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訴訟には種類があり民事事件や刑事事件に対応して手続きが異なります。免許取り消しなどの行政処分に不服があるときには行政訴訟というものもあります。
この記事では、訴訟の意味や種類のほか調停についても解説します。
訴訟とは
訴訟の意味は、トラブルの解決のために公の場に訴え出て裁決してもらう手続きのことです。しかし通常はより狭い意味で、「国家機関が紛争解決のために関係当事者を参加させて審理、判断する手続き」のことです。国家機関というのは通常は裁判所のことです。
訴訟という制度がなければ実力で問題を解決せざるを得ません。自分の力で権利を実現することを「自力救済」といいますが、社会秩序が乱れてしまうため原則として禁止されています。訴訟制度があることでトラブルを解決するために自力救済をしなくて済むことになります。
訴訟の種類
訴訟は紛争の内容により分類することができます。一般的には民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟の3種類に分けて考えます。
民事訴訟
民事訴訟とは、私的な生活関係で生じたトラブルについて裁判所が私法を適用して問題解決を図る手続きです。例えば、契約上のトラブルや損害賠償の問題を解決するために利用されます。
刑事訴訟
刑事訴訟とは、犯罪事実の有無を調べて刑罰を科すことの可否を判断したり刑罰の選択をしたりする手続きです。法律家である検察官が起訴することで行われる訴訟です。刑事訴訟において訴えられている人は被告人といいます。
行政訴訟
行政訴訟とは、行政庁の権限行使の適法性などを争う場合に行う訴訟手続きです。行政事件訴訟ともいいます。例えば、営業停止命令や課税処分、免許取り消しなどに不服がある場合にその行政処分の取り消しを求めて訴えを起こすような場合です。
民事訴訟と刑事訴訟の違い
刑事訴訟は犯罪が疑われる場合に検察官が刑罰の適用を求めて起訴する手続きであり、民事訴訟は私人間の権利関係の争いを解決するものです。そのため両訴訟は関係がないように見えるかもしれません。しかし交通事故のように一つの事件が損害賠償を求める民事訴訟の対象となり、一方で過失運転致死傷罪などとして刑事訴訟の対象となることもあります。民事上の賠償責任を果たすことで刑事上有利になることもあるため刑事事件に当たるケースでは二つの訴訟に注意する必要があります。いずれも訴訟であることから手続きに似ている部分はありますが以下のような点に違いがあります。
当事者
民事訴訟ではトラブルとなっている一方の当事者が訴えを提起して手続きが開始されます。訴えを起こした側を「原告」といいます。反対に訴えられた側を「被告」といいます。個人の場合もあれば会社などの法人や団体が当事者となることもあります。
刑事訴訟の場合には誰でも訴えを起こせるわけではありません。刑事事件において裁判を求めて裁判所に申し立てることを公訴といいます。公訴の提起(起訴)は原則として検察官しか行うことができません(起訴独占主義)。訴えられた人は「被告人」といいます。起訴される前に捜査対象となっている人のことは「被疑者」といいます。
訴訟の目的
民事訴訟をする意味は、私的な生活関係上の紛争を国家権力によって終局的に解決するためです。お金や物の支払い(引き渡し)を命じてもらったり親子や夫婦関係などの身分関係を確定させたりすることが目的です。
刑事訴訟の目的は、事案の真相を明らかにして刑罰を科すことの是非を判断し適正に刑罰法令を適用実現することにあります。
判決内容
民事訴訟における判決は、権利関係の存否を確定させたり相手方に義務の履行を命じたりするものです。特に相手に義務の履行を命じる判決が確定すると債務名義というものになり、相手の財産を差し押さえることができるようになるため重要です。
刑事訴訟における判決は、被告事件が罪とならないときや犯罪の証明がないときには「無罪判決」となり、犯罪の証明があったときには「有罪判決」が出されます。有罪判決のときには刑又は刑の免除を言い渡します。必要に応じて執行猶予や保護観察も言い渡されます。
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弁護士の役割
民事訴訟は私的なトラブルに過ぎないため弁護士をつけずに訴訟をすることができます。民事訴訟において弁護士をつける意味は訴訟当事者の代理人となり専門的な訴訟手続を本人に代わって行ってもらえることにあります。これにより時間や労力を削減することが可能となり適切な訴訟を遂行しやすくなります。
