目次

オーナーは知っておきたい!ネットショップに潜む債権回収問題

オーナー自身が債権回収する場合の5つの問題点

発生する債権は小口債権が多い

債権回収に割ける時間に限りがある

事務作業と負担の激増

回収方法のノウハウを持っていない

顧客と法的トラブルに発展するリスク

さいごに

 

平成から元号が変わろうとしている平成30年に、厚生労働省が1つの動きを見せました。働き方改革の1つとして、副業や兼業に関するガイドラインを公表したのです。1つの仕事だけでなく、2つ以上の仕事を兼業するなど、柔軟な仕事と生活を目指そうという方針です。

 

もちろん全ての副業や兼業が許されるわけではありません。違法な副業は法的な観点から許されません。また、務めている会社の商売敵の企業で副業をすることは、勤めている会社側から控えて欲しい旨の注意があることでしょう。しかし、行政が兼業や副業への積極的な動きを見せたことで、社会がより副業や兼業をしやすい流れになったのではないでしょうか。いずれ、1人が2つないしは数職の仕事を掛け持ちする時代が来るかもしれません。

 

これまでネットショップの経営など自宅でできる副業をしていた人は、1つの事業拡大のチャンスを得たわけです。もっと副業に力を入れようと考えるのではないでしょうか。副業に興味を持っていた人は、この機会に個人事業主として、手軽に開設できるネットショップのオーナーを検討するかもしれません。しかし、副業をはじめるということ、そして拡大するということは、すなわち副業に関する事務が増えるということです。

 

すでに副業としてネットショップのオーナーをしている人や、これからオーナーになろうと考えている人にとって、債権の回収は大きな問題になります。副業や兼業が推進されている時代。そして、ネットで手軽に自分のお店を持てる時代だからこそ知っておきたい、オーナー自身で債権の回収をすることの問題点とデメリットについてお話します。債権回収の問題で頭を悩ませる前に知っておきたい基礎知識です。

 

■オーナーは知っておきたい!ネットショップに潜む債権回収問題

 

ネットショップと通常の店の違いは、「実店舗の有無」です。ネットでの店舗と実店舗の両方を展開している企業もあります。しかし、副業や兼業でショップのオーナーになった人は、実店舗を持つことなく、ネット出店のみというケースが多くなっています。

 

実店舗を持つとそれだけ税金がかかります。また、税金の他に実店舗の維持管理費が必要になります。修繕費や、オーナーである自分が不在の時に店を任せる店員の人件費も必要になります。つまり、実店舗を持つということは、かなりの初期投資と、継続的な支出が必要になるということです。その点、ネットショップであれば、サーバーやプロバイダの費用、インターネットの回線費用、受注システムの費用くらいで済みます。

 

自宅のネット回線やプロバイダをそのまま使うなら、受注システムやサーバーの費用を合わせても年間で数千円程度の金額内で収まることも少なくありません。実店舗のように修繕費はほとんど発生しません。メールシステムや受注システムを充実させることによって、ある程度の注文まではオーナーが1人で対応することもできます。よって、よほど大きなネットショップでもなければ、人件費も発生しません。

 

基本はメールや受注システム上のやり取り。維持費用を実店舗より大幅におさえることができる。店員を雇わなくていい。店の規模も、オーナーの好みや副業に割くことのできる時間に合わせることができる。このように、ネットショップは手軽にはじめやすいところが魅力です。実店舗は経営や時間の面から無理だという人でも、ネットであれば簡単にはじめることができます。

 

ネットショップにはこのようにメリットがたくさんあります。反面、債権回収のむずかしさというデメリットもあります。

 

・オーナー自身が債権回収する場合の5つの問題点

 

手軽にはじめることができるといっても、ネットショップが「店」であることは実店舗と同じです。商品の仕入れをすれば売掛金が発生し、商品を販売すればショップと顧客の間に債権者と債務者の関係が発生します。経営している店が繁盛すると、その分だけ債権がたくさん発生するということです。

 

債権がたくさん発生すると、それだけ未払いや債権トラブルの可能性も増えます。債権の未回収やトラブルが増えれば、オーナーがやらないといけない債権にまつわる事務もぐんと増えます。繁盛とトラブルの増加は裏表なのです。

 

ネットショップは、オーナー1人ないしは数人程度の少人数で運営していることが多いという点は既にお話しました。一方でショップへの注文が増えると、比例して増える債権トラブルも増えます。個人のネットショップには、基本的に法務担当者などはいません。債権の回収問題が起きても、オーナーが主になって、1人ないしはごく少人数で解決に向けて動かなければならない。

 

しかし、ショップのオーナーが1人で債権の回収を行うことはあまり適切ではありません。なぜなら、オーナーが自身で債権回収などの問題に対応をすることには、以下のような問題点があるからです。

 

・発生する債権は小口債権が多い

・債権回収に割ける時間に限りがある

・事務作業と負担の激増

・回収方法のノウハウを持っていない

・顧客と法的トラブルに発展するリスク

 

■その① 発生する債権は小口債権が多い

 

ネットショップで発生するの債権は、多くが小口債権だという特徴があります。特定の企業やお店とやり取りをして高額の売掛金が発生するのではなく、個人のお客さんとの売買で小口債権が五月雨式に発生するケースが多いのです。

 

ネットショップは「小口債権が五月雨式に発生する」「対応しなければならない債権トラブルも、件数が多くなりがちである」「通常の注文が増えれば、未回収案件や債権トラブルも増える」という特徴があります。小口債権が五月雨式に大量に発生する点が、オーナー個人による債権の回収を阻む大きな問題点になります。

 

■その② 債権回収に割ける時間に限りがある

 

