ホストによる売掛金の回収方法や詐欺的な営業行為が問題となっています。もちろんすべてのホストクラブが違法行為を行っているとはいえませんし業界団体を立ち上げて自主規制をする動きもあるようです。

適法に発生した売掛金であっても違法な回収行為は許されません。ホストの中には違法であるという認識がなく問題のある回収行為をしているケースもあるようです。

 

この記事では、違法な回収行為の具体例や適法な回収方法を解説していきます。

 

※ホストからの請求や借金などの支払いに困っている方こちらの記事をご参照ください。

 

ホストクラブの「売掛」とは

売掛金とは、代金後払いで商品やサービスを提供したことで発生するお金を請求できる権利のことです。つまり、ホストクラブでの売掛金というのは、「ツケ」のことです。

 

ホストクラブでの売掛金は2種類存在します。

1.ホストクラブが債権者の場合

2.担当ホスト個人が債権者の場合

 

以前はホストクラブ自身が債権者となるケースも多かったようですが、現在は担当ホスト個人が利用客との間で直接債権者となり、ホストが売掛金を回収できないと給料から天引きされる仕組みが増えているようです。

 

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ホストの売掛を回収するための法的手続き

適法に発生した売掛金であれば法的手続きをとることで回収していきます。

 

支払督促

支払督促を利用すると、簡易裁判所の書記官に売掛金の支払いを命じてもらうことができます。書面審査だけで利用可能なため法的手続きとしては簡単な方法といえます。デメリットとしては異議を申し立てられると訴訟になってしまうことです。異議が出されなければ財産に対し強制執行していくことも可能となります。

 

訴訟

支払いに応じてもらえない場合には訴訟を検討することになります。裁判所でのやり取りが必要なためハードルが高いことや時間がかかる点がデメリットといえます。ただし、相手が争ってこなかったり和解で終了したりするケースでは2か月程度で終わることがあります。

また、売掛金が60万円以下のケースでは少額訴訟という簡易的な手続きが利用でき、1日で審理から判決まで出してもらう方法もあります。

 

<関連記事>民事訴訟による売掛金回収の方法|メリット・デメリットまでご紹介

 

強制執行の申し立て

勝訴したり仮執行宣言付支払督促をもらったりすると財産から強制的に売掛金を回収することが可能となります。不動産などの物だけでなく預金や給料などの債権も対象です。

 

<関連記事>動産執行とは?手続きの流れや費用を解説

 

違法な売掛金の回収方法

売掛金を回収できないとホスト自身が負担させられるため強引な回収が行われるケースがありますが許されることではありません。特に以下に掲げるような行為は罪に問われることもあります。

 

犯罪など違法行為

脅迫や暴行などを行えば脅迫罪や暴行罪、傷害罪に問われることになります。他にも下記のような行為が問題となります。

 

家に押し掛ける

住居侵入罪に問われることがあります。退去を求められたのに居座ると不退去罪にあたることもあります。

 

風俗店などで働くことを求める

職業安定法に違反する可能性があります。内容によっては売春防止法違反や強要罪などが成立することもあります。スカウトマンを介したとしてもホスト自身が処罰される可能性があります。

 

※これらの行為によって困っている方は弁護士や警察等に相談することが必要です。

 

違法な回収業者の利用

滞納されている売掛金の回収は原則として弁護士と一部の司法書士にしかできません。法律事務を取り扱う資格のない者が売掛金の回収を行うことは弁護士法に違反します。このような違法な業者は取り立ても違法な方法をとることがあり依頼人も責任を問われる可能性があります。

 

反社会的勢力への依頼

売掛金の回収依頼先が反社会的勢力の場合には違法な取り立てを行うリスクが高く、依頼人であるホストも違法行為を認識していたと判断されやすくなると考えられます。

 

売掛金の返済がないときには法的手続きをとることが基本となります。

 

売掛を回収する上での注意点

売掛金には時効が存在します。時効期間はホストクラブの売掛金の場合、2020年3月31日以前に生じた売掛金については1年、2020年4月1日以降に生じたものは5年とされています。

期間が経過したからといって当然に時効が成立するわけではなく、債務者(利用客)からの時効の援用(時効なので支払わないという意思表示)が必要です。また時効期間の経過前に支払いの意思が示されたようなときには期間がリセットされることがあります。

 

時効について詳しくは、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご覧ください。

 

債権回収を弁護士に依頼するメリット

ホストの売掛金の回収については弁護士に相談されることをおすすめします。

 

相手にプレッシャーをかけられる

ホストが適正な商品やサービスを提供したにもかかわらず売掛金の支払いに応じてもらえないこともあります。適法な売掛金にもかかわらず回収方法に問題があれば回収に支障が生じます。

弁護士が代理人となり請求をすることで素直に支払いに応じてもらえることがあります。

 

事情に合った回収方法を提案してもらえる

売掛金の額や相手との関係などにより適切な売掛金の回収方法は異なります。売掛金の額が大きい場合には早い段階で法的な手続きをとることが適切なこともありますし、法的な手続きであっても話し合いで解決する民事調停や、訴訟などの強制的な方法もあります。支払督促は相手から異議が出される可能性の高いケースにはあまり向いていません。

弁護士であればケースにあった適切な回収方法を提案することができます。

 

<関連記事>債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説

 

回収手続きを一任できる

売掛金の回収手続きは容易ではありません。ホスト自らが回収しようとしても法的に問題のある行為は許されませんし、話し合いをするにも時間や手間がかかります。特に法的手続きについては書類を用意するだけでも簡単とは言えません。

売掛金の回収について弁護士に依頼すれば難しい手続きを任せることができます。

 

本来はホストクラブとして売掛金の未回収の責任を負うべきでありホスト個人に未回収の責任を負わせるべきではないとの意見もあります。ホストクラブが弁護士と顧問契約をすることで違法な回収を抑制できるかもしれません。

 

<関連記事>顧問弁護士の費用・顧問料相場と顧問弁護士を雇うメリットを解説

 

まとめ

・ホストの売掛とは「ツケ」のことであり回収できないと給与から天引きされることが問題となることがあります。

・違法な手段で売掛金を発生させた場合には請求権が否定されるだけでなく内容によっては犯罪として処罰されることも考えられます。

適法に生じた売掛金であっても違法な回収方法をとれば犯罪が成立することがあります。

・適法に発生したホストの売掛金は法的手段など適法な方法で回収する必要があります。

 

売掛金の回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

適切に商品やサービスを提供して発生した売掛金については回収していく権利があります。ホストの場合には売掛金の未回収の責任を店から負わされるケースが多くなっており、その結果として違法な回収につながっているとの指摘があります。

未回収の売掛金の給与からの天引きが問題となる裁判例もあることから、ホストと店側の関係によってはホストが労働者にあたり未払い賃金の支払いを店に求める方法も考えられます。

 

一方でホストクラブの売掛金は高額になりやすいため利用客が支払いをできなくなることがあります。ホストクラブ側に違法な点があれば公序良俗違反などにより売掛金が否定されることも考えられます。仮に適法な売掛金であっても自己破産等の債務整理を行うことで支払い義務を免責してもらえる可能性があります。借金等の支払いにお困りの際はこちらの記事をご参照ください。