保証契約を結ぶと保証人は保証債務を負うことになります。お金を貸したり不動産を貸したりするときには保証契約がよく利用されます。債権者としては保証人を立ててもらった方が安心して契約をすることができます。

そもそも保証債務とは何でしょうか。連帯保証債務との違いも重要です。

 

この記事では、保証債務について連帯保証との違いなどを解説していきます。

 

保証債務とは

保証債務とは、債務者が責任を果たさない場合に債務者に代わって責任を負う約束をした保証人の債務のことです。

債務というのは、債権者(お金の貸主など)に一定の行為をしなければならない義務のことです。

例えば、お金を借りた人の保証人となった場合には、債務者が借金の返済ができなくなったときの保証人の返済義務のことです。

保証債務には主たる債務とは異なる性質があります。

 

付従性

保証債務には付従性があります。付従性というのは、主たる債務や権利の発生、消滅等に従う性質のことです。保証債務は、主たる債務が発生しなければ成立せず、弁済などにより消滅すれば消滅します。

 

・契約が無効で主たる債務がなかったことになるのであれば保証債務も無効となります。

・保証債務が主たる債務よりも重いときは主たる債務の範囲に制限されます(民法448条1項)。保証債務発生後に主たる債務が加重されても保証債務は加重されません(同条2項)。

・保証債務についてのみ違約金や損害賠償の予定をすることはできます(同法447条2項)。

 

随伴性

保証債務には随伴性があります。随伴性というのは、主たる債務が移転すると保証債務も一緒に移転するという性質のことです。

例えば、XがAにお金を貸してBが保証人となっている場合に、Xがその貸金債権をYに譲渡してAのXに対する債務がYに対するものになるとBの保証債務も移ります。

 

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補充性

保証債務には原則として補充性があります。補充性というのは、主たる債務者が履行しない場合に保証債務を履行すればいいという性質のことです(民法446条1項)。保証人の責任は二次的なものにすぎず債務者が責任を果たさないときにはじめて保証債務の履行が問題になるということです。この補充性から保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」という権利が認められています。

 

保証人の権利

保証人は債務者のために保証債務を負っているに過ぎないため、いくつかの権利が与えられています。

 

催告の抗弁権

保証債務の履行を債権者から請求された場合に、「まずは債務者に履行を求めてください」と要求できる保証人の権利を催告の抗弁権といいます。保証債務には補充性があるため債務者が履行しないときに責任を果たせば足りるからです。債務者が支払いに応じそうにない状況であっても、とりえあえず債務者に請求するように求めることができます。ただし、債務者が破産手続開始決定を受けた場合、行方が分からないとき、連帯保証債務の場合は認められません。

 

検索の抗弁権

保証債務の履行を債権者から請求された場合に、「先に債務者の財産に強制執行してください」と要求できる保証人の権利を検索の抗弁権といいます。ただし権利を行使するには債務者に弁済できる資力があり、執行が容易であることを示す必要があります。連帯保証人には認められていません。

 

分別の利益

保証債務を負っている人が複数いることもあります。このような場合に保証人の数で保証債務を平等に分割することを分別の利益といいます。例えば、AとBが同じ100万円の保証契約をしたときはそれぞれ50万円の保証債務を負担します。保証人にとっては有利ですが債権者にとっては不利な性質といえます。連帯保証人には分別の利益がありません。

 

求償権

保証人には債務者に対する求償権が認められています。保証人は債務者のために保証債務を負担するだけで本来は自分の債務ではないことから、債務者に代わって弁済する以上債務者に求償できるのです。ただし、債務者から頼まれて保証債務を負担したか否かなどケースによって求償できる範囲に違いがあります。

 

求償権について詳しくは、「求償権とは?時効や無視された場合の対処法について解説」をご覧ください。

 

保証債務の条件

保証債務が成立するには保証の約束をするだけでは足りません。一般的な契約は口約束でも成立しますが保証債務が成立するには一定の要件を満たす必要があります。

 

