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代物弁済は債務者の資力が不足していて通常の弁済が困難な場合に重要な債権回収手段となります。代物弁済は債務を消滅させる点では通常の弁済と大きな違いがありません。
しかし税金面については大きな違いがあるため気を付ける必要があります。代物弁済では消費税など各種の税金が関係してくるからです。
この記事では、代物弁済に関する税金について非課税となる要件などを含めて解説していきます。
代物弁済とは
代物弁済とは、債権者と弁済者(債務者等)の契約により債務者が負担していた本来の債務に代えて、別の給付をすることで債務を消滅させる方法です。
例えば、100万円の借金がある場合にお金ではなく自動車を譲り渡すことで借金をなくしてしまう場合です。
お金以外のもの(不動産、動産、債権等)で弁済するため、代物弁済するものの価値が債務と同価値とは限らない点に特徴があります。基本的に受け取った目的物の価値が低く債権額に足りなかったとしても債務が消滅します(契約で差額を請求できるようにするなど例外はあります。)。
代物弁済そのものについて詳しくは「代物弁済とは?手順や注意点について解説」をご覧ください。
代物弁済と税金の関係
代物弁済と通常の弁済は債務が消滅するという効果については同じです(債務を消滅させるための手続きには違いがあります。)。
しかし税金面については大きな違いがあるため注意する必要があります。弁済には変わりないのだからと安易に代物弁済を選択してしまうと税金面で頭を悩ませることがあります。
代物弁済は、「目的物の売却」と「弁済」の2つに分けて考えるとわかりやすくなります。つまり通常は目的物を売却してお金を作り、それから弁済することになりますが、その場合と整合性をとる必要があるのです。
売却したのであれば譲渡所得が生じる可能性があり事業者であれば消費税も関係します。
目的物が本来の債務よりも高額であれば債権者が利益を得たとして贈与税の問題も発生します。
もちろん税金の問題は債務者と債権者に分けて考える必要があります。
債権回収という視点から見ると代物弁済については資産状況などから本来の弁済が難しい場合や代物の所有権が欲しい場合などに限定した方がいいかもしれません。
代物弁済により債務者が負担する税金
代物弁済により債務者にかかる税金としては、譲渡所得税や債務免除益による所得税、消費税が考えられます。
消費税
代物弁済の目的物が事業用資産であるときには消費税を考える必要があります。消費税は下記の課税4要件を満たすものが対象となります。
1.国内において行うものであること 2.事業者が事業として行うものであること 3.対価を得て行うものであること 4.資産の譲渡、貸付及び役務の提供であること |
代物弁済は資産の譲渡等に含まれると消費税法に規定されています(消費税法2条1項8号)。
対価の額は代物弁済により消滅する債務の額(精算金の支払いを受けるときはそれを加算した額)とされます(消費税法施行令45条2項1号)。
ただし土地など消費税が非課税となるものもあります。土地については消費されるものではなく資本が移転するだけだからです。一方で建物については価値の消費(減少)があるため課税対象です。
また消費税は事業者が事業として行う取引が対象のため事業用ではない個人資産による代物弁済については消費税の対象ではありません。
譲渡所得税
代物弁済をすると譲渡所得が生じる可能性があります。もちろん取得した時の費用や譲渡にかかる費用は譲渡所得を計算する際に考慮します。土地建物等と動産とは課税方法が異なります。
土地建物
土地建物の譲渡所得税については他の所得と区分して計算します(分離課税)。譲渡所得の計算式は次の通りです。
譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合) |
譲渡価額は代物弁済により消滅する債務の額が基本です。譲渡所得税は次の通り計算します。
譲渡所得税額=譲渡所得金額×(所得税率+住民税率) |
税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得により異なります。代物弁済した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超えるときは長期譲渡所得、5年以下のときは短期譲渡所得です。
|
所得税率 |
住民税率 |
長期譲渡所得 |
15%(15.315%※) |
5% |
短期譲渡所得 |
30%(30.63%※) |
9% |
