貸し倒れ対策が十分でないと貸し倒れが生じやすくなり、経営に与える影響も大きくなります。

取引の開始時点で相手方を調査するなど十分に注意していたとしても、完全に貸し倒れを防ぐことはできません。そのため支払いが滞った時点での対策も立てておく必要があります。

 

この記事では、貸し倒れによる損失を避けるための対策・対処法を解説していきます。

 

貸し倒れ対策の重要性

貸し倒れ対策は2つの段階に分けて考えると分かりやすくなります。

 

1つ目は、通常業務でできる予防策の構築であり、2つ目は、債権の回収に支障が生じた時点での対策です。

いずれの対処法も事前に準備しておくことが大切です。あらかじめ対策を立てておかなければ対策が不十分となり滞留債権や不良債権となりやすく、回収段階でも迅速に対応することが難しくなります。

 

債権回収の基本はスピードであり、回収が遅れるほど貸し倒れリスクが上がります。

債権の回収が遅れると取引先の資金繰りが悪化し財産が少なくなってしまうからです。倒産されてしまうとさらに回収は難しくなります。

 

倒産には種類があり、私的倒産と法的倒産に分けることができます。私的倒産というのは裁判所を利用せずに債権者との話し合いで行う倒産手続きであり、柔軟な解決ができるメリットがあります。

法的倒産というのは、破産や民事再生など裁判所を活用した厳格な手続きでありコストもかかります。法的倒産は債権の回収率が低くなりやすいといわれています。近年は法的倒産の割合が増えています。

 

与信管理など事前に貸し倒れ対策をしておくことで、長期未収金や倒産などのリスクを下げることが大切です。また、支払いが滞ったとしても適切に対処することで債権の回収率を上げることができます。

 

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貸倒れを回避する対策

ここでは具体的な貸し倒れ対策を見ていきます。

貸し倒れ対策は、債権管理(与信管理)により滞留債権を予防しつつ、滞留債権となったときに迅速かつ適切な債権回収業務を行っていくことが基本です。

 

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取引先の信用調査を行う

掛け取引はビジネスチャンスを広げるメリットがある一方で、貸し倒れのリスクも生じます。

取引相手や取引金額に関係なく掛け取引を行えば経営が不安定となり、一方で掛け取引を一切行わなければ利益を上げることは難しくなります。

 

大切なことはバランスをとることといえます。適切な取引相手と適切な範囲で取引を行うことで貸し倒れのリスクを最小限にしつつ、企業を成長させていくことが可能となります。

 

そのために基本となるのが与信管理です。

与信管理とは、相手の経済状態やどのような取引を行うかなどを検討して取引の是非や内容を決めリスクを管理することをいいます。

 

与信管理の要となるのは情報です。

取引をしてもいい相手なのか、取引可能だとしてどの程度の規模で取引が可能なのかを判断するには、相手の財務状況などを把握する必要があります。そのために必要なものが「情報」です。

 

相手が企業の場合には、「決算書」が有力な情報源となります。

貸借対照表や損益計算書は相手企業の経営状況を把握するために大切なものです。

特に、新規取引や大きな取引を行う前には可能な限り入手しておくことが望ましいといえます。

ただし、実際には決算書の入手は簡単ではありません。その場合にはほかの方法を検討することになります。

 

不動産登記記録や商業登記記録からも様々な情報を取得することができます。

商業登記記録からは、資本金が少ない企業であったり役員の入れ替わりが早かったりなどを確認することができます。このような企業は経営の安定性に不安があります。

 

不動産登記記録からは、不動産の所有の有無や抵当権などの担保権の設定状況などが分かります。担保権者が金利の安くないノンバンクとなっているときや、複数の担保権や仮差押えなどの登記が入っているときは資金繰りに困っている可能性があります。

 

支払日や振込日の期日管理を徹底する

売掛金や未収金などの管理を「債権管理」といいますが、債権管理の基本として支払期日の管理があります。

 

支払予定日に入金が確認できなかったときに速やかに対処することで貸し倒れリスクを減らすことができます。

入金確認は支払予定日に行うことができれば入金の遅れにいち早く気付けるため理想的ですが、複数の入金予定があるときには一括して入金確認を行うことも一般的です。

もっとも、支払予定日から離れすぎていると債権回収に支障が生じることがあるため毎月行った方がいいでしょう。

 

最近ではネットバンキングのサービスにより入金メールを送信してくれる金融機関もあるため、そのようなサービスを利用すると効率的かもしれません。

 

債権管理のためのシステムを構築する

債権管理は売掛金台帳を作り顧客情報を一元化すると効率的です。

入金予定日や入金の有無などを売掛金台帳で管理することで入金の遅延がすぐにわかります。

専用の会計ソフトやエクセルで売掛金台帳を作成することができますが、遅延期間に応じて取引先を分類しておくと対策が取りやすくなります。

 

例えば、3か月以上滞納している取引先に対しては弁護士に依頼するなど社内でマニュアル化しておくとその都度判断する必要がなくなり効率的な債権の回収が可能となります。

 

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取引先の情報収集を怠らない

企業の経営状況は日々変化します。取引の開始時点で信用が十分にあったとしても、しばらく時間が経過すれば信用状態が悪化していることもあります。

 

