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差押えは自力で行うことも不可能ではありません。訴訟を行ったり事前に執行証書(公正証書の一種)を取得したりして差し押さえに必要な書類を集め執行裁判所や執行官に申し立てを行うことで相手の財産を差し押さえて強制的に債権を回収していくことができます。
しかし差し押さえは一般の方にとってはハードルの高い手続きです。そのため通常は弁護士に差押えを依頼することになります。
この記事では、差し押さえを弁護士に依頼するべき理由や費用などを解説します。
差し押さえとは
貸したお金や売買代金などの金銭債権について強制的に相手の財産から回収するためには裁判所に申し立てをして強制執行手続きをとることになります。強制執行手続きは相手の財産の処分を禁止したり売却したり、配当をしたりといった手続きが行われます。差し押さえは強制執行手続きの一番初めに行う財産の事実上・法律上の処分を禁止する裁判所や執行官の行為のことです。
強制執行を申し立てることで財産が差し押さえられ債権の強制的な回収につながります。
差押えは強制執行の一部の手続きにすぎませんが、一般的には「差押え=強制執行」として認識されていることもあるため、この記事の中では「差押え」を「強制執行」を含む意味として使っていきます。
なお、差押えは債権を持っていれば誰でも申し立てられるわけではありません。差し押さえをするには「債務名義」というものが必要です。債務名義とは、強制執行可能な権利の存在を認める公的な文書のことです。一定の要件を満たした判決書や公正証書が代表的です。つまり差し押さえを自分でしたり弁護士に依頼するには判決書などを取得する必要があります。
債務名義について詳しくは、「債務名義とは? 取得方法と債権回収までの流れを分かりやすく解説」をご覧ください。
差し押さえの種類
債権を回収するにはどのような財産から回収したいのか決めなければなりません。対象の財産によって差し押さえの手続きが変わってくるからです。
動産執行
動産を差し押さえる強制執行方法を動産執行といいます。動産というのは基本的に不動産以外の物です(厳密には執行法上の動産は普通の動産とは少し違います。)。
例えば、宝飾品や美術品、有価証券、現金などを差し押さえる場合です。
債務名義を取得したら目的の財産のある場所を管轄している地方裁判所の執行官に以下のような書類を準備して申し立てます。
・申立書(当事者目録、請求金額計算書等) ・債務名義の正本(執行力があるもの) ・債務名義の送達証明書 ・法人の場合は資格証明書 ・現場の案内図(最寄り駅から現場までの経路) ※事案や裁判所によって違いがあります。手数料は執行官に予納金として支払いますが裁判所によって違いがあります(少なくとも2万円以上)。 |
動産執行の申立ての際には具体的な財産を指定する必要はありません。事前に執行官と打ち合わせを行い予定日に執行官が現場で差し押さえを実施します。通常は1週間から1か月程度で競り売りが行われ原則としてすぐに配当されます。
<関連記事>動産執行とは?手続きの流れや費用を解説
債権執行
預金や給料、売掛金などの金銭債権を差し押さえる方法を債権執行といいます。
債権を差し押さえるには以下のような書類を準備して裁判所に申し立てます。
・申立書(当事者目録、請求債権目録、差押債権目録) ・債務名義の正本(執行力があるもの) ・債務名義の送達証明書 ・法人の場合は資格証明書 ・収入印紙(手数料として4,000円分) ※事案や裁判所によって違いがあります。 |
差押命令は債務者と第三債務者(勤務先や銀行など)に送達されます。差し押さえの効力は第三債務者に送達されたときに生じます。差し押さえ命令が債務者に送達されて一定期間が過ぎると債権者が第三債務者から直接取り立て可能となります。
<関連記事>債権回収のために給料の差押えを行う方法と手順を詳しく解説
不動産執行
不動産を差し押さえる方法を不動産執行といいます。
不動産執行をするには以下のような書類を準備して裁判所に申し立てます。
・申立書(当事者目録、請求債権目録、物件目録等) ・債務名義の正本(執行力があるもの) ・債務名義の送達証明書 ・租税公課証明(固定資産税評価証明書等) ・地図、建物所在図等 ・不動産の登記事項証明書 ・債務者の住所証明書(住民票の写し、資格証明書等) ・不動産所在地に至るまでの通常の経路及び方法を記載した図面 ・収入印紙(4,000円分) ※事案や裁判所によって違いがあります。 |
