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お金を貸した場合や売掛金、未収金がある場合に返済が滞ると事業や生活に不安が生じることになります。それが多額の場合には弁護士に債権回収を依頼される方が多いですが少額の債権の場合にはかえって悩むことになります。費用倒れが心配な場合には弁護士に依頼せずに法的手段をとる方法もあります。
この記事では少額訴訟による債権回収について解説します。
※借金などの債務の返済ができず困っている方はこちらの記事をご参照ください。
少額訴訟とは
少額訴訟とは、60万円以下の債権回収に利用できる簡易迅速な訴訟手続きのことです。簡易裁判所に申し立てることで行います。特別な事情がない限り1日で審理が終わり判決もその日のうちになされます。テレビドラマで見るような法廷ではなく基本的に丸いテーブルに裁判官と一緒に座って手続きが行われます。個人でも利用できる心理的な負担の軽い訴訟手続きです。
少額訴訟に向いているケース
少額訴訟は原則として1日で終わる訴訟手続きです。そのため証拠が明確で相手が争ってこない単純なケースに向いています。
個人間の金銭の貸し借り
個人間での借金についてはうやむやになりやすく相手にはぐらかされてしまうことがあります。毅然とした態度をとるために比較的利用しやすい少額訴訟により債権回収をすることが考えられます。
ただし、借用書などの明確な証拠がないケースでは通常訴訟を検討した方がいいでしょう。
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交通事故
軽微な物損事故であれば少額訴訟を検討することができます。
ただし、過失割合や損害額など争いがあるケースには向いていません。また相手方に弁護士がつくケースも向いていません。任意保険に加害者が加入しているケースでは弁護士が代理人となることが通常です。少額訴訟は不服申し立ての手段が限られるなど不安定な面があるため相手方弁護士は少額訴訟を好まない傾向があります。後で述べるように被告が異議を述べると通常訴訟に移行することになっています。そのため相手方に弁護士がつくケースでは高確率で通常訴訟に移行します。
損害賠償請求
交通事故以外の損害賠償請求についても損害額について争いがなかったり、明確な証拠があったりするケースでは利用を検討できます。
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未払い賃金請求
未払いの給料も少額訴訟による債権回収が検討できます。勤務状況や労働契約などは証拠もそろえやすいからです。証拠に不安があるケースでは通常訴訟を検討します。
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アパートの敷金返還請求
敷金の返還も少額訴訟により債権回収をするのに向いています。敷金額は契約書に記載されており争点は比較的明確だからです。
少額訴訟のメリット
少額訴訟による債権回収には以下のメリットがあります。
和解による解決も期待できる
訴訟を起こしたとしても必ず判決が出るわけではありません。和解で終了することも多くあります。話し合いに応じてくれない相手方と交渉する機会でもあります。
通常訴訟よりも手続きが簡易
少額訴訟は通常の訴訟よりも手続きが簡易的です。弁護士に依頼せずご自分で手続きをとることも不可能ではありません。
通常訴訟よりも費用を抑えやすい
申立費用は通常訴訟と変わりませんが原則1日で終わるため費用を抑えやすくなります。
<関連記事>少額訴訟の費用相場は?費用倒れを回避する方法も解説
強制執行が可能になる
勝訴判決書や和解調書を作成してもらうことで相手の財産から強制的に債権回収することができます。少額訴訟では「少額訴訟債権執行」という簡易な債権回収方法も利用できます。
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少額訴訟のデメリット
少額訴訟による債権回収には以下のデメリットがあります。
被告の希望で通常訴訟に変わる
債権者が少額訴訟を希望していても被告には都合が悪いこともあります。被告が少額訴訟に異議を申し立てることで通常訴訟に変更されることになっています。
相手方に弁護士がつくケースでは異議が申し立てられることが多くなっています。そのため相手に弁護士がつく可能性が高いケースでははじめから通常訴訟を選択した方がいいかもしれません。
1回で終わるため事前準備が必要
少額訴訟は特別な事情がなければ1回で審理が終了します。そのため期日に必要な主張立証を漏らさず行うため事前準備に神経を使うことになります。
不利な判決でも控訴できない
通常の訴訟では不利な判決が出されたとしても上級審に控訴することができます。少額訴訟では控訴が認められていません。
