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口約束だけでお金を貸し借りすることがあります。友人や親せきなどから借金を頼まれると借用書の作成を頼みづらいかもしれません。
この記事では口約束でお金を貸し借りした場合の対処法について詳しく解説します。
口約束でも返済義務はある
口約束でも原則として契約は成立することになっています(民法522条)。ただし、契約の種類によっては書面の作成が必要なものがあり、そのような契約では書面を作成していないと無効になることがあります。
お金の貸し借りの際に借用書や契約書を作らないことがあります。お金の貸し借りについては書面の作成は必須とはされていません。お金の貸し借りについて民法という法律では借用書などの書面の作成を必要とはしていないからです。
民法587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。 |
お金の貸し借りのことを法律の世界では「金銭消費貸借」と呼びます。民法587条によると、口約束でのお金の貸し借りであっても実際にお金を貸し付けたのであれば「金銭消費貸借」契約が成立します。
したがって、口約束でのお金の貸し借りであっても借主には返済義務があります。
ただし、返済義務があるからといって実際に返済してくれるとは限りません。借用書がないと借主が借金を踏み倒そうとすることがあります。また、お金を返してくれないときには裁判所に訴えることになりますが裁判官にお金の貸し借りを証明する必要もあります。そのため借用書を作成することが大切です。
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借用書がないときの貸し借りの証拠
口約束でのお金の貸し借りでは借用書以外の方法で貸し借りを証明することになります。「金銭の授受」と「返還の約束」を証明します。できるだけ多くの証拠を集めるようにします。
LINE・メールなど
口約束でのお金の貸し借りであってもLINEなどのメッセージアプリやメールでのやり取りが残っていることがあります。お金の貸し借りを約束したメッセージがあれば証拠として使える可能性があります。また、お金の貸し借りがあった後に借主から「もう少し貸してほしい」という内容が送られてきたり、支払いを請求したところ「もう少し待ってほしい」と返信が来たりしたときにもお金の貸し借りがあったことを推認できるので証拠として使える可能性があります。
預金通帳・振込の記録
口約束でのお金の貸し借りであっても借主の銀行口座に送金していれば記録が残ります。そのため振り込み記録によりお金の受け渡しの事実を証明することは可能です。そのうえでLINEなどでのやり取りがあれば金銭のやり取りが贈与ではなく貸し借りであったと認めてもらいやすくなります。
また、一部返済を受けた場合に銀行振り込みの記録が残っていればお金の貸し借りの証拠となりえます。
領収書
お金の貸し借りがあったときに領収書を書いてもらっていればお金の受領の証拠となります。また、口約束でのお金の貸し借りがあった後に一部を返済してもらったときは領収書を発行することがありますが、その控えも証拠となりえます。領収書を発行するときは但し書きに「〇年〇月〇日付貸付金〇万円の一部として」などと記載して、いつどのくらいのお金の貸し借りがあったのかが分かるようにします。
ただし、できるだけ相手の署名押印入りの債務承認書(借用書)を作るようにします。
契約書
口約束でお金の貸し借りをした場合であっても、後日契約書(債務承認弁済契約書)を作成することは可能であり重要な証拠となります。借用書は借主が署名押印して貸主に差し出すもので通常は貸主の署名押印がありません。契約書は当事者双方の署名押印がある点で異なりますが、いずれであってもお金の貸し借りの証拠となります。
間接証拠
借用書など直接お金の貸し借りを証明する証拠がない場合には間接的な証拠を集めることになります。例えば、お金を手渡しで貸したのであれば口座からの出金記録、お金の貸し借りがあったときに借主がお金に困っていたこと、その直後に高価な買い物をしたことなどを示す証拠です。
※ケースによってどの程度の証拠が必要となるかは異なります。法廷での当事者の発言や態度なども判断材料となります。お金の貸し借りがあったことを裁判官が確信できないときは訴えが認められません。
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お金の貸し借りの消滅時効
口約束でのお金の貸し借りで注意が必要なポイントの一つが消滅時効です。お金を返してほしいと要求できる権利のことを金銭債権といいますが金銭債権にはタイムリミットがあるからです。
お金の貸し借りの時効は原則5年
お金の貸し借りの時効期間は原則として5年となっています。金銭債権の種類や発生時期によっては期間が異なりますが2020年4月1日以降にお金の貸し借りをしている場合には基本的に5年で時効にかかる可能性があります。ただし、時効期間が過ぎても当然に権利が消滅するわけではなく、時効の援用という手続きが必要となります。
