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売掛金の回収が遅れるとさまざまなリスクが発生します。そのため効率よく回収する工夫が必要です。普段から未回収の原因に合わせて対処できるように準備しておくことが大切です。
この記事では、売掛金の未回収のリスクや対処法について解説していきます。
売掛金が未回収となる要因
売掛金が未回収となる原因は一つではありません。原因によってリスクや対処法も変わるため何が起きているのかを確かめることが重要です。
単純なミス
売掛金が未回収となる理由の一つが「事務処理上のミス」です。これには自社のミスと取引先のミスに場合分けできます。
リスク管理の視点からは自社のミスから点検することが大切です。自社に原因があるにもかかわらず取引先に督促をしてしまうと信頼に傷がつくからです。
自社のミスは請求書の発行や入金確認等で生じます。請求書の送付ミスや入金確認での計算違い(値引き等)などが考えられます。
取引先が原因として考えられるのは、支払期日の失念や支払済みであると思い込んでいるケース等です。
いずれも売掛金の未回収の原因が単純ミスであれば、すぐに対処する限りリスクは小さいといえます。ただし、対応が遅れるとトラブルが生じやすくなり未回収のリスクが高まるため入金確認は迅速に行うことが大切です。
意図的な不払い
取引相手が支払いを拒否することで売掛金が未回収となるケースもあります。このケースには相手に言い分があるケースとないケースに分けて考える必要があります。
相手に言い分があるケースというのは商品やサービスに不満があって支払いに応じない場合です。相手の言い分が正当なものか判断し対応を決めることになります。
不当な言い分や特に理由がないケースであれば法的手段を含めて売掛金の回収を進めていくことになります。
経済状況の悪化
取引先の資金繰りが悪くなり売掛金の回収ができなくなることもあります。相手の支払能力は変化するため取引時には信用に問題がなかったとしても支払時に支払いができなくなることもあります。
重要なことは資金繰りの悪化が一時的なものなのか、それとも回収の見込みがないのかという点です。リスクを見極めるためにも返済可能な期日を聞き取りし、回収手段を検討していくことになります。
売掛金が回収できない場合のリスク
売掛金が回収できない場合には以下のようなリスクが発生します。
資金繰りに影響がでる
売掛金を適切に回収できなければ買掛金などの支払いに支障が出ることになります。融資金の返済や取引先への支払いが遅れることになれば信用が傷つくことになり経営に影響が出ることになります。
金融機関からマイナス評価を受ける
金融機関から融資を受ける場合には審査を受ける必要があります。経営が適切に行われていなければ融資金の回収が難しくなるからです。売掛金の回収率が低いと銀行などの評価も低くなる恐れがあります。
生産性の低下
売掛金の回収業務は本業であるコア業務に付随するものにすぎず効率的に行うことが必要です。ノンコア業務に人員や時間をとられることで生産性が低下しますが売掛金が回収できないと生産性が大きく低下するリスクがあります。
未回収リスクの予防策
事前対策をすることで売掛金が未回収となるリスクを低くしていくことが大切です。
相談できる弁護士を探しておく
何か困ったことが起きたときに弁護士に相談すればいいと思われている方もいらっしゃるようです。しかし弁護士に相談するには予約が必要なことも多く必要なときに相談できるとは限りません。また弁護士には専門分野があり自社の抱えている問題に適切に対処できる事務所なのか調べるのに時間もかかります。
そのため問題が起こる前に弁護士を探しておくことが大切です。
<関連記事>顧問弁護士の費用・顧問料相場と顧問弁護士を雇うメリットを解説
与信管理の強化
取引の適否や決済方法の選択、適切な与信限度額の設定など与信管理を徹底することで売掛金の未回収のリスクを減らすことができます。与信管理は取引当初だけではなく継続的に行うことが大切です。
与信管理については、「貸し倒れによる損失を避けるための対策・対処法を詳しく解説」をご参照ください。
支払期日の前倒し
売掛金の回収サイトが長いとリスクが高くなります。同業他社と比べて売掛金回転期間が長くなっている場合には改善の余地があるかもしれません。特に新規の取引先の場合には未回収のリスクが高いため支払期日を早めに設定することも有効です。
<関連記事>売掛金回転期間とは?見方と計算方法をわかりやすく解説!
