債権回収手続きの具体例

AがBに対する100万円の金銭債権を持っている場合に、BのCに対する120万円の金銭債権から回収することにしたとします。

 

AはBの住所地を管轄する地方裁判所に債権差押命令を申し立てます。Cに対する陳述催告も申し立てておきます。

 

裁判所が差押命令を出すと、まず第三債務者に対して差押命令に関する文書を発送します。債務者への発送は少し遅らせて行われます。差押えの効力は第三債務者(C)に送達された時に生じるため、債務者に先に送達されないようにするためです。

 

第三債務者宛の差押命令書には陳述催告書と回答用紙も入っています。第三債務者は2週間以内に債権の存否や金額、先行差押えの有無などを回答してくれます。

 

特に問題がなければ債務者(B)に送達された日から1週間または4週間の経過により、債権者は第三債務者である銀行や勤め先から直接債権を回収できます。Cが大企業など資力に問題がなければ差押命令と同時に転付命令を求めることもできます。

 

Cが100万円を無事に支払ってくれれば債権回収は終わりです。債権がなかったり足りなかったりしたら他の財産を探すことになります。

 

第三債務者が拒否した場合

第三債務者が素直に支払ってくれるとは限りません。支払いを拒否されたときの対処法を見ていきます。

 

第三債務者が支払いを拒否できる場合

取立権を使って第三債務者に請求できるわけですが、第三債務者を不利に扱うこともできません。そのため、第三債務者は債務者に対抗できる事情があるときは支払いを拒否することができます。

例えば、支払期限がまだ来ていないときや、債務者が第三債務者に義務を果たしていないとき、相殺が予定されているときには支払いを拒絶されることがあります。

 

第三債務者による供託

第三債務者は供託によって責任を免れることができます(権利供託)。供託というのは供託所(法務局)にお金を預けることをいいます。他人の争いに巻き込まれたくない人もいるからです。

一方で、他の債権者から差押えされたり配当を求められたりすることもあります。このような場合には供託が義務付けられます(義務供託)。

供託されたときは後日配当を受けることができます。

 

支払いを拒否された場合

第三債務者が支払いを拒否したときの対処法もあります。

正当な理由もないのに支払いをしてくれないときには、第三債務者に対し「取立訴訟」を起こすことで債権を回収します。

本来、債務名義を持っている人など一部の債権者は配当を要求できますが、訴状が第三債務者に送達されると配当要求ができなくなります。独占的に債権の回収をしたいときには早い段階で取立訴訟を起こすことが有効です。

 

<関連記事>債権回収の裁判(民事訴訟)知っておきたいメリットとデメリット、手続き、流れを解説

 

まとめ

・第三債務者とは「債務者の債務者」のことです。債務者から直接債権回収ができないときは第三債務者から回収することもできます。

・債務者の債権を差し押さえることで代わりに支払ってもらうことができます。例えば、預金を差し押さえると債権者が引き下ろすことができます。

・第三債務者が債務者に対抗できる事情があるときは支払いを拒否されることがあります。

・正当な理由なく第三債務者が支払いを拒否したときは「取立訴訟」により債権を回収することができます。

 

債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

強制執行(差押え)を検討されている方へ。

 

債務者の財産から強制的に債権を回収するには相手の財産の調査が必要です。

強制執行をするにはできるだけ時間やコストの掛からない効率的な財産を見つけることが大切です。

処分の手間や費用のかからない銀行預金などの「債権執行」は有力候補となります。

 

預金を差し押さえるには取引先金融機関の特定が必要です。そのための調査には「ノウハウ」が求められます。

その後の差押手続きはスピード感を持って行わなければならず、専門的な知識や経験が成功のカギとなります。

 

当事務所は強制執行を含めた債権回収に強い事務所であり実績も多数あります。

 

報酬の支払いは完全成功報酬制となっており未収金が入金されてはじめて報酬が発生するため万が一回収に至らなかったときには費用は生じません。

「着手金0円」、「請求実費0円」、「相談料0円」となっておりご相談いただきやすい体制を整えております。

※法的手続きやご依頼の状況により一部例外がございます。くわしくは弁護士費用のページをご覧ください。

 

少額債権(数千円単位)や債務者が行方不明など他事務所では難しい債権の回収も可能です。

「多額の未収債権の滞納があって処理に困っている」

「毎月一定額以上の未収金が継続的に発生している」

このような問題を抱えているのであればお気軽にご相談ください。