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サービサーは債権管理回収業者のことですが、業務内容が法律で規制されておりすべての金銭債権を取り扱えるわけではありません。債権の買い取りを業務としている点でも弁護士と異なる点があります。
この記事では、サービサーとは何かを業務内容や弁護士との違いを含めて解説します。
サービサーとは
サービサーとは、金融機関などから債権回収の委託を受けて、または債権を譲り受けて特定金銭債権の管理回収を行う株式会社のことです。特定金銭債権については後述します。
債権回収業務は法律事務に当たるため本来は弁護士しか扱うことができませんでしたが、一定の要件を満たした株式会社の中から特別に法務大臣の許可を得た者について債権回収業務が認められています。
サービサー法の趣旨
サービサー法の正式名称は、「債権管理回収業に関する特別措置法」です。バブル経済崩壊による大量の不良債権処理の必要性から効率よく特定金銭債権の管理回収を行うため株式会社に債権回収権限を与えることにし、債権管理回収業者の業務を適切に規制するためにサービサー法が制定されました。
サービサーとして認められるための要件
どんな会社でもサービサーになれるわけではありません。法務大臣の許可を受ける必要がありそのためには一定の要件を満たす必要があります(債権管理回収業に関する特別措置法5条)。要件は細かく決められていますが特に重要なものは以下の3つです。
資本金の額が5億円以上の株式会社であること
資本金の額が5億円以上の株式会社は会社法上の大会社となります(会社法2条6号)。大会社には会計監査人が必要的に選任されるため、その資格を持つ公認会計士や監査法人が関与することになります。
これにより公認会計士や監査法人によって財務関係を厳しくチェックされるため、厳格な経営がなされることになります。
常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること
株式会社として債権回収管理業務が認められるとしても法律事務に当たる以上、弁護士が全く関与しないわけにはいきません。そこで常務取締役の中に弁護士が1名以上いることが許可条件となっています。
弁護士であれば誰でもいいかというとそうではありません。債権回収業務を公正的確にこなせる知識経験が求められています。また、業務執行を常務として行わない形式だけの取締役では要件を満たしません。
法務大臣は、所属弁護士会が推薦している弁護士が取締役になっている場合を除いて、当該取締役がその職務を公正かつ的確に行うことができる知識や経験をもっているかどうか、日本弁護士連合会の意見を聴くことになっています。
このようにサービサー業務は知識や経験をもった弁護士でなければ難しいということです。
ただし、実際に債権回収を担当する人は訴訟手続等を除き弁護士である必要はありません(法11条2項)。
暴力団員等の関与がないこと
暴力団員が関与している会社では債権回収業務の適正な運営が期待できません。そのため暴力団員により支配されている会社や暴力団員を業務に従事させている会社は許可が下りません。暴力団員の関与を調べるために法務大臣はあらかじめ警察庁長官にも意見を聴くことになっています。
仮に、許可を受けないで債権管理回収業を営むと、3年以下の懲役や300万円以下の罰金が科されることがあります。
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サービサーが取り扱う特定金銭債権とは
サービサーはすべての債権を回収できるわけではありません。サービサーが債権管理回収を認められているのは特定金銭債権と呼ばれるものに限られます。
特定金銭債権とは以下のような金銭債権のことです(法2条1項)。
・銀行、保険会社等の金融機関の有する、または有していた貸付債権 ・金融機関等の貸付債権の担保権の目的となっている金銭債権 ・リース契約に基づいて生じる金銭債権 ・資産流動化法(SPC法)に規定する特定資産である金銭債権 ・ファクタリング業者が有する金銭債権(業務として買い取ったもの) ・法的倒産手続き中の者が有する金銭債権 ・法的倒産手続き中の者が第三者に譲渡した金銭債権 ・特定金銭債権を担保する保証契約に基づく債権 など |
弁護士にはこのような制限はなく幅広く債権回収が可能です。
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サービサーの業務
サービサーは、金融機関などから依頼されて以下のような業務を行っています。
・債権管理業務 ・債権回収業務(債務者に対する督促、法的手段等) ・債権買取 |
サービサーは金融機関などからの委託により債権管理・回収業務を行います。貸付金などに滞納が生じると督促や交渉などを開始します。また債権譲渡がなされたときにはサービサー自身が債権者として回収を行います。
債務者が任意に支払いに応じないケースでは訴訟等の法的手続きを実施することもあります(ただし法的手続きについては原則として弁護士が行う必要があります。)。
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サービサーとファクタリングの違い
ファクタリングは、支払期限前の売掛債権を売却して資金調達するものです。これに対してサービサーは、特定金銭債権を買い取って自ら債権者となり、または金融機関等から委託を受けて代わりに管理回収を行います。
ファクタリングについては、「売掛金は回収代行業者を利用して効率的に回収!回収代行サービスを使うメリット、デメリットを説明」もご参照ください。
サービサーと弁護士の違い
サービサーと弁護士には以下のような違いがあります。
性質
サービサーは株式会社であり会社法を根拠に設立した営利法人です。これに対して弁護士は弁護士法による規律を受けており依頼人の利益を守ることが求められています。
取り扱える債権の種類の制限
サービサーは原則として金融機関の貸付債権など特定金銭債権しか取り扱うことができません。
これに対して、弁護士の場合には取り扱える債権の範囲に制限はありません。
権限の制限
サービサーは、弁護士と同じように自己の名で債権管理回収手続きを行います。訴訟手続きも行うことができますが、140万円以下の簡易裁判所での手続を除き、弁護士が手続きをとらなければならないとされています(法11条2項)。
法律事務所に依頼された場合には債権額や裁判所による制限はありません。
警察による援助
サービサーは、債権管理回収業務の際に暴力団員による暴力的不法行為などによる被害を受けたりその恐れがあったりするときには警察に援助を求めることが可能とされています。
債権の買い取り
弁護士は依頼を受けて債権者の代理人として債権回収業務を行います。債権の買い取りはしてもらえません。
サービサーは債権の買い取りも業務内容となっています。本来金融機関等の不良債権処理を加速化するための制度であるため、サービサーに債権譲渡してしまった方が迅速に不良債権を処理できる側面もあります。
気を付けなければならないのは、サービサーは営利法人であるため債権回収の見込みの高いものしか買い取ってもらうことができない点です。買い取った金額との差額が利益となるため、債権の内容にもよりますが二束三文にしかならないこともありえます。
また、債権を完全に譲り渡してしまう方法は債務者の立場からすると、まったく知らない会社が突然権利者として出てくることから強い不信感を抱かせることになり反発を招くこともあります。
サービサーに債権譲渡する方法は債権回収が目的というより、不良債権と縁を切ることに意義があるといえます。債権回収が目的であれば回収を依頼すればよいからです。
<関連記事>債権譲渡とは?メリット・デメリットや注意点を分かりやすく解説
まとめ
・サービサーとは、金融機関などから債権回収の委託を受け、または債権を買い取り特定金銭債権の管理回収を行う株式会社です。
・特定金銭債権とは、金融機関等の保有する貸付債権など法律で規定された金銭債権です。
・サービサーは、法務大臣の許可を受けた株式会社が運営しており資本金5億円以上、常務取締役として弁護士がいること、暴力団が関与していないことなどの条件を満たす必要があります。
・サービサーは取り扱い債権に制限がありますが弁護士には制限がありません。
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