家賃滞納が起きた場合に支払いを催促しても応じてくれないときには内容証明郵便の利用を検討します。内容証明郵便を利用することで支払いを促すほか、賃貸借契約の解除を行うこともあります。

 

この記事では、家賃滞納が起きた場合の内容証明郵便の書き方について解説します。

 

※借金などの債務の返済ができずお困りの方こちらの記事をご覧ください。

 

家賃回収のために内容証明郵便を送るまでの流れ

家賃滞納が発生した場合には電話や訪問、手紙などにより滞納している家賃の支払いを催促していくことになります。このような一般的な方法で家賃滞納が解消しないときに内容証明郵便は滞納家賃回収の選択肢となります。内容証明郵便には強制的に滞納家賃を回収する効果はないため借主と交渉するための手段として使います。

 

内容証明を作成する

内容証明郵便を利用する際にはわかりやすい文面にする必要があります。何を求めているのか借主にすぐに伝わるような内容にすることが大切です。家賃滞納の場合であれば支払いの遅れている家賃の支払いだけを求めているのか、それとともに賃貸物件からの退去も求めているのか明確に記載します。

 

送付する

内容証明郵便を利用するには、郵便局に直接出向いて手続きを取る方法とインターネットを利用する方法(e内容証明)の2種類があります。インターネットを利用した場合にも文書は郵送されることになります。Eメールで送られるわけではありません。

作成した内容証明文書を郵便局や専用のWEBサイトから手続きをとり借主に対して送ってもらいます。

 

家賃滞納者と交渉する

内容証明郵便を送ったとしても家賃を強制的に回収できるわけではありません。家賃滞納が生じた際に内容証明を送る目的は、法的手段を予告したり賃貸借契約の解除を予告したりすることで相手にプレッシャーをかけることにあります。これまで支払いや話し合いに応じなかった相手方であっても、内容証明郵便を送付することで交渉に応じてくれることがあります。交渉により滞納家賃の支払いや退去に応じてもらうことで訴訟などの法的手段を使わずに問題を解決できることもあります。

 

内容証明郵便の書き方

内容証明郵便には文字数などの条件や書くべき内容があります。配達日時を証明するため「配達証明」のオプションもつけることが大切です。

 

内容証明郵便とは

内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に送ったかを郵便局に証明してもらう制度です。あくまでもどういった内容の文書を送ったかを証明してくれるサービスであり内容が真実であることを証明してくれるわけではありません。郵便局には文書の謄本が5年間保管されます。

 

差出方法

郵便局の窓口で手続きをとるには以下のものが必要です。

・送付文書

・送付文書の謄本2通(差出人と郵便局用)

・差出人と受取人の住所氏名を記載した封筒

・料金

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

内容証明郵便の書式

内容証明にはいくつか利用条件があります。図面や返信用封筒などを一緒に送ることはできません。謄本を添付する必要がありますが、その際には字数や行数制限があります。

縦書きのケース

・1行20字以内、1枚26行以内

横書きのケース

・1行20字以内、1枚26行以内

・1行13字以内、1枚40行以内

・1行26字以内、1枚20行以内

※窓口で送付する場合。e内容証明については1枚1584文字が目安です。

 

文字数の数え方や訂正の仕方など詳しくは、「債権回収の内容証明作成方法を弁護士が解説!債権回収を効率よく解説!」をご参照ください。

 

文書の中身

家賃滞納があった場合の内容証明には以下のような内容を記載します。

 

・賃貸借契約の内容(不動産の所在、賃料、支払時期、契約日等)

・家賃滞納金額

・振込先口座

・支払期限

・期限までに支払わない場合の対応(法的手段、契約解除等の予告)

 

賃貸借契約を明確に

内容証明がどの契約について送られたのかを明らかにします。借主はお金に困っている可能性が高く、他にも支払いを求められている可能性があります。

 

家賃滞納の催告であることを明確に

内容証明の目的が滞納家賃の催促であることを明らかにします。何月分の家賃が滞納されているのか、支払うべき滞納家賃の総額についても記載します。支払期限は内容証明到達から1週間程度の日付を記載します。「受領日から7日以内」などと記載する方法もありますが、「〇月〇日まで」と記載した方がわかりやすいでしょう。支払いの手間を省くため振込先口座も記載します。

 

期限までに支払わない場合の対応

期限までに滞納家賃が支払われなかった場合に何が起こるかを示すことも大切です。一般的には訴訟の提起や賃貸借契約の解除、顧問弁護士への委託等を予告します。契約の解除については期限までに支払われない場合に当然に解除する旨を記載することもできます。

 

<関連記事>顧問弁護士の費用・顧問料相場と顧問弁護士を雇うメリットを解説

 

