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債権譲渡はファクタリング会社を利用する際などに広く利用されますが税金面に注意が必要です。
この記事では債権譲渡における消費税について解説します。
消費税とは
消費税とは、商品の販売やサービスの提供など消費一般に広く公平に課税される間接税です。基本的に消費税を納付する者は事業者ですが消費税の負担者は商品などの提供を受ける消費者です。税金部分は商品などの価格に反映されているため最終的に消費者に転嫁される仕組みです。納税義務者と税の負担者が異なるため間接税に当たります。
消費税は消費一般に広く課税されることになりますが商品の流通過程などで二重に消費税がかからないための工夫がされています。
日本国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付及び役務の提供に対して課税されます。そのため国内で行われる商品の販売やサービスの提供など対価の発生する取引の多くに消費税が発生します。
ただし、取引のすべてで消費税の支払い義務が生じるわけではありません。消費税の趣旨などから消費税のかからない場合もあります。
消費税がかからない3つのパターン
以下のような場合には消費税がかからないことになっています。
非課税取引
国内において事業者が事業として対価を得て行う取引であっても消費に負担を課す目的に適さないものや社会政策的な理由により非課税とされているものがあります(消費税法6条)。国内の取引であっても下記の場合は消費税が課されません(同条2項、別表第2)。
・土地の譲渡及び貸付(一時的な使用や政令で定めるものを除く。) ・有価証券等の譲渡(ゴルフ会員権など政令で定めるものを除く。) ・支払手段の譲渡(紙幣硬貨などの譲渡。ただし収集目的など政令で定めるものを除く。) ・利子、保険料を対価とする役務の提供等 ・特定の場所で行う郵便切手や印紙などの譲渡 ・国や地方公共団体等の行う一定の事務にかかる役務の提供 ・外国為替業務にかかる役務の提供 ・社会保険医療の給付等 ・介護保険サービスの提供等 ・社会福祉事業等によるサービスの提供等 ・医療施設における助産にかかるサービスの提供等 ・埋葬料、火葬料 ・一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付等 ・学校教育における役務提供 ・教科用図書の譲渡 ・住宅の貸付(一時的な使用や政令で定めるものを除く。) |
金銭債権の譲渡は、有価証券に類するもの(消費税法施行令9条1項4号)として消費税が非課税とされます。有価証券や金銭債権の譲渡は「資本の移転」にすぎず消費とは言い難いからです。原則として土地に消費税がかからないのも同様の理由です。
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不課税取引
不課税取引とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引に該当しない取引です。例としては対価のない単純贈与や寄付、国外取引、出資への配当などがあります。
非課税取引も消費税が課されませんが課税売上割合の計算に違いが生じます。
課税売上高5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の場合には課税仕入れ等にかかる消費税額の全額を控除できます。課税売上割合が95%未満では控除できない消費税額が発生することになります。
非課税取引は課税売上割合の計算上、原則として分母のみに算入するため課税売上割合が小さくなります。不課税取引は消費税の対象外のため分母にも入れません。
免税取引
免税取引は消費税の課税対象ではあるものの支払いを免除される取引です。例としては商品の輸出、国際輸送、外国にある事業者にサービス提供する等の輸出類似取引があります。非課税取引と異なり消費税が免除されるだけであるため課税仕入れについて原則として控除可能です。
取引に消費税が課税される4つの条件
消費税の課税対象は以下の4条件をすべて満たすものです。
1.国内における取引 2.事業者が事業として行うもの 3.対価を得て行うもの 4.資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供 |
これらの4要件を一つでも満たさない取引は不課税取引です。
国内における取引
消費税の課税対象は国内取引です。資産取引については原則として資産の所在場所が国内にあるか否かで判断します。国外にあれば原則として不課税取引です。役務については役務提供をした場所が国内にあるか否かで判断します。
事業者が事業として行うもの
事業者とは、個人事業者と法人を指します。個人事業者は消費者との区別が問題となりますが事業者として行う取引が消費税の課税対象となります。生活で使用している家事用資産の譲渡は対象外です。これに対し法人が行う取引はすべて事業として行ったことになります。事業活動に付随した取引も該当します(事業用資産の譲渡等)。
対価を得るもの
資産の譲渡等に対価が生じるものが対象です。そのため寄付金や補助金が交付されても対価とは通常言えないため原則消費税の対象ではありません。代物弁済は対価を得て行う資産譲渡等に当たります(消費税法2条1項8号)。
<関連記事>代物弁済に対する税金について|非課税になるための要件を解説
資産の譲渡・貸付けまたは役務の提供
資産の譲渡とは、資産を売買等の契約により同一性を維持したまま他者に移転させることです。
資産の貸付とは、資産を賃貸借等の契約により、他者に貸し付け使用させることです。
役務の提供とは、請負、運送、委任、寄託などの契約により労務その他のサービスを提供することです。弁護士や税理士、俳優、スポーツ選手など専門的技能をもつ者も対象です。
債権譲渡と消費税の関係
債権譲渡をする際に消費税がかかるものがあります。
債権譲渡が消費税の対象となるケース
債権譲渡をする際には二重譲渡のリスクがあります。そのため第三者対抗要件を備える必要がありますが、法人のもつ金銭債権の譲渡等に関しては債権譲渡登記制度を利用して対抗要件を備えることが可能です。
債権譲渡登記を利用する際には司法書士への報酬が必要となりますが、司法書士報酬は「役務の提供」にあたるため消費税の課税対象となります。
また、ファクタリング会社に債権譲渡する際にはファクタリング会社が事務手数料を請求することがあります。この事務手数料は「役務の提供」の対価として課税対象となる可能性があります。
債権譲渡の第三者対抗要件については、「債権譲渡通知書とは?作成方法や債権譲渡登記制度の活用について詳しく解説」をご参照ください。
債権譲渡が消費税の対象とならないケース
債権譲渡そのものは非課税取引とされています。資産の譲渡とは言えますが「資本の移転」にすぎず「消費」しているとは言い難いからです。
債権譲渡そのものは消費税の課税対象とはなりませんが仕入税額控除には注意が必要です。非課税取引が多いほど課税売上割合が小さくなるため控除できない消費税が生じやすくなるからです。
もっとも金銭債権の譲渡については専門に取り扱う企業もあり、その場合課税売上割合が極端に小さくなってしまいます。そのため金銭債権の譲渡では課税売上割合の計算上、譲渡額の全額ではなく5%を分母に加えればよいことになっています。
ただし売掛金については商品やサービスを提供した時点で消費税が生じているため二重課税となってしまいます。そのため資産の譲渡等の対価として取得した売掛金等の譲渡については分母にも加える必要はありません。
また、ファクタリング会社などに債権譲渡する際に割引料や保証料、買取手数料などが支払われますが金銭債権の譲受対価にあたり非課税とされます(消費税法施行令10条3項8号)。
※記事の内容は基本的なケースを想定したものであり内容を保証するものではありません。消費税はケースによって取り扱いが異なります。実際の処理に当たっては税理士等に必ずご相談ください。
まとめ
・消費税は商品の販売や役務の提供など消費全般に広く公平に課される間接税です。
・消費税の課税対象は、1.国内取引、2.事業者が事業として行うもの、3.対価の発生、4.資産の譲渡、資産の貸付又は役務の提供のすべての要件を満たすものです。満たさないものは不課税取引です。
・消費税がかからないケースは、1.非課税取引、2.不課税取引、3.免税取引があります。
・金銭債権譲渡は非課税取引です。非課税取引は政策的理由等により課税対象外とされるものです。
・債権譲渡は消費税が非課税ですが課税売上割合の計算が通常のものと異なります。
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