売掛金保証サービス
売掛金保証サービスを利用することで売掛金が未回収となったときに保証金を受け取ることができます。そのため売掛金未回収のリスクを抑えることが可能となります。
ただし、保証料がかかる点や受け取れる保証金は契約内容によって異なる点に注意が必要です。
請求や連絡は迅速に
請求書の発行は迅速に行うことが大切です。発行が遅れることで売掛金の回収が遅れるリスクも高くなります。また、入金の遅れが確認できたときにも迅速に連絡をすることが必要です。時間が経過すると支払いの有無をめぐるトラブルや資金繰りの悪化などにより未回収となるリスクが高くなります。
ファクタリングの活用
売掛金をファクタリング会社に売却することで未回収のリスクを低減することもできます。もっとも買取対象となる売掛金は支払期日前のものに限られることや手数料がかかることから基本的に支払期日前に現金が必要なときに検討されます。
売掛金の回収が遅れた際の対処法
売掛金の回収を行う基本的な手順を確認しておくことが大切です。
取引先に確認する
売掛金の支払いが遅れている原因を突き止めることが重要です。そのためには取引先に連絡を入れて事実の把握に努めることが大切です。支払い忘れのような単純ミスであればすぐに支払いを受けられる可能性がありますが、資金繰りの悪化が原因であれば支払いをいつ受けられるのか日付を明確にしておきます。期日が不明確だと回収手段の変更のタイミングがつかみにくくなり時効にかかるリスクも高くなります。
<関連記事>債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!
契約書の確認
売掛金を回収する際には契約書が重要な証拠となります。契約書がなくても取引先とのやり取りを裏付ける資料等があれば売掛金の回収は可能ですが、契約書がないと回収できなくなるリスクが高くなります。契約書には売掛金の回収に関係する条項が定められていることも多いので確認しておきます(ex.期限の利益喪失、所有権留保)。
<関連記事>工事代金未払いは契約書なしでも回収できる?弁護士に回収依頼するメリットを詳しく解説
出荷・取引の停止
契約書に記載した期限の利益喪失事由に該当したり支払不能状況にあったりした場合には同時履行の抗弁権や不安の抗弁権等を根拠に出荷を停止できる可能性があります。ただし、要件を満たしていないと反対に債務不履行責任を問われることがあるため事前に弁護士にご相談ください。
<関連記事>債権回収は弁護士に依頼した方がよいのか?メリット、注意点をしっかり、分かりやすく解説
売掛金の回収ができない場合の回収方法
通常の方法では売掛金を回収できない場合には法的手段や弁護士への相談を検討することになります。
仮差押え
仮差押えとは、売掛金等の金銭債権を保全するため債務者の財産を仮に差し押さえる手続きです。訴訟を起こしても財産を差し押さえる前に隠匿や処分をされてしまうと売掛金の回収ができなくなるためあらかじめ処分を禁止するためです。
仮差押えは債務者に強い圧力となるため任意に支払いに応じてくれることもあります。
<関連記事>債権回収のための仮差押え|効力、手続きの流れを解説
訴訟
相手の財産から強制的に回収するためには債務名義という強制執行の許可書が必要となります。債務名義の代表例は確定判決書です。確定判決書や同等の効果を持つ和解調書などをもらうために訴訟を行います。
60万円以下の売掛金の場合には少額訴訟という簡易な訴訟手続きを利用することもできます。
<関連記事>少額訴訟の費用相場は?費用倒れを回避する方法も解説
強制執行
裁判で勝ったにもかかわらず支払いに応じてもらえない場合には相手の財産を差し押さえて強制的に回収していくことを検討します。対象となる財産は不動産や動産、債権などがあります。債権は預金や給料、売掛金などがあります。つまり債務者の預金などを差し押さえて代わりに銀行などから支払いを受けられるようになります。
※弁護士に依頼した場合、任意に支払いに応じてもらえることもあるため必ずしも法的手段を要するわけではありません。
<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説
まとめ
・売掛金が未回収となる原因として、「事務処理上のミス」、「意図的な不払い」、「経済状況の悪化」があります。原因によって未回収リスクや対処法に違いがあります。
・売掛金の未回収リスクとしては、「資金繰りへの影響」、「金融機関からの評価の低下」、「生産性の低下」があります。
・未回収リスクの事前対策として、「相談できる弁護士を探しておく」、「与信管理の強化」、「支払期日の前倒し」などがあります。
・売掛金の回収が遅れた際の対処法としては、「取引先への連絡」、「契約書の確認」、「出荷停止の検討」などがあります。
・売掛金の回収方法としては訴訟などの法的手段や弁護士への依頼も検討します。
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売掛金が未回収になるとさまざまなリスクが発生します。効率よく回収するためには回収業務を外部委託することをおすすめします。
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