家賃滞納時の内容証明のひな形・テンプレート

通知書

貴殿は、当方との間において下記内容の賃貸借契約(以下、本契約という。)を締結しておられますが、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで、合計〇か月分の家賃が滞納状態となっております。令和〇年〇月〇日までに滞納家賃金〇円を指定口座にお振込みください。

<お振込先>

A銀行B支店 普通〇〇〇〇 甲野一郎

1.物件の表示 東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション 〇号室

2.月額賃料 金〇円

3.契約日 令和〇年〇月〇日

※期限までにお振込みがない場合は、この通知書をもって直ちに本契約を解除します。また、訴訟等の法的手段をとることをご承知おきください。

令和〇年〇月〇日

東京都〇〇市〇〇1-2-3

甲野一郎

東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション 〇号室

木村太郎 殿

※契約の解除が不要な場合には解除通知の部分は記載しません。その場合、解除が必要となったときに改めて解除通知が必要となります。賃貸借契約の解除については信頼関係の破壊が要件となっているため家賃滞納があっても当然に解除できるわけではありません。

 

賃貸借契約の解除や明け渡しについては、「アパートの強制退去の流れとその注意点、費用について詳しく解説」をご覧ください。

 

内容証明郵便を送るメリット

家賃滞納に対して内容証明郵便を送るメリットには以下のようなものがあります。

 

相手に心理的プレッシャーを与えることができる

内容証明郵便は証拠として残りますし手間や費用をかけて送付され、受領の際にも手渡しされるなど、滞納家賃を回収しようという家主の強い意志が伝わります。法的手段や契約の解除という不利益を実感しやすくなるため滞納家賃の支払いに応じてもらえることがあります。

 

裁判所に提出する証拠になる

家賃滞納が長期にわたっている場合には明け渡しを求めていくことも必要です。借主が自分から退去してくれないときには訴訟を起こす必要があります。退去を求めるには契約の解除が必要となりますが内容証明により解除通知をしたことが証明できます。また家賃滞納が長期にわたっている場合には家賃が時効にかかるおそれもありますが、内容証明で催告することで一時的な時効対策ができることがあります。

 

時効について詳しくは、「気を付けるべき滞納家賃の消滅時効!トラブルを避けてしっかりと回収する」をご覧ください。

 

家賃回収を弁護士に依頼したほうがいい理由

家賃滞納でお困りの場合には下記の理由により弁護士に相談されることをおすすめします。

 

家主に代わって交渉を行ってもらえる

弁護士に依頼したとしてもすぐに訴訟になるわけではありません。弁護士から請求することで支払いに応じてもらえることがあります。相手の状況に合わせて柔軟に交渉することもできます。

 

適切な内容証明を作成してもらえる

内容証明に不備があった場合には契約の解除などが認められない恐れがあります。弁護士に依頼することで契約の内容や家賃滞納の状況に合わせた適切な内容証明を作成することができます。

 

法的措置を含め根本的な解決が期待できる

家賃滞納を解決するには最終的には訴訟などの法的手段をとる必要があります。大家さん自身で書類の作成や裁判所でのやり取りを行うことは簡単ではありません。弁護士に依頼すれば専門的な手続きを代行してもらうことができます。

家賃滞納は繰り返されることも多いですが弁護士に依頼して明け渡しを請求し根本的な解決を目指すこともできます。

 

まとめ

・内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰にあてて差し出したかを証明する郵便局のサービスです。

・家賃滞納があった場合に内容証明郵便を送付することで支払いを促したり、契約を解除したりすることができます。

内容証明には支払期限として1週間程度先の日を記載し、支払いがなかった場合の対応を記載します(顧問弁護士に委託する等)。

 

家賃滞納でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

家賃滞納でお困りの方へ。

 

家賃滞納は常態化しやすいため放置するとすぐに債権額が大きくなります。借主との人間関係の問題もあり強く請求できずに時間が経過するとさらに請求がしにくくなります。家賃にも時効があるため長期間放置することは賃貸経営にとってリスクが高くなります。また家賃滞納が長期化するとほかの賃借人に不公平感を与えてしまうこともあります。

家賃滞納が一時的なものであり今後の支払いに不安がないときには様子を見てもいいかもしれません。

しかし通常は家賃滞納から2~3か月以上経過しているときには弁護士への相談を検討した方がいいでしょう。一般的に3か月以上家賃滞納があると賃貸借契約の解除、明け渡しも認められやすくなります。

連帯保証人がいる場合には連帯保証人に滞納家賃の請求をすることもできますが請求が遅れると全額を回収できないことがあります。時効のことも考え早めに行動することが大切です。

 

当事務所は債権の回収に強い事務所です。家賃滞納など債権の回収にお困りの方はご相談ください。顧問料は月9,800円となっておりますので併せてご検討ください。