書面で契約すること

保証債務が有効に成立するには保証契約を書面でする必要があります(民法446条2項)。知り合いから頼まれて深く考えずに保証債務を負担してしまう方を保護するためです。特に連帯保証債務は債務者と同等の責任を負うことから予想していなかった大きな債務を背負い自己破産せざるを得ないこともあります。そのため慎重に契約をさせる趣旨です。書面ではなく電磁的記録によって保証契約をすることもできます。

 

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保証能力があること

保証人は原則として誰でもなることが可能であり合意がある限り特に制限はありません。ただし債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、以下の要件を満たす者でなければなりません(民法450条)。

 

・行為能力者であること

・弁済をする資力があること

 

行為能力というのは、契約などの法律行為を自分一人で行うことができる資格のことです。未成年者や成年被後見人などは制限行為能力者と呼ばれ、親権者などの協力がないと契約が取り消されることがあります。そのため保証契約を取り消されないように行為能力者であることが必要です。

また弁済する資力がなければ保証人を立ててもらう意味がありません。例えば、アパートを貸す際に保証人を立ててもらうときには保証人の経済力を確認することが必要です。

 

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連帯保証との違い

連帯保証債務とは、主たる債務者と保証人が連帯して債務を負担することです。要するに連帯保証人は主債務者と同等の責任を負っていることになります。したがって通常の保証人に認められている各種の権利が行使できません。

 

催告の抗弁権がない

連帯保証債務の場合には保証人に催告の抗弁権がありません。通常の保証債務では補充性という性質がありましたが連帯して責任を負うため補充性がないのです。そのため補充性から認められる催告の抗弁権もないことになります。したがって債務者に請求する前であっても保証債務の履行責任があることから請求を拒否できません。

 

検索の抗弁権がない

連帯保証債務の場合には保証人に検索の抗弁権がありません。連帯保証債務には補充性がないからです。したがって債務者に強制執行容易な財産があっても債権者からの履行請求を拒否できません。

 

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分別の利益がない

連帯保証債務の場合には保証人に分別の利益がありません。したがって各連帯保証人は債務全額について保証債務を負うことになります。

 

債権者は通常の保証契約ではなく連帯保証契約を結ぶことが重要です。

 

 

保証債務

連帯保証債務

催告・検索の抗弁権

ある

ない

分別の利益

ある(例外456条、427条)

ない

 

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保証債務の消滅時効

債権者が一定の期間権利を適切に行使しないと権利が時効によって消滅することがあります。主たる債務が時効にかかると保証債務の履行も拒否される可能性があります。

2020年4月1日以降に生じた債権の時効期間は原則として以下のようになっています。

 

起算点

時効期間

権利を行使できることを知った時から

5年

権利を行使することができる時から

10年

※不法行為や給料債権など時効期間が異なるものもあります。

 

改正前に生じた債権の時効期間は原則10年です。ただし商事債権は原則5年であり、1~3年の短い期間が定められていたものもあります。

 

ただし、時効は援用しなければ効果が生じないため時効期間が過ぎたからといって当然には保証債務は消滅しません。

 

時効について詳しくは、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご参照ください。

 

まとめ

・保証債務とは、保証人が債務者に代わって履行しなければならない義務のことです。

・保証債務には付従性、随伴性、補充性という性質があります。

・保証債務の性質から、保証人には「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」、「求償権」が認められます。

・保証債務の成立には契約書の作成など一定の要件を満たす必要があります。

・連帯保証債務には、「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」がありません。

・保証人を立ててもらう場合には「連帯保証契約」にすることが大切です。

 

債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

当事務所は債権の回収に強い事務所です。

貸金や家賃の回収を確実にするために保証人を立ててもらうことは有効な対策となります。特に連帯保証債務であれば債務者と同等の責任が生じるため債権回収の不安が減ることになります。

しかし保証契約があったとしても保証人が保証債務を履行できる能力がなければ意味がありません。また通常の保証契約では保証人から催告の抗弁権や検索の抗弁権を行使されることがあります。そのため保証契約をする段階で十分に注意を払うことがトラブルを防ぐことにつながります。

できるだけ弊所のような企業法務に強い弁護士法人に契約書等のリーガルチェックを依頼されることをおすすめします。

 

※借金などの債務の返済ができずお困りの方こちらの記事をご参照ください。