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債権にはいろいろな種類があります。債権の種類は債権の発生原因によって異なります。債権の発生原因で重要なものは、「契約」、「事務管理」、「不当利得」、「不法行為」があります。
この記事では、債権の種類や債権の発生原因について解説していきます。
債権とは
債権とは、ある人が別の特定の人物に一定の行為を請求できる権利のことです。債権を持っている人のことを債権者といいます。反対に債権者に対して一定の行為をしなければならない義務のことを債務といいます。債務を負っている人のことは債務者といいます。
例えば、AがBに100円で物を売った場合にAがBに対して100円を請求できる権利が債権です。一方でBもAに対して目的物を引き渡すように請求できる債権があります。つまりこのケースではAとBはお互いに債権者であり債務者でもあります。
債権の発生原因
債権の発生原因には、「契約」、「事務管理」、「不当利得」、「不法行為」など種類がありますが特に重要なものが契約(当事者の合意によるもの)です。当事者の合意が債権発生原因となるものを約定債権と呼ぶことがあります。当事者の合意がなくても不法行為など一定の事実があることで法律上認められる債権の発生原因は法定債権と呼びます。
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契約
債権の発生原因としては契約が特に重要なものです。そのため契約に関する基本的な知識を得ておくことは債権回収の観点から有益です。契約とは債権債務を発生させる約束のことです。口約束でも契約は成立します(ただし、保証契約など書面の作成が成立要件となっているものもあります。)。
双務契約
契約の基本的な内容を定めている法律を「民法」といいます。民法の契約の章には売買や賃貸借など13種類の契約が規定されています。この13種類の契約が基本的なものであり「典型契約」と呼ばれます。しかし基本的に契約の内容は自由に定めることができます(契約自由の原則)。そのため13種類の契約に当てはまらない契約も原則として可能となっています(非典型契約)。ただし何でも自由というわけにはいかないため法令で制限されていることがあります。例えば、お金の貸し借りをするときには「利息」をとることができますが利息制限法という法律で利率の上限が定められています。
契約は権利や義務を発生させるものであり内容によって分類することができます。
契約は債権や債務の発生原因となりますが当事者双方が対価的な債務を負うものを「双務契約」といいます。
例えば、売買、賃貸借、雇用、請負が双務契約に当たります。身近な契約の多くが対価を伴うため双務契約となっています。商品の売買であれば購入した人は代金の支払い債務を、販売した人は商品を引き渡す債務を負い、それぞれの債権債務は対価的な関係にあるため双務契約にあたります。
片務契約
当事者の一方のみが債務を負担するケースや当事者の双方が債務を負担している場合でも対価的な関係とは言えないものを「片務契約」といいます。
例えば、当事者の一方が使い終わったら返す約束で相手から無償で物を借り受けることがあります。このような約束も法律上は契約の一種であり「使用貸借」といいます。この契約は、借りている人は貸してくれた人に対して受け取った物を返還するという債務を負っていますが、貸した人は特に債務を負っていないため片務契約にあたります。ほかにも物を無償で譲渡する合意をした場合には贈与契約が成立し、譲渡する約束をした人は債務を負いますが、もらう人は債務を負っていないのでこれも片務契約になります。
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相殺
債権の発生原因も重要ですが債権回収という観点からは債権債務の消滅について考えることも大切です。
債権は相手の弁済(義務を果たすこと)により消滅しますがそれ以外にも消滅することがあります。取引先など同じ相手と何度も契約をしているケースでは「相殺」が特に重要です。
相殺とは、債権者と債務者の双方が相手に対して同種の債権債務がある場合に意思表示だけで債権債務を消滅させることです。
お互いに代金債権や貸付金など金銭債権を持っている場合にはお金を実際に支払わなくても対等額で債権を消滅できれば効率的です。債務者の支払いが滞っているようなときでも債権回収が可能となります。
相殺について詳しくは、「自働債権と受働債権とは?相殺について分かりやすく解説」をご覧ください。
相続
契約相手が亡くなることもあります。このような場合における債権債務についても考えておくことが重要です。
人が亡くなったときには相続が発生します。相続とは亡くなった人の財産上の権利義務の一切を受け継ぐことです。債権者に相続が発生したときには相続人が債権者となります。債務者に相続が発生したときには相続人が債務者となります。もし自分が誰かの相続人となり亡くなった人が誰かにお金を貸していたような場合には債権者として債務者に対してお金を支払うように請求することができます。債務者が亡くなったときには相続人に対して債権を行使することができます。
ただし、債務者が亡くなった場合には相続人が相続放棄することがあります。受け継ぐ財産よりも借金の方が大きいと困るからです。このような場合には他の相続人を探したり相続放棄が無効ではないか検討したりすることになります。
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不法行為
債権の発生原因は契約だけではありません。不法行為によっても発生します。不法行為とは故意または過失により権利や利益を侵害してしまい損害を与えることで債権発生原因となります。被害者は加害者に対して損害賠償を求める債権を取得することになります。不法行為が成立するには、①権利や法的に保護される利益の侵害、②損害の発生、③故意または過失があること、④侵害と損害との因果関係、⑤責任能力が必要とされます。
<関連記事>損害賠償請求権とは?損害賠償債権の回収について詳しく解説
不当利得
債権の発生原因として「不当利得」もあります。不当利得とは、法的に正当な理由がないのに他人の財産などから利益を受けて損害を発生させることです。不当利得した人は返還義務を負うため債権発生原因の一つです。
例えば、売買契約により代金をもらったものの契約が無効であったときには法律上の理由がないのに代金を受け取ったことになるので、支払った人は返還を請求できる不当利得返還請求権(債権)があります。
事務管理
債権の発生原因の一つとして「事務管理」があります。事務管理とは、法的な義務がないのに他人のためにその事務を処理することです。
例えば、隣人がペットを飼っているが急病で入院してしまったためペットに餌を与えたり、留守中に集金人が来たため代わりに支払ったりすることです。頼まれてそういったことをしたのであれば契約(委任)による債権発生原因となりますが、合意がなくても本人の利益となるのであれば事務管理として債権発生原因となります。
事務管理が成立すると委任に類似した関係となり(民法701条)、立て替えたお金などを請求することができます。
まとめ
・債権とは、ある人が別の特定の人に対して一定の行為を要求できる権利のことです。
・債権の発生原因にはいくつか種類があり、契約、事務管理、不当利得、不法行為などがあります。特に重要なものが「契約」です。
・契約とは、債権債務を発生させる合意のことであり、原則として口頭の約束でも成立します(保証契約など書面ですることが必要な契約もあります。)。
・契約には種類があり双務契約と片務契約に分けられます。双務契約は当事者双方が対価的な債務を負うものであり、そうでないものを片務契約といいます。
・事務管理とは、法的な義務がないのに他人のためにその仕事を行うことです。立替払いした費用などの債権が発生します。
・不当利得とは、法的に正当な理由がないのに他人の財産などから利益を受けて損害を発生させることです。不当利得の返還を求める債権発生原因となります。
・不法行為とは、故意や過失により権利や利益を侵害して損害を発生させることです。損害賠償を求める債権発生原因となります。
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債権発生原因には契約、事務管理、不当利得、不法行為などがあります。それぞれの債権発生原因に基づき請求権の発生根拠や請求金額が異なります。特に契約が債権発生原因となっている場合には契約内容に従って債権債務が発生するため特約に注意しながら債権回収をする必要があります。
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