債権譲渡は債権回収方法の一つです。債権譲渡により資金調達をしたり信用を高めたり現金の代わりに支払い手段とすることもできます。しかし一方で回収額が減ってしまったり元の債権に問題があれば債権をまったく回収できなかったりするリスクもあります。

 

この記事では債権譲渡とは何か、またメリットやデメリットなど注意点についても解説していきます。

 

債権譲渡とは

債権譲渡とは、債権者が持っている債権を他人に譲渡することです。債権の内容は変わりませんが債権者が変更になります。

債権譲渡は現金不足を補ったり取引先からの信用を確保したりする目的で行われます。売掛金や貸付金には支払期限がありますが期限まで債務者から支払いを受けることができません。そこで第三者に売掛金などの債権を売却して現金に換えるわけです。もちろん手数料などの名目で本来の債権額よりも受け取る現金は少なくなりますが当面の資金繰りが良くなるというメリットがあります。

 

また誰かに借金をしていたり買掛金があったりする場合に、現金がなく支払いが難しいが別の第三者に対して金銭債権を持っているときに、代物弁済としてその金銭債権を譲渡することもあります。つまり債務者が現金を持っていない場合でも債権を持っていれば債権譲渡により債権回収できることがあります。

 

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ファクタリングとの違い

ファクタリングとは支払期日前の売掛金を専門業者に売却して資金調達する方法です。売掛金は金銭債権でありそれを業者に譲り渡しているわけですから法律的には債権譲渡にあたります。つまりファクタリングは債権譲渡によって行われる資金調達サービスといえます。

実はファクタリングは2種類あります。一般的にイメージされるのは「買取型ファクタリング」であり今述べた債権譲渡による資金調達です。

もう一つは「保証型ファクタリング」であり売掛金の回収ができなくなったときに一定の範囲で保証を受けられるもので取引信用保険に類似します。

 

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債権譲渡のメリット

債権譲渡には3つのメリットがあります。

 

回収できる可能性が高い

債権譲渡は「譲受人」と「譲渡人」の立場でメリットが異なります。

譲受人の立場から見ると、債務者から債権譲渡を受けることで第三債務者(債務者の債務者)から債権回収が可能となります。債務者に現金が不足していても第三債務者の資力が十分にあれば債権回収の可能性が高くなります。

 

譲渡人の立場からは、ファクタリング会社や債権回収会社に債権譲渡することで売却代金という形で債権回収ができます。これらの会社に債権譲渡すると本来の債権額よりも割り引かれてしまいますが早期に現金化できる点に魅力があります。ただし債権譲渡契約の際に償還請求権(リコース契約)が設定されることがある点に注意が必要です。この特約がついていると売掛金の回収ができない場合は売掛債権を買い戻すことになります。手形をイメージすると分かりやすいかもしれません。つまり「リコースファクタリング」は債権譲渡というより融資契約にあたります。

 

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債権回収をスピーディーに行える

一般的な支払いの流れは債務者が取引先から支払いを受け、それを買掛金などの支払いに充てます。その過程で問題があると債権回収までに時間がかかり債権回収の回転が悪くなります。特に債務者の資金繰りが悪化している場合には他社への支払いにも困っているはずですから支払いが遅れやすくなります。

債権譲渡を受けることで第三債務者から直接回収できれば債務者を経由するよりも債権回収が早くなる可能性があります。

 

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取引先の債権を担保にできる

担保として債権を譲り受けることもできます(債権譲渡担保)。債権を担保に取っておくことで第三債務者から直接債権を回収することができます。仮に債務者が倒産したとしても債権譲渡を受けているため第三債務者から回収できる可能性が残ります。ただし破産の可能性があるときに債権譲渡をすると効果を否定されることがあります。

 

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債権譲渡のデメリット

債権譲渡をするには譲渡通知書の作成・送付などの手間や費用がかかりますが他にも以下のようなデメリットがあります。

 