そのため与信管理は継続して行うことが大切です。所定の期間が経過するたびに、または新たな取引を行うときなどに取引先の信用状況を調査し直し問題がないか再検討することが大切です。

 

情報収集の方法としては、決算書のほかに営業担当者から変わったことがないかなど聞き取り調査を行うことや、調査会社に依頼することも検討します。

 

もし当初と異なる事情があれば取引条件の再考が必要となります。

 

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催促メールや電話をする

与信管理を万全にしたとしても滞留債権をゼロにすることはできません。

大切なことは滞留債権の発生リスクを可能な限り減らし、支払いが遅延した場合に速やかに回収業務を開始することです。

支払いが遅れた場合にもっとも大切なことはできるだけ早く原因を突き止めることです。

自社に問題がないときには速やかに相手方に連絡を取ることが大切です。支払いが遅れる原因はいろいろであり、単純な支払いミスであれば大きな問題にはなりにくいといえます。

ですが連絡が遅れると支払いをしたかどうかでトラブルになることもあり、また相手の経済状況の悪化により支払いが難しくなるなど問題が生じやすくなります。

 

そのため、できるだけ早く先方に連絡を入れることがポイントとなります。

 

催促の際は、はじめは普段連絡を取り合っている方法が無難といえますが、相手がなかなか支払いに応じてくれない場合には文書で催促することも必要です。

 

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内容証明を送付する

催促状を送付するなど再三の督促にもかかわらず支払いに応じてくれないときには、より強いプレッシャーをかけることも必要です。

 

一般的に用いられるものとしては郵便局の内容証明郵便が有効です。

内容証明郵便は、誰から誰宛にどのような内容の書面を送付したかを証明してくれるサービスです。客観的な証拠となるため将来法的な手続きが必要な際にも役立ちます。

例えば、時効にかかりそうなときに催告をすると一時的に時効を猶予することができるのですが、催告をした証拠とすることができます。また、相手が財産を処分してしまい債権の回収ができなくなることがあるため、その処分を禁止するための「仮差押え」という手続きがあります。この手続きをする際にも有力な資料となります。

 

内容証明は法的な意味があるだけではありません。証拠として有効なため相手に与えるプレッシャーが大きなものとなります。そのため任意に支払いに応じてくれるケースも多くあります。

特に弁護士から内容証明を送付すると、訴訟を起こされたり財産を差し押さえられたりするのではないかと考え、支払いに応じてもらいやすくなります。

 

<関連記事>債権回収の内容証明作成方法を弁護士が解説!債権回収を効率よく解説!

 

回収できなかったときの対処法

自社でできる範囲のことを行ったとしても回収できないケースはどうしても出てきます。

そのような場合には資金繰りをよくするための代わりの方法を探ったり、弁護士に依頼し債権の回収を行ったりすることが考えられます。

 

保証会社や公的セーフティネット制度の活用

売掛金の回収が困難になった場合の対策として「売掛保証」があります。保証型ファクタリングとも言います。

売掛保証とは、売掛金の回収が難しくなった時に契約の範囲で保証金を支払ってもらえるサービスです。

売掛金の回収ができなくても影響を最小限にとどめることができるメリットがあります。

一方で保証料の負担が大きく経営をかえって圧迫することもあることから導入は慎重に行う必要があります。

 

政府系金融機関からの融資を受けられることもあります。

日本政策金融公庫は、取引企業など関連企業の倒産により経営に困難をきたしている場合に、一定の条件を満たしたときは、「セーフティネット貸付」を実施しています。中小企業であれば最大で1億5千万円の貸し付けを受けられるものです。

 

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弁護士に相談する

売掛金や未収金は回収することが基本です。保証会社の利用や公的融資を受けることも選択肢としてはありますが、まずは回収できる方法を探ることが大切です。

 

弁護士に依頼するとすぐに訴訟などの法的手続きを想像されるかもしれませんが、あくまで債権の回収が目的であり法的手続きは回収のための一つの方法にすぎません。

 

弁護士から請求するだけで支払いに応じてくれるケースも多くあります。

 

法的な債権の回収方法だけでも、民事調停、支払督促、通常訴訟、少額訴訟、仮差押えなどいくつも方法があります。

ケースごとに最適な方法をとることが迅速かつ効率的な回収につながります。自社で法的な手続きを含めて柔軟に回収方法を選択し実行することは簡単なことではありません。

 

弁護士に相談することで最適な回収方法についてアドバイスを受けることが可能となります。

 

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まとめ

・貸し倒れ対策の基本は、与信管理と迅速な債権の回収です。

・与信管理は新規取引の時点だけではなく継続的に行っていくことが大切です。決算書や登記記録などで信用状態を確認します。

・支払いが遅れた場合には速やかに対処できるようにあらかじめ対策を立てておきます。例えば、遅延日数に応じて督促状の送付や弁護士への相談などを決めておきます。

・貸し倒れによる資金繰りの悪化に対しては、公的な貸付制度もあります。

債権の回収は簡単にあきらめる必要はありません。まずは弁護士に相談することが大切です。

 

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貸し倒れを防ぐには支払いが遅れた初期の段階で対処することが大切です。

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