契約の相手方が債務不履行を起こすことがあります。このようなときに備えて保証契約を結んでおくことは大切なことです。しかし保証人に請求する方法が分からないかもしれません。「いつ請求していいのか」、「いくら請求できるのか」、「時効はあるのか」など不安があるかもしれません。

 

この記事では、保証人への請求・回収方法について解説します。

 

※債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。

 

保証人と連帯保証人の違い

保証人」と「連帯保証人」は名前がよく似ていますが大きく異なります。契約をする際に保証人を立ててもらう際には通常は「連帯保証人」になってもらいます。その理由は連帯保証人にすると責任が重くなるからです。権利者(債権者)の立場から見ればお金を請求しやすくなるということです。保証人と連帯保証人には、「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」の3点に違いがあります。

 

催告の抗弁権

保証人を立てるメリットは、債務者(本来支払うべき人)が支払いに応じてくれないときであっても保証人に請求することで代わりに支払ってもらえることです。支払期日が来たのに支払われなかったときは保証人に請求していくことになります。しかし滞納した理由は債務者がうっかり支払いを忘れていただけかもしれません。保証人としてはとりあえず債務者に請求してほしいと債権者に要求することができます。

このように支払いを請求された保証人が、「まずは債務者に督促をお願いします。」と請求する権利を「催告の抗弁権」といいます。

もしもこの請求をされた債権者が債務者に催告せず回収できなくなったときは、すぐに催告していれば回収できたはずの金額については保証人に請求できません。

このような権利が認められるのは保証人の立場が補充的なものだからです。

これに対して連帯保証人の場合には催告の抗弁権がありません。つまり債務者に請求せずに直接保証人に請求して回収できます。

 

※債務者が行方不明や破産したときは催告の抗弁権はありません。

 

検索の抗弁権

保証人の催告の抗弁権は、とりあえず債務者に請求することでなくすことができます。請求を受けた債務者が支払わないときは保証人に請求していくことになります。しかし債務者が支払える財産を持っていることもあります。保証人としてはとりあえず債務者の財産から回収してほしいと債権者に請求することができます。

このように請求を受けた保証人が、「まずは債務者の財産に差し押さえをお願いします。」と請求する権利を「検索の抗弁権」といいます。

ただし、保証人がこの請求を行う場合、債務者に支払いができる資力があり、執行が容易であることを証明する必要があります。

もしも保証人が執行の容易な財産の証明をしたのに執行をしなかったときは、すぐに執行していれば回収できた分は保証人に請求できません。

これに対して連帯保証人には検索の抗弁権はありません。つまり債務者に預金などの財産があっても保証人に請求して回収できます。

 

分別の利益

保証人が複数いることもあります。その場合には保証人が平等に支払えば負担が軽減されます。このように複数の保証人がいる場合に平等に分割した額についてだけ責任を負うことを分別の利益といいます。

例えば、債務が100万円の場合に保証人が2人いるときは、各保証人は50万円ずつ支払う責任を負います。

これに対して連帯保証人には分別の利益がありません。つまり各保証人は請求を受けた全額を支払う責任があります。

 

保証人への請求のタイミング

保証人への請求はできるだけ早く行います。特に連帯保証人の場合には債務者と同等の責任を負担しており、催告の抗弁権などもないためいつでも請求していくことが可能です。

保証人は他の契約の保証人となっていることもあります。保証契約を結んだ当初は保証人の財産状態に問題がなかったとしても今は違うかもしれません。連帯保証人は債務者と近しい関係の人が多いため債務者の資産状況が悪いときには保証人の経済状況も悪いことがあります。

また、債務者が期限の利益を喪失したときには保証人に対して2カ月以内に連絡しないといけないことになっています(保証人が法人の場合を除きます。)。連絡を怠ると遅延損害金の請求が制限されることがあります。

また賃貸借のように継続して金額が増えていく契約の場合には、早めに連絡を入れないと金額が多額となってしまい保証人に請求しても全額を支払ってもらえない可能性があります。

したがって、保証人への請求はなるべく早く行うようにすることが大切です。

 

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請求の方法・流れ

保証人への請求方法の流れを見ていきます。

 

