不良債権対策は、不良債権の防止不良債権が生じたときの2つに分けて考えることが大切です。

この記事では、不良債権とは何か、不良債権比率や回収方法などについて解説していきます。

 

不良債権とは

不良債権とは、回収が困難な金銭債権のことです。

本来は銀行などの金融機関の貸出債権のうち回収が難しいものを指しますが、一般企業にとっては回収困難な金銭債権全般を意味します。

 

よく似たものに「滞留債権」というものがあります。滞留債権は支払期日を過ぎても入金のない債権のことです。

滞留債権は支払期日を経過している状態の債権にすぎず、回収の困難性については考慮していません。そのため回収の容易な債権も支払期日が過ぎていれば滞留債権と呼ばれます。つまり、不良債権は滞留債権の一種ということになります。

 

不良債権は貸倒損失として処理することで税金面のメリットを受けられますが債権者が自由に貸倒処理できるわけではありません。

 

税務当局によって回収が困難であると認めてもらうことが重要です。そのためには回収作業をきちんと行うことが大切です。

 

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不良債権の事例

不良債権にも種類がありますが特に重要なのは「売掛債権」です。営業外取引によって生じる「未収入金」も重要ですが、営業取引によって生じる売掛債権が特に大切です。

病院など医療機関における「医業未収金」はここでいう売掛債権として理解してください。本業の不良債権率が高いときには経営に問題がある可能性があるため注意が必要です。

 

売掛債権

営業取引によって生じる金銭債権です。不良債権対策としては、与信管理の徹底と入金の遅れが確認できた時点で速やかに回収行動に移ることが大切です。

 

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貸付金

不良債権対策としては担保を取ることが有効です。多額の貸付金については不動産が、少額のものについては個人保証も有効です。担保の有無にかかわらず回収は迅速に行うことが必要です。

 

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立替金

取引先に代わって支払った発送費などが不良債権となりえます。自社の従業員に対する立替金は経費として処理できるため不良債権とはなりません。

 

未収入金

営業外取引により生じる金銭債権です。自社ビルの売却など金額の大きいケースでは経営に与える影響も大きくなります。

不良債権対策としては、不動産売却など債権額が大きいものについては担保を取得することが有効です。少額のものについては回収を迅速に行うことが大切です。

 

その他未収の債権

上記以外の不良債権としては次のようなものが考えられます。

 

・支払いが確定した損害賠償金

・保証債務を履行した場合の求償権

・先日付小切手(手形と同等の小切手)

など

※法人税法52条2項、法人税基本通達参照

 

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不良債権比率とは

不良債権比率とは、金銭債権の中で回収困難な債権がどのくらいの割合で存在するかを示す指標です。

不良債権の割合が低いほど与信判断が適切に行われている可能性が高く、企業経営の健全性を計る重要な指針となります。

 

<不良債権比率(計算式)>

不良債権比率(%)=不良債権額÷総金銭債権額×100

 

金融機関による融資や新規取引を行う際の与信判断の材料の一つです。

例えば、ある年度の売掛債権が2,500万円発生した場合に、50万円が回収困難となったときは次のように計算します。

 

500,000÷25,000,000×100=2

 

よって、不良債権比率は2%となります。

 

不良債権比率に絶対的な目安があるわけではありません。企業ごとに経営方針が異なるため他社との比較は参考程度にしかならないからです。

 

重要なことは不良債権比率を低くしようとする姿勢です。不良債権比率を下げる経営努力を行っていき低い水準を維持していくことが大切です。

 

仮に不良債権比率が上昇傾向にあるとすれば与信管理や回収業務に問題がある可能性があります。

与信管理であればリスクが高く取引を見合わせるべき相手と取引をしていたり、与信限度額を高めに設定していたりする可能性があります。

 

回収業務であれば滞留債権の段階で迅速に回収できていなかったり、弁護士や法的手段を活用できていなかったりする可能性があります。

 

不良債権比率を下げるためには与信管理の徹底や、滞留債権段階での迅速な回収が有効です。

 