刑事訴訟において被告人を代理・擁護する人を「弁護人」といいます。弁護人は原則として弁護士でなければなれません。刑事訴訟は刑事罰という重大な結果を招くため専門知識が要求されるからです。民事訴訟においては簡易裁判所では弁護士以外の者が訴訟代理人となれることがあります。
刑事訴訟では長期3年を超える拘禁刑に当たる事件など弁護人がいないと開廷できないケースもあります(必要的弁護事件)。このようなケースでは裁判所(裁判長)が弁護人を選任することがあります(国選弁護人)。
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訴訟の基本的な流れ
民事訴訟の基本的な流れは以下の通りです。貸したお金を返してもらえないケースを想定して説明します。
訴状の提出
訴状を作成して管轄の裁判所に提出することで手続きを開始します。訴訟物の価額が140万円以下であれば簡易裁判所に管轄があり、それ以外のときは地方裁判所に管轄があるのが基本です。土地管轄については基本的に債務者の住所地を管轄する裁判所ですが、債権者の住所地を管轄する裁判所に手続きをとることも可能です(ただしケースによって異なります。)。
審理
訴状など必要書類を提出して訴えを提起すると期日が指定され被告に呼び出し状が送付されます。指定された期日にお互いの言い分や証拠が審理されることになります。言い分は訴状や準備書面に記載して提出するため書面でのやり取りが基本となります。弁護士が代理人となっているときは直接話を聞く必要がある場合を除き依頼人は出席する必要はありません。
判決
裁判所が十分審理を尽くしたと判断すれば判決手続きに移ります。原告が勝訴して判決が確定すれば強制執行できることになります。裁判所から和解を提案されることもあります。お互いに譲歩できる余地があるのであれば早期に解決できることや相手が任意に約束を果たしてくれる可能性もあるため和解に応じることも選択肢となります。
判決内容に不服があるときには原則として控訴することが可能です。控訴は判決送達日の翌日から起算して2週間以内に手続きする必要があります。控訴状は第一審裁判所に提出します。
訴訟について詳しくは、「債権回収の裁判(民事訴訟)知っておきたいメリットとデメリット、手続き、流れを解説」をご覧ください。
訴訟と調停の違い
トラブル解決の手段としては訴訟のほかに調停という手続きもあります。調停には民事調停や家事調停などがありますがここでは基本的な調停である民事調停に触れていきます。
民事調停とは
民事に関するトラブルについて裁判所で話し合ってお互いが合意することで解決を図る制度です。話し合いは法律家である調停主任と調停委員と呼ばれる一般市民に加わってもらい進行します。裁判と違い白黒決着をつけるようなものではないため実情にかなった円満な解決も期待できます。
民事調停のメリット
訴訟を起こすには訴状の作成が必要ですが、民事調停は特別な法律知識は不要であり簡易裁判所の窓口に置いてある申立用紙によりおひとりで申立てすることもできます。
訴訟よりも調停の方が申立費用は安くなっています。調停の期間は一般的に申し立てから3か月以内に終了することが多くなっています。ただし訴訟も事案が簡易なケースでは早期に終了することもあります。
訴訟の場合には公開の法廷で手続きが進行しますが調停の場合には非公開で行われるため秘密が守られます。調停委員には守秘義務もあります。
訴訟では判決が出るため途中で和解しないときには勝ち負けによる決着となります。調停では話し合いで解決を目指すため柔軟な解決がしやすくなります。
調停について詳しくは、「債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説」をご覧ください。
まとめ
・訴訟の意味は、トラブルを解決するために当事者が国家の裁判機関に申し立てをすることで行われる法律関係を確定させる手続きのことです。自力救済が原則禁止されるため必要な制度です。
・訴訟はトラブルの種類により分類することができます。一般的に「民事訴訟」、「刑事訴訟」、「行政訴訟」の3種類に分類されます。
・民事訴訟は、私的な生活関係のトラブルを扱うもので裁判所が私法を適用して解決をする訴訟です。契約や家族の問題、損害賠償請求などを扱います。
・刑事訴訟では犯罪事実の有無を調べて刑罰を科すことの可否や種類の選択が行われます。
・行政訴訟は、行政庁の権限行使の違法性を争う際などに利用されます。免許取り消しなどの行政処分の取り消しを求める際に利用されます。
・民事訴訟を行う意味としては、勝訴判決を得ることで権利を実現するために強制執行できるようになることが挙げられます。
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