保証人への請求

債務者本人が支払いを怠ったときにはなるべく早く保証人に連絡を入れます。電話や郵便により催告します。ただし、債務者本人は保証人に連絡を入れられることを普通は嫌がります。そのためいきなり保証人に請求すると債務者との間でトラブルになることもあります。したがって事前に債務者に対して「滞納を続けるなら保証人に連絡する」と警告しておくことも効果的です。

 

保証人は債務者がきちんと支払っていれば実際にはまず責任を問われません。連帯保証人は債務者本人と同じ責任を負っているのでいきなり連帯保証人に請求することも可能ですが、一般的には債務者本人が支払わないときに請求することになります。そのため保証人はいつ請求を受けるか予見することが難しくすぐに対応できないことがあります。

保証人の経済状況や金額によっては分割払いにしたり新たに担保をとったりすることも検討します。

 

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民事調停

保証人に請求しても素直に支払ってもらえないことがあります。「もっと早く連絡してくれれば滞納額は増えなかった」などの理由です。もし相手と話し合う余地があれば民事調停という手段が検討できます。簡易裁判所での話し合いの手続きであり民間の調停委員を交えて円満な解決を目指します。

ただし、交渉による手続きであるため話し合いの余地がなければなりません。

 

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支払督促

保証人への請求方法として支払督促を考える方もいるかもしれません。簡易裁判所の書記官から保証人に請求してもらう方法です。しかし支払督促にはデメリットもあるため慎重に利用するか判断する必要があります。支払督促はうまくいけば保証人の財産から強制的に回収できる可能性もあります。ですが支払督促は異議を申し立てることが可能であり、異議が出されると訴訟に発展してしまいます。はじめから訴訟をする場合には債権者の住所地の裁判所に申し立てられるのに対して、支払督促からの訴訟移行では相手の住所地の裁判所が管轄となるため不利益となる可能性があります。保証人が支払金額などで反論している場合には異議が出される蓋然性があるためはじめから訴訟を検討した方がいいかもしれません。

 

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訴訟

保証人に請求しても支払いに応じてもらえないときには訴訟を検討することになります。また相手の経済状況が悪いときには財産を保全するため仮差押えも考えます。

訴訟で言い分が認められて勝訴した場合には保証人の財産に対する強制執行も可能となります。

 

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請求する際の注意点

保証人に請求するには以下のポイントを押さえておきます。

 

消滅時効がある

保証人に対する請求権には時効があります。民法上の時効は原則5年とされています(時効期間は保証人が負担する債権の種類や発生時期、契約内容によって異なることがあります。)。そのため保証人への請求は早めに行うことが大切です。

もっとも時効期間が経過したからといって当然に保証人に請求できなくなるわけではありません。時効は一定の事情があるとリセットされることがあるからです。そのため期間が経過していても直ちにあきらめる必要はありません。

時効期間が心配な方は一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 

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保証人と連帯保証人の違い

通常の保証人と連帯保証人は法的に大きな違いがあります。そのため保証契約を結ぶ際には連帯保証契約にすることが一般的です。通常の保証人契約にしてしまっている場合には前記の抗弁権を念頭に置く必要があります。例えば、保証人が複数いる場合には人数分で割った金額しか請求できません。

これから保証人契約を結ぶ際には連帯保証契約を結ぶことが大切です。

 

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まとめ

・連帯保証人は債務者と同等の責任を負っています。そのため債務者に請求せずに直接連帯保証人に請求することも可能です。

・通常の保証人には「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」があり、連帯保証人にはありません。

・保証人に対する請求権は時効によって消滅することがあります。

・保証人に対する請求はなるべく早く行うことが大切です。

 

債権の回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

保証人への請求でお困りの方へ。

 

賃貸借契約や各種ローンなど保証人を立てる契約はさまざまです。契約の内容によって保証金額にも違いがあり債権回収の難易度も変わります。早い段階で仮差押えなどの法的手段を講じた方がいいケースもあれば交渉により支払いを促す方がいいケースもあります。

費用対効果を考えてケースに応じて柔軟に手続きを選択することが重要です。

 

当事務所は債権回収に強い法律事務所です。

依頼者様の事情に合わせて適切な回収方法をご提案いたします。

売掛金、家賃、貸金、医療未収金など債権の種類を問わず対応可能です。

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