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不良債権の回収ができるケース

不良債権の回収は不可能とは限りません。ケースによっては回収可能なこともあります。

債権回収全般に言えることですが、早めに回収行動を起こすことで回収確率を高めることができます。把握していない財産を見つけられるかもしれません。

連帯保証人などの担保を取っているケースも債権回収の可能性が高まります。

 

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不良債権の回収が困難なケース

不良債権の回収が不可能なケースでは貸倒損失を検討することになります。

 

消滅時効が成立している

債権には時効があり原則として5年で消滅する可能性があります(ケースによって期間が異なることがあります。)。

ただし、時効は一定期間が経過しただけでは完成しません。債務者が時効を援用する必要があります。時効が援用されると回収はできなくなります。

 

時効期間や対処法については、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご参照ください。

 

不良債権の存在を示す証拠がない

相手が債権の存在を否定することで不良債権となるケースもあります。このようなケースでは証拠がないと回収が難しくなります。

契約書やメール、見積書、事情を知っている人物の証言など証拠に特に制限はありません。間接的なものであっても資料を集めて弁護士に相談することが大切です。

 

支払能力がない

相手に支払能力がないケースも不良債権となり回収が難しくなります。ただし、支払いが滞っているだけであれば資産を隠している可能性もあります。あきらめる前に専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

 

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不良債権の回収方法

不良債権や滞留債権を回収する際は状況に応じて柔軟に対応することが必要です。

 

電話やメールで督促する

支払期日に入金が確認できないときは速やかに連絡をとることが大切です。電話やメールであればすぐに連絡をとれる可能性があります。電話であれば相手の応対の様子から支払いが遅れた原因を推測できることもあります。

連絡が取れたときには必ずいつ支払いが可能なのか支払日を確認しておきます。その日に入金が確認できなかったときに別の回収方法に移ることができるからです。入金日がうやむやになってしまうと回収に時間がかかりやすく不良債権化しやすくなります。

 

内容証明郵便を送付する

催促を重ねてもはぐらかされたり連絡を無視されたりする場合には弁護士への依頼や法的手段を予告します。

その際、相手に対するプレッシャーを最大限高めるとともに証拠として残すことのできる内容証明郵便も選択肢となります。仮差押えなどを行う際に内容証明郵便は重要な資料となります。

何度も法的手段を予告すると効果が薄れてしまいます。そのため、最後通告の印象をあたえられる内容証明郵便が効果を発揮することがあります。

 

<関連記事>債権回収の内容証明作成方法を弁護士が解説!債権回収を効率よく解説!

 

支払督促を申し立てる

支払督促とは、簡易裁判所の書記官に支払いを命じてもらう手続きです。手間が少ないため利用しやすい法的手段です。債務者が異議を申し出ると訴訟に移行してしまうデメリットはありますが、異議がなければ相手の財産を差し押さえて強制的に債権を回収することができます。

 

調停を申し立てる

法的手段といっても強制的なものだけではありません。簡易裁判所で話し合いにより解決する調停手続きも利用できます。民間人である調停委員の仲介のもとで穏便な解決を目指します。分割払いなど妥協できる部分があれば選択肢となります。

 

<関連記事>債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説

 

裁判を起こす

債権回収の確実な手段は訴訟です。調停や支払督促では債務者の行動に翻弄されるおそれがあります。時間がかかりやすいというデメリットはありますが途中で和解により解決することも少なくありません。金額が60万円以下であれば1日で判決を出してもらうことのできる少額訴訟という制度も利用できます。

 

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強制執行を行う

調停や和解が成立したり勝訴判決をもらったりしても相手が支払ってくれないことがあります。このようなときには相手の財産を差し押さえて強制的に債権の回収を行っていきます。相手が財産を隠したり処分したりするおそれがあるときには事前に仮差押えも行います。

 

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まとめ

・不良債権とは回収の困難な金銭債権のことです。

・滞留債権は支払期日を過ぎても支払いのない金銭債権のことであり不良債権とは違います。滞留債権の時点で回収し不良債権にしないことが大切です。

・不良債権対策は、迅速に回収することが重要であり弁護士への相談や法的手段をためらわないことです。

 

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