
目次
お金の貸し借りをする際には借用書を書いてもらうことが一般的です。借用書には最低限書くべき内容があります。
この記事では借用書の法的な意味や書き方などを解説していきます。
借用書とは
借用書とは、お金などを借りた際に借主が作成して貸主に差し出す文書であり、借用した金額や返済の約束などを記載したものです。
※この記事では金銭消費貸借契約書も含めた広い意味で「借用書」と呼ぶことにします。
借用書を作成する理由
借用書を作る理由は貸したものを返してもらいやすくするためです。借用書を作ることでお金などの貸し借りの事実が目に見えるようになります。口約束だけでは「いくら借りたのか」、「いつ返すのか」などがあいまいになってしまいます。貸したという事実が明確な証拠として残らないため借金を踏み倒されてしまうこともあります。借用書があれば訴訟になっても裁判所に支払いを命じてもらいやすくなるため債権を回収しやすくなります。
また借用書があることで支払いに応じてもらいやすくなります。目に見える形で貸し借りの証拠が残るため借主も借りたことを忘れにくくなり、返済期日も明確になり、訴えられたら負けることが分かるからです。
借用書と金銭消費貸借契約書の違い
借用書と似たものに「消費貸借契約書」があります。お金の貸し借りのことを法律上は「金銭消費貸借」といいます。契約書は約束した内容を当事者双方が協力して書面にしたものであり当事者双方の署名がなされます。
一方で借用書は借主が作成する書面であり署名は借主のみがすることが多いです。
借用書の法的な効力
借用書は法的に意味がありますが私人が作成した文書と公正証書とで効力に違いがあります。
私文書
文書には種類があり公務員が職務上作成した公文書と、それ以外の私文書に分かれます。一般的な借用書は私文書として作成されますが私文書であっても訴訟になった際には証拠として重要な役割を果たします。一方で公文書は強い推定力が認められているだけでなく公証人の作成した公正証書の場合には強制執行を可能に効果もあります。
公正証書
公正証書とは、公証人が私人からの依頼により作成する公文書のことを言います。公正証書は公証人が厳格な証拠により本人確認を行い、当事者の意思を確認した上で作成されるため一般的に高い証拠力が認められておりトラブル解決に効果的といえます。
借用書があっても借主が支払いをしてくれないときは、通常は訴訟を起こして判決をもらわないと相手の預金や不動産などの財産を強制執行することができません。
しかし借用書(金銭消費貸借契約書)を公正証書として作成した場合には、借主が「支払いをしないときは直ちに強制執行に服する」との記載が入っていると、裁判をしなくても相手の財産を差し押さえて回収していくことができます。
このように法的な効力が強いため借用書を公正証書で作成することも効果的です。
<関連記事>借用書が無くても貸したお金を回収できる?回収方法と弁護士に依頼するメリットを解説
借用書の法的効力を高めるポイント
借用書を作成する際はポイントを押さえることが重要です。
適切な条件を設定する
借用書には借主がどのような義務を誰に対して負っているか、いつ返済するかなどを記載することになります。当事者間の約束を書面としてまとめることになりますが、債権回収がしやすくなるようにケースに合わせて返済条件を設定します。
収入印紙を忘れない
紙の借用書には収入印紙が必要となることがあります。金額が1万円以上の場合には印紙が必要となります。仮に収入印紙を貼り忘れたとしても借用書が無効になるわけではありませんが、過怠税など法的な責任を問われることもあり法的に不備のある状態は避ける必要があります。
借主の署名捺印
借用書において特に重要なポイントの一つが借主の署名押印です。借用書に借主が署名または押印をすると借用書が真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。つまり借主が「借用書なんて知らない」ととぼけることが難しくなります。押印については実印を押してもらい印鑑証明書の交付も受けていると特に強力な証拠となります。
2通作成する
本来借用書は借主が貸主に差し入れる文書です。しかし借主の手元にも借用書があることで借用の事実や返済期日を認識しやすくなりトラブル防止に役立ちます。そこで借用書の写しを借主に交付することも大切です。印紙税については契約の成立を証明する目的で作成した文書に課税するため、収入印紙は原本に貼るものであり単なる写しには貼りません。しかし写しであっても相手方の署名押印があるなど契約の成立を証明する目的があるときには収入印紙が必要となります。正本を2通作成しても構いませんが収入印紙が作成分必要となる点に注意が必要です。
公正証書にする
借用書(金銭消費貸借契約書)を公正証書として作成することで法的効力を高めることができます。公正証書は原本が公証役場に保管されることから偽造される恐れがなく証拠力も高くなります。返済を滞納したときに直ちに強制執行を受けることを認諾するとの文言を入れると訴訟をせずに強制執行することも可能となります。強制執行可能な公正証書のことを特に執行証書と呼びます。公正証書の作成は費用や手間がかかるためケースに応じて使い分けることが大切です。