また勝訴したとしても通常訴訟よりも不利な内容となることがあります。少額訴訟では分割払いや支払猶予、遅延損害金の免除がなされることがあります。
年間10回までしか利用できない
同じ裁判所では年に10回までしか利用できないという制限があります。
相手が支払わない場合、財産調査が必要
少額訴訟に限らず強制執行するには債務者の財産を調査する必要があります。裁判所が職権で調べてくれるわけではありません。
<関連記事>財産開示手続とは?2020年改正で変わった点を詳しく解説
相手の住所がわからないと利用できない
通常の訴訟であれば相手の所在が分からなくても訴えることができます。訴訟では必要な書類を相手方に送らなければなりませんが、「公示送達」という方法で書類を送達した扱いにできるからです。
ですが少額訴訟では公示送達が認められていないため相手の所在が分からないと通常訴訟に移行されます。
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少額訴訟を成功させるポイント
やみくもに少額訴訟を利用しても債権回収は難しくなります。
内容証明郵便での督促
相手が任意に支払いに応じてくれる可能性があるときにはプレッシャーを強めることも有効です。
内容証明郵便を利用して督促することで相手にプレッシャーを与えることができます。少額訴訟を予告することで支払いに応じてもらえるかもしれません。内容証明郵便は仮差押えなど法的手段をとる際の資料にもなります。
ただし、相手が経済的に困窮していたり財産を処分・隠匿したりする可能性があるときには仮差押えなどすぐに法的手段を検討します。
<関連記事>内容証明郵便を拒否・無視された場合の対処法|内容証明郵便の効力を弁護士が解説
少額訴訟が適切かどうかを確認する
少額の債権回収であっても少額訴訟がふさわしいとは限りません。相手から異議が申し立てられる可能性の高いケースや、複雑なケースでは通常訴訟など別の方法を検討することが必要です。せっかく少額訴訟を申し立てて予定を組んだのに通常訴訟に移行され、呼び出された期日に実質的な審理が行われないこともあります。
できるだけ証拠を集める
少額訴訟は1回の審理で原則として終了します。そのため証拠書類や証人などをその日に調べられるように準備しておくことが必要です。
少額訴訟以外で債権回収できる方法
60万円以下の債権回収であっても少額訴訟が適切とは限りません。他の債権回収方法も検討することが大切です。
和解交渉
話し合いで解決できればそれに越したことはありません。分割払いなどの条件を提示することで支払いに応じてもらえるケースもあります。直接の話し合いに応じてもらえない場合には簡易裁判所に民事調停を申し立てることで話し合う方法もあります。
また、相手が交渉に応じてくれないケースであっても弁護士が代理人となることで話し合いに応じてくれることがあります。弁護士に依頼したことで債権回収の本気度が伝わるからです。
<関連記事>債権回収における民事調停とは?手続きの流れを分かりやすく解説
支払督促
支払督促とは、簡易裁判所の書記官に申し立てることで金銭の支払いを命じてもらうものです。異議が出されると通常訴訟に移行してしまうデメリットがあるため異議が出される可能性が高いときには向いていません。
<関連記事>支払督促とは? 取引先にする場合のメリット・デメリット、手続きの流れを解説
相殺
相手と取引関係にある場合にはお互いが相手に対して金銭債権を持っていることがあります。このような場合には対等の金額の範囲で債権を消滅させることで事実上の債権回収をすることもできます。
事案が複雑な場合には通常訴訟を検討することも大切です。時間がかかるイメージがあるかもしれませんが和解で終了することも多く少額訴訟と大差ないこともあります。ただし通常の法廷で実施されるため弁護士に依頼されない場合には負担が大きいかもしれません。
<関連記事>自働債権と受働債権とは?相殺について分かりやすく解説
まとめ
・少額訴訟とは、60万円以下の少額の債権回収に利用できる簡易な訴訟手続きです。原則1回の審理で終了し即日判決が出されます。一般の法廷ではなく一つのテーブルに裁判官と一緒に座り手続きが行われます。
・被告は異議を申し立てることで通常訴訟に移行させることができます。相手方に弁護士がついているケースでは高確率で異議が出されます。
・原則1回の審理で終わるため事案が複雑なケースには向いていません。
・債権回収の手段として少額訴訟が向いているのは、事案が単純で相手が弁護士に依頼しないケースです。
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※個人間や単独の債権については相談料・着手金がかかります。くわしくは弁護士費用のページをご覧ください。
※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。