※復興特別所得税として一定期間2.1%を乗じることになっています。
土地建物等以外
土地建物や株式等以外については原則通り総合課税となります。他の所得を合計して総所得金額を算出し所得控除の合計額の控除後に所定の所得税率をかけて税金を算出します。
<土地建物等以外の譲渡所得の計算式>
短期譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除50万円 長期譲渡所得={総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除の残額}×2分の1 |
※特別控除額は短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で50万円まで。先に短期譲渡所得を控除します。譲渡所得が50万円未満のときは譲渡所得が特別控除額です。短期譲渡所得については全額が課税対象ですが長期譲渡所得については2分の1が課税対象です。
<所得の短期長期の区別>
短期譲渡所得 |
・所有期間5年以下の資産の譲渡により生ずるもの |
長期譲渡所得 |
・所有期間5年超の資産の譲渡により生ずるもの ・自己の研究成果である特許権など(期間は関係ない) |
※総合課税では取得した日から所有期間を起算します。
債務免除益における所得税
不動産の価値が債務額よりも低い場合には債務者に利益が生じます。つまり債務との差額分については債務免除益が生じるため所得税(一時所得等)が生じる可能性があります。
<関連記事>売掛金が回収が不能・困難な場合の仕訳・対応をわかりやすく解説
代物弁済により債権者が負担する税金
代物弁済を受けた債権者にも税金が生じます。
贈与税
代物弁済の目的物の価値が債務額より高額であるときには贈与を受けたと考えることができます。そのため個人間の場合には贈与税がかかることがあります。
贈与税額=(1年間の贈与額の合計-基礎控除110万円)×税率-控除額 |
債権額を超える部分が贈与額となるためほかに贈与があれば合算して算出します。差額分を精算金として支払っていれば贈与していないことになります。
税率や控除額については「親や子の借金を肩代わりする義務はある?贈与税が発生するケースについても解説」をご参照ください。
不動産取得税
代物弁済の対象が土地建物であるときは不動産取得税がかかります。
不動産取得税額=固定資産税評価額(課税標準額)×税率(4%) |
※土地や住宅については税率や課税標準額が軽減されることがあります。登記をする際には登録免許税も必要となります。
代物弁済による譲渡所得税が非課税になるための要件
資産の譲渡があっても譲渡所得税が発生しないことがあります。
強制換価手続きにより譲渡された場合
資力がなく債務の弁済が著しく困難な場合において、税金の滞納処分や強制執行、破産手続きなどの強制換価手続きで資産が譲渡されたときは非課税とされます。本人の意思と無関係の処分であることや本人が代金を受け取れないからです。
任意の譲渡で非課税となる場合
代物弁済については下記の条件を満たすと非課税となりえます(所得税法9条1項10号、所得税法施行令26条)。
譲渡前に債務超過
資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であることが必要です。
清算金も他の債務弁済に充当
代物弁済の目的物が債務額を超えている場合において、精算金が支払われたときは、その全額を他の債務の弁済に充てる必要があります。
強制換価が避けられない状況
強制競売が時間の問題であるなど強制換価手続きが避けられない状況が求められます。
※記事の内容について保証するものではありません。税金については法律の改正やケースによって取り扱いが異なることがあります。実際の処理に当たっては必ず税理士等の税の専門家にご相談ください。
まとめ
・代物弁済とは、債権者と弁済者の契約により債務者が負っていた本来の債務の代わりに別の給付をして債務を消滅させるものです。
・代物弁済は消費税など各種の税金が発生する可能性があります。
・債務者については、消費税、譲渡所得税、債務免除益による所得税などが考えられます。
・債権者については、贈与税や不動産取得税などが考えられます。
・代物弁済による譲渡所得税は、1.資力を喪失し債務の弁済が著しく困難な場合に、2.強制換価が避けられない状況で、3.精算金が不要または精算金を全額他の債務の弁済に充当するときは非課税となります。
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