譲渡価格は額面を下回るのが一般的

譲渡人の立場から見ると大きなデメリットは債権回収額が減ることです。ファクタリングを利用した場合には手数料が割り引かれます。債権譲渡は債権未回収の危険を回避できることやすぐに現金化できるメリットがありますがその分だけ費用負担が大きくなります。

 

債権譲渡の手続き

債権譲渡手続きのポイントは3つあります。

 

債権譲渡契約の締結

債権の譲受人と元の債権者との間で債権譲渡契約を行います。契約をする際には契約書を作成し合意内容を明確にすることが大切です。

 

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債務者への対抗要件の取得

債権譲渡がされると債権者が変更になります。債務者としては自分が知らない間に債権者が変更してしまうと誰に支払いをしていいのか分かりません。そのため債務者に債権譲渡の効果を主張するには、譲渡人から「債権譲渡通知」をするか「債務者の承諾」が要件となっています。この要件を満たしていないと債務者は支払いを拒否できます。

 

第三者への対抗要件の取得

お金に困った譲渡人が第三者に二重に債権譲渡することがあります。債権譲渡を受けた人が複数いる場合には早く第三者対抗要件を備えた人が優先します。債権譲渡を第三者に対抗するための要件は、確定日付のある証書による「債権譲渡通知」または「債務者の承諾」です。

確定日付のある証書はいくつか種類がありますが通常は内容証明郵便を使います。もし複数の債権譲渡を受けた人がそれぞれ内容証明郵便で通知をしたときは書面が先に到着した人が優先です。

 

登記によって対抗要件を備える方法もあります。債権譲渡登記の対象は法人の金銭債権だけですが債務者に通知せずに第三者に対抗できるメリットがあります。

 

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債権譲渡を債権回収に用いる際の注意点

債権譲渡を利用して債権回収するときには以下の点に注意する必要があります。

 

債権が二重に譲渡されていないか確認する

二重に債権譲渡されていると債権を回収できないリスクがあります。事前に債権譲渡登記がなされていないかチェックすることでリスクを減らすことができます。

管轄法務局で登記事項概要証明書を取得し債権譲渡登記がないことや債権譲渡通知がないことを債務者に確認することが有効です。

 

債権譲渡禁止特約がないか確認する

債権には債権譲渡禁止特約がついていることがあります。売掛金などの譲渡を制限する約束です。債権譲渡禁止特約があっても債権譲渡は原則として有効ですが特約の存在を知らなかったとしても重大な過失があるときは支払いを拒否されることがあります。

 

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弁済済みの債権ではないか確認する

債権譲渡の時点で支払いが終わっていることがあります。債権が現在も有効であるか事前に確認する必要があります。

 

債権の時効を確認する

債権には消滅時効があります。支払期限がだいぶ過ぎている債権については時効によって債権回収ができないリスクがあります。「時効期間を経過していないか」、「債務の承認により時効期間がリセットされていないか」などの確認が必要です。

 

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第三債務者の実態調査を行う

債権譲渡を受けたとしても第三債務者に弁済能力がなければ債権回収ができません。第三債務者の資力について可能な限り調査を行うことが大切です。

 

まとめ

・債権譲渡とは債権を他人に譲り渡すことです。債権の内容は変わりませんが債権者が変更になります。

・資金調達のためや債務の支払いのために現金の代わりに代物弁済として債権譲渡が利用されます。

ファクタリングは支払期限前に売掛金を売却して現金を手に入れる資金調達の手段であり債権譲渡を利用しています。

・担保として債権を取得することで債務者が支払いをできなくなったとしても第三債務者から回収することができます。

・ファクタリングにより債権譲渡すると手数料がかかるため元の債権額よりも回収額が少なくなります。

・債権譲渡は、1.債権譲渡契約の締結、2.債務者及び第三者対抗要件の取得により行います。

 

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