申立てが認められると競売開始決定がなされ差押登記が入ります。その後現場に不動産鑑定士や執行官が訪れて状況を調査し書面にまとめられて一般に公開されます。買受希望者を募るため入札が行われ売却代金を原資にして配当されます。
<関連記事>強制競売とは?強制競売の流れをわかりやすく解説
その他の差し押さえ方法
登録された自動車を差し押さえる方法である自動車執行や、建設機械を差し押さえる建設機械執行、航空機を差し押さえる航空機執行や船舶を差し押さえる船舶執行といった方法があります。
これらは一見して動産のように思えますが登記や登録ができる物であるため、動産執行のように執行官が赴いて差し押さえをするのではなく裁判所で手続きをすることにより差し押さえを行います。
<関連記事>差し押さえとは?差し押さえ方法を詳しく紹介
差し押さえを弁護士に相談するメリット
差押えは簡単ではありません。法的な手続きもそうですがどのような財産があるのかを調べる必要もあります。差し押さえの専門家である弁護士に相談するメリットには以下のようなものがあります。
費用倒れのリスクを軽減できる
差押えには費用や時間、手間がかかります。特に不動産差し押さえは予納金が数十万円は必要となるため失敗は許されません。せっかく訴訟をしたのに費用を回収することもできなかったのでは本末転倒です。
差押えを弁護士に相談しておけば無理な差押えを避けやすくなります。
状況に適したアドバイスがもらえる
差押えを弁護士に相談することでどの財産を差し押さえるのがいいか指摘してもらえます。不動産は債権額が大きいときに選択肢となりますし、養育費の回収であれば継続的に差し押さえ可能な給料が検討できます。しかし不動産差し押さえは費用負担が大きいですし、給料差し押さえは金額に制限があります。弁護士であれば事案に合わせて適切な判断ができます。
<関連記事>未払い養育費を強制執行で回収する方法|メリット・デメリットや流れを解説
弁護士であれば財産調査がしやすい
差押えをするには相手に財産がなければなりません。相手にどのような財産があるのかを調査するのは簡単ではありません。弁護士であれば適切に財産の調査をすることができます。
<関連記事>財産開示手続とは?2020年改正で変わった点を詳しく解説
専門知識不要で差し押さえができる
差押えやその前提として必要な訴訟手続きは法律に基づいて行われるため専門知識がないと不利になることがあります。弁護士に手続きを任せることで専門的な知識がなくても差し押さえをしていくことができます。
<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説
差し押さえを弁護士に依頼した場合の費用
差押えを弁護士に依頼する場合には報酬金など費用がかかります。
相談料
「30分5,000円~」となっている弁護士事務所が多くなっています。
※あくまで目安であり事務所によって違いがあります。初回無料などの事務所もあります。
着手金
事務所やケースによって違いがありますが目安は以下の通りです。
<着手金の相場>
手続き |
着手金 |
金額での目安 |
訴訟 |
債権額の8%~ |
10万円~ |
債権執行 |
債権額の4%~ |
5万円~ |
動産執行 |
10万円~ |
|
不動産執行 |
15万円~ |
※(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬等基準などを参考にして作成
報酬金
回収に成功した場合には、回収額の10%~30%程度の成功報酬金が必要となります。ただし債権額や事案の難易度、事務所によって違いがあります。着手金と併せて考えることが重要です。
その他
交通費や出張費などが必要となるケースもあります。
<関連記事>差し押さえにかかる費用とは?弁護士に差し押さえを依頼したほうがよい理由をわかりやすく解説
まとめ
・差押えとは、金銭債権の強制執行の際に最初に行われる財産の処分禁止行為のことです。
・差押えには、動産執行、不動産執行、債権執行などの種類があります。
・差押えを弁護士に相談することで状況に応じた差押財産の提案をしてもらえます。
・差押えを弁護士に依頼すると着手金や報酬金などの費用がかかります。
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※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。