ネットショップのお客さんは、オーナーが債権を回収するための手続きに追われていることなど知りません。債権の回収手続きをしている間にも、次から次への注文が入り、回収しなければならない売買代金が増えることになります。

 

支払いが期限ぎりぎりでも、無事に回収できれば問題ありません。問題は、支払い期限まで支払いのない売買代金です。注文が増えると、比例して「支払がない」などの債権トラブルが増える可能性があります。しかも、トラブルに対応している間にも注文が入り、新たな債権トラブルが発生することが考えられます。さらに増えたトラブルに対応しながら、新しい注文にもどんどん対応しなければいけません。結果的に、「時間がなくなる」という問題が考えられます。

 

時間は有限です。1人でできる事務の量には限りがあります。ショップのオーナーが1人で債権の回収をすることは、時間的な面を考えると現実的ではありません。副業や家事の合間にショップの副業をしている人の場合、本業や家事との両立という点でも、オーナー1人が債権トラブルの対処をすることは難しいと考えられます。

 

■その③ 事務作業と負担の激増

 

たとえば、A企業とショップのオーナーの間に、1千万円の未回収の売掛金が1つだけ発生していたとします。プラスして、顧客Bとの間に、200万円の未回収の売買代金があったとします。この場合、額の大きな債権が2つですから、2つの債権の回収手続きを進めればよいことになります。

 

別のショップのオーナーは、顧客C・D・E・F・G・Hの6人に、未回収の売買代金がありました。全て1万円の債権でした。この場合、オーナーが回収の手続きをすることになる債権は、「6つ」です。

 

ネットショップの場合、前者の大口債権が僅かに発生するタイプより、後者のショップオーナーのようなタイプが多くなっています。たくさんの小口債権が次から次へと発生するのです。必然的に、オーナーが自分自身で回収しようとすると、何度も何度もそれぞれの顧客に対して督促などの回収手段を講じることになります。

 

回収しなければならない債権が増えることによって、事務や手続きという労力が増えることも問題になります。

 

■その④ 回収方法のノウハウを持っていない

 

1件や2件程度ならオーナー自身で督促などの手段を講じることができるかもしれません。しかし、未払いの債権が数十件もしくはそれ以上の相当数発生してしまったらどうでしょう。時間的にも労力的にも大変です。さらに、債権それぞれにあった回収方法を選択することも大変です。

 

債権の回収方法は1つではありません。メールや電話といった個人でできる督促から、訴訟や調停、任意交渉まで、いくつもの方法があります。債権額や債権の性質によって、どの回収方法を講じることが効果的なのか、そして回収率アップに繋がるのかが変わってきます。債権に合った回収方法を選択するためには、法的な知識も必須になります。

 

五月雨式に発生する小口債権1つ1つに適切な債権の回収方法を講じることは、非常に難しいことです。ネットショップの注文を処理しながら、オーナーだけでできるでしょうか。債権の回収件数によっては、注文処理にまったく手が回らず、債権ごとの回収方法を考えるだけで1日が終わってしまいます。

 

■その⑤ 顧客と法的トラブルに発展するリスク

 

もしオーナーが自分自身で債権の回収手段をあれやこれやと講じて、売買代金の回収に乗り出したとします。しかし、債権回収は法的な知識があってこそスムーズに進みます。思うように回収できず、時間と費用だけを失って終わる可能性があります。また、間違った債権の回収方法により、債権を回収するどころか、らに大きな法的トラブルに発展する可能性すらあります。

 

たとえば、ショップのオーナーが、期限が過ぎても支払がない売買代金を回収しようと考えて顧客に督促したとします。督促はメールで行いました。オーナーは売買代金を早く回収したい気持ちで、日に何通もメールで督促していました。すると、督促が悪質だということで、法的なトラブルに発展してしまいました。

 

債権回収は、法律に則って行う必要があります。たとえ売買代金を回収するためであっても、迷惑行為は許されません。督促の頻度や債権の回収方法を間違えると、顧客との間に法的なトラブルが発生してしまう可能性があるのです。オーナーが法律を調べながら適切な債権の回収を行うことは非常に難しいことです。

 

前述したように、ネットショップは常に注文が発生するため、小口債権が多いという特徴があります。小口債権それぞれに時間を割き、さらに債権の回収方法を選択して手続きや督促をする。これだけでもかなりの事務負担が発生します。さらに、債権の回収方法や進め方を間違えると、例のように債権の回収に留まらない法的トラブルに発展するというリスクがあるのです。

 

■さいごに

 

手軽にスタートできるネットショップだからこそ、「未払い債権の回収をどうするか」「未払い債権の対策をどうするか」「債権の未払いが起きたらどのように回収するか」は、よく考えておきたい重要事です。

 

ネットショップはオーナー1人または少人数で運営していることや、本業や家事の片手間に運営していることが多いという特徴があります。少人数制かつ時間的な制約があるネットショップで大量の小口債権を自分自身で回収することは現実的ではありません。時間的にも労力的にも厳しいものがあります。

 

また、債権トラブルは法律問題だからこそ、法的な知識を持たないまま対応しては、訴訟などのさらなるトラブルに発展する可能性があります。法的な面から考えても、オーナーが自分で債権回収をこなすことにはリスクがあるのです。

 

そのため、ネットショップの小口債権や売掛金は、弁護士に回収を一任することが賢明です。弁護士が債権を回収することによって、顧客と法的トラブルになるリスクを抑えつつ回収率をアップさせることができます。もちろん弁護士は、法律に則った方法で行うので、クレーム対策にもなるというメリットがあります。何より、オーナーの負担が格段に軽くなるというメリットがあります。

 

小口債権でもある程度件数がまとまれば、弁護士に回収を依頼することができます。ネットショップの債権回収でお困りのオーナーは今後の債権の回収対策を含めて、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。