時効の援用とは
時効の援用とは時効の成立によって利益を得る人がその利益を受けるという意思を表示することです。つまり、時効期間が経過しているから支払う責任はないなどと貸主に意思表示することです。時効を援用したことを証拠に残すために内容証明郵便を使うこともあります。
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時効を阻止する方法
支払期日から5年が経過していても時効が成立するとは限りません。消滅時効を阻止する方法が用意されているからです。消滅時効を阻止する方法としては、「完成猶予」と時効の「更新」の2つがあります。「完成猶予」は一時的なものであり「更新」は時効期間がリセットされて始めから数え直すことになります。例えば、貸金返還訴訟を起こして勝訴判決が確定すると時効が更新されます(更新が判決によるときは単にリセットされるだけでなく時効期間が10年になります。)。
特に重要な更新理由として「借主による権利の承認」があります。借主が借金の返済義務があることを認めることで時効期間がリセットされます(この場合には時効期間は元のままです。)。
債務承認書(お金を支払う義務があることを認める書面)に署名捺印をもらうことができれば、口約束のケースでもお金の貸し借りの証拠になりますし時効期間の更新もできます。
他にも「返済期日を伸ばしてほしい」との申し出があれば、お金の貸し借りの事実を認めただけではなく債務の承認として時効期間が更新されます。
貸し借りしたお金の一部を返済することでも債務の承認にあたります。お金の貸し借りをしていないなら返済するはずがないからです。
債務の承認も証拠に残すことが大切です。証拠としては書面や銀行振り込みの記録などが考えられます。
債務の承認について詳しくは、「消滅時効援用における「債務の承認」とは?分かりやすく解説」をご覧ください。
お金が返って来ないときの対処法
口約束でお金の貸し借りをしてしまったときには証拠が少ないため借金を踏み倒されるリスクが高くなります。しかし取り戻せないと決まっているわけではありません。
催促をする
口約束でのお金の貸し借りの主な問題は明確な証拠がないことです。そのため他の証拠を集めることが重要となります。借主に対して催促する際にはメールなど記録に残る方法を使うことが考えられます。メールなどで催促することで返済の猶予を求める返信があればお金の貸し借りがあったことを示す証拠となりうるからです。口頭での催促であれば録音も重要な証拠となります。録音の承諾を相手に求める必要はありません。
いずれの場合も貸し借りの金額や年月日などが分かるようにすることが大切です。
少額訴訟を起こす
口約束でのお金の貸し借りであっても訴訟を起こすことは可能です。お金を貸し借りした事実を相手が認めている場合や、十分な証拠をそろえることができれば請求が認められる可能性があります。
請求金額が60万円以下の場合には少額訴訟という簡易化した訴訟手続きを利用することもできます。少額訴訟は判決に対して控訴できないなどデメリットもありますが一般の方が自力で訴訟を検討する場合には有力な選択肢となります。
ただし、勝訴できたとしても相手に財産がなければ強制執行することができません。預金や不動産、給料を差し押さえるのであれば勤め先などを調査する必要があります。
<関連記事>少額訴訟のデメリットとは?それでもすべき理由を解説
弁護士に相談する
貸し借りした金額が大きい場合には弁護士に相談されることをおすすめします。相手にもよりますが弁護士から請求をしただけで支払いや交渉に応じてくれることもあります。
問題は支払いに応じないケースです。口約束でのお金の貸し借りの場合には証拠が問題となりますが、勝訴の見込みやお金を実際に回収できる可能性がないのでは法的手続きをしても損失を増やしてしまいます。専門の弁護士に相談することで回収手続きを進めるか否かを判断しやすくなります。
<関連記事>借金を踏み倒す友人・知人への対応方法!個人間の借金トラブルを未然に防ぐ対策も合わせてご紹介
まとめ
・口約束でのお金の貸し借りでも返済義務があります。
・借用書がなくてもLINEやメール、録音などほかの証拠によって貸し借りを証明できることがあります。
・お金の貸し借りには時効があります。ただし、時効期間がリセットされることがあります。
・お金を返してくれないときにはメールなどで催促して証拠に残すことが大切です。
お金の貸し借りでお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所
貸したお金を返してもらえないと不安になってしまいます。夜も眠れなくなってしまうこともあります。貸し借りの金額が大きい場合には債権回収に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
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※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。