<関連記事>借用書は公正証書で作成するべき?確実に債権回収ための手順を解説
借用書の書き方
借用書(金銭消費貸借契約書)は一般的に以下のような項目を記載します。
・表題 ・貸主と借主の名前 ・借金額、借入日 ・返済期日、返済方法 ・利息 ・遅延損害金 ・期限の利益喪失条項 ・借用書の作成日 ・貸主と借主の署名押印 |
表題
文書には内容を簡潔に示すタイトルをつけます。借主の署名押印のみの文書では「借用書」、貸主の署名押印も入れるものは「金銭消費貸借契約書」など内容がすぐにわかる表題にします。
貸主と借主の名前
誰が貸主で誰が借主なのかを書くことで誰が誰に対して返済義務があるのかを明確にします。
借金額・借入日
いくら貸し付けたのかを明らかにするために借金額を記載します。借入日はお金を実際に貸し付けた日を記載します。借用書を作成した日ではありません。
返済期日・返済方法
返済期日を明確にしておかないといつ返済を求めていいのか分かりづらくなります。一括返済の場合には具体的な年月日を記載して全額返済することを記載します。分割払いの場合には毎月何日にいくらずつ支払うのか等を記載します。
返済方法としては手渡しなのか銀行振り込みとするのかなどを書きます。振り込みの場合には振込先や手数料負担者についても記載します。手数料負担者を決めていないときは原則として借主負担となります(民法485条)。返済方法は振り込みなど証拠に残る方法がトラブル防止に効果的です。
利息
利息をとる場合には利率なども記載します。利息を支払う約束をしたものの利率を定めなかったときには法定利率を請求することが可能です。利息はいくらでも取れるわけではありません。お金の貸し借りの利率は法律で制限されています(利息制限法)。
利息
元本額 |
上限金利 |
10万円未満 |
年20% |
10万円以上100万円未満 |
年18% |
100万円以上 |
年15% |
遅延損害金
約束した返済期日に支払いをしないときには遅延損害金を請求することができます。利息と異なり契約で定めていなかったとしても法定利率で請求することができます。遅延損害金の利率も契約で定めることができますが法律で規制されています(利息上限金利の1.46倍)。
遅延損害金
元本額 |
上限金利 |
10万円未満 |
年29.2% |
10万円以上100万円未満 |
年26.28% |
100万円以上 |
年21.9% |
期限の利益喪失条項
支払いが遅れた場合など一定の出来事が起きたときに本来の支払期日よりも前に一括で返済してもらえるようにします。
借金における期限の利益というのは、返済期日までは返済しなくてもいいという借主の権利のことです。分割払いのときには毎月一定の日が返済期日となっていますが、返済が遅れているような場合には早く返してもらわないと債権回収が難しくなります。そのため契約で返済が遅れた場合など信用不安が生じたときは直ちに全額を支払うように記載します。
期限の利益など契約条項について詳しくは、「債権回収を見越した契約書の内容と作成方法」をご覧ください。
借用書の作成日
借用書を作成した日付を記載します。借用書の作成日前にお金を貸した場合には借りた日と作成日はずれることになります。
貸主と借主の署名押印
通常の借用書であれば貸主の署名押印がないこともありますが借主の署名押印は必要です。名前は自署してもらうことが重要です。金銭消費貸借契約書であれば貸主の署名押印もすることになります。借主の署名押印は訴訟になったときに重要な証拠となります。債権回収の可能性を高めるには借主には実印を押してもらい印鑑証明書の交付を求めます。
<関連記事>契約書作成におけるチェックポイントと注意事項を解説
まとめ
・借用書とは、お金や物を借りた事実を証明するために借主が作成して貸主に渡す文書です。
・借用書を書いてもらう目的は貸したものを返してもらいやすくするためです。証拠に残るため返済してもらいやすくなり訴訟になっても勝訴しやすくなります。
・借用書を公正証書(執行認諾文言付き)で作成すると訴訟をせずに強制執行することもできます。
・借主の署名や押印が重要です。実印と印鑑証明書が特に有効です。
債権回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所
借用書を書いてもらうことでお金を返してもらいやすくなります。万が一お金を返してもらえないときには訴訟など法的な手続きを検討することになります。ケースによって適切な手続きが異なるため債権回収に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
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※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。