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借金をした場合にお金を借りた人のことを債務者と呼びます。一方でお金を貸した人のことを債権者と呼びます。債権には訴求力や掴取力(かくしゅりょく)などの力が認められていて債権者は自分の権利を実現していくことができます。
この記事では、債権者・債務者とは何か、関係性や債権の効力などについて解説します。
債権者とは
ある人物が他人に対して一定の行為(給付)を請求できる場合の権利者のことです。
例えば、AとBが契約をしてAがBに対して100万円を請求できる権利をもつときのAのことです。
そもそも債権とは、ある人物が特定の人に対して一定の行為を求めることを内容とする権利のことです。目的の行為は給付と呼ばれます。目的を達成するために他人の行為が必要である点に特徴があり物権と異なります。
<関連記事>金銭債権とは? 特徴や種類、具体例を詳しく解説
債務者とは
ある人物が他人に対して一定の行為(給付)をしなければならない場合の義務者のことです。
例えば、AとBが契約をしてBがAに対して100万円を支払う義務を負うときのBのことです。
債務とは、ある人物が特定の人に対して一定の行為をしなければならない義務のことです。
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種類別に見る債権・債務の具体例
債権や債務が発生する原因はさまざまです。事故が起きて損害が発生したときには被害者は損害賠償請求権を取得するため債権者となります。一方で加害者は損害賠償義務を負うため債務者となります。これに対して当事者の意思によって債権・債務が発生することもあります。契約により債権者・債務者となることが一般的といえます。
双務契約
契約をすると債権者や債務者になるわけですが当事者双方が債権者や債務者となることがあります。このようにお互いが債権者であり対価的な債務を相互に負担する契約を双務契約と呼びます。
相互に債権者と債務者になる契約はめずらしくありません。売買契約や賃貸借契約、請負契約、有償の委任契約、雇用契約など身近な契約の多くが双務契約となっています。
片務契約
片務契約は契約により片方の当事者だけが債権者または債務者となる場合、または双方が債権者・債務者となっても対価的な関係ではないものです。
贈与も契約の一種ですが贈与をする約束をした人が目的物を引き渡す義務を負うので債務者であり、贈与を受ける側は目的物の引き渡しを請求できるため債権者となります。対価はないため贈与は片務契約です。
相殺
契約の当事者がお互いに債権者であり債務者である契約形態を双務契約といいました。売買契約であれば売主は代金請求権を持っているため債権者であり、物の引き渡し義務を負っているため債務者でもあります。買主は物の引き渡し請求権を持っているため債権者であり、代金の支払い義務を負っているため債務者でもあります。
一方でお互いに金銭債権を持っている場合もあります。双方がお金を請求できる債権者でありお金を支払う債務者でもあるケースです。
例えば、AがBに対して商品を売却して100万円の代金債権を持っている場合に、BもAに対して商品を売却して150万円の代金債権を持っているときはAとBはそれぞれお金を請求できる債権者であり債務者です。
このようなケースでは実際にお金のやり取りをしなくても意思表示によって弁済した扱いにすることができます。これは相殺というものです。
相殺しようとしている債権が弁済期にある等いくつかの要件をクリアすれば片方の債権者の意思表示だけでお互いの債権をなくすことができます。
相殺をうまく利用すれば相手に財産がないときでも債権の回収ができることになります。
<関連記事>自働債権と受働債権とは?相殺について分かりやすく解説
相続
債権者が相手の債務を承継することがあります。反対に債務者が相手の債権を承継することもあります。このように債権者と債務者が同一人になってしまうと原則として債権・債務はなくなります。このような現象は混同と呼ばれます。
代表的なのは相続です。債権者が債務者を相続すると債権や債務を残しておく意味はないからです。債務者が債権者を相続したときも同じです。
会社が合併したときも債権者と債務者が同一会社になるため債権債務は消滅します。
ただし債権が他人の権利の対象となっているときは債権債務を残す意味があるため消滅しません。第三者が債権を差し押さえているような場合です。
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債権者が保持する効力
債権者にはさまざまな力が与えられています。
給付保持力
債権者は債務者から給付を受領することができますが後から返還を求められては困ります。そのため債権者は給付されたものを適法に保持する力が認められます。このように給付を適法に保持する力を給付保持力と呼びます。
訴求力
債権者は債務者に対して給付を請求できる力があり請求力といいます。債務者が請求に従わないときには債権者は裁判所に訴えることが可能であり訴求力といいます。
貫徹力
貫徹力とは債権の内容を本来の目的どおりに強制的に実現する力のことです。裁判所により実現されます。
掴取力(かくしゅりょく)
債務者の一般財産から強制的に債権を回収できる力のことです。債権は金銭債権だけではありませんが最終的には損害賠償債権になるため債務者の総財産につかみかかって債権を実現するという意味です。
損害賠償請求権
債権者は債務者が約束通りに債務を履行しなかった場合に、損害が発生したときは損害賠償請求権を取得します。何らかの不法行為の被害に遭い損害が発生したときには、そのときに損害賠償請求権という債権を取得するため債権者となり、加害者は債務者となります。
債権には時効がありますが一般債権の時効と不法行為による損害賠償請求権とは時効期間が異なることに注意が必要です。
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契約解除
債権者は債務者が履行義務を果たさなかったときには契約を解除することができます。契約解除には催告等の一定の要件があります。軽微な債務不履行では解除できません。
債務者が債務を果たさなかった場合
債務者が契約などで発生した義務を果たさないことを債務不履行といいます。正確には「債務の本旨に従った履行」(民法415条1項)をしないことです。債務不履行があると債権者は一定の要件のもとに損害賠償債権や契約解除権を取得します。債務不履行は大きく分けて以下の3種類に分類されます。
・履行不能 ・履行遅滞 ・不完全履行 |
履行不能
履行不能とは、債権の取得時には履行可能であったのにその後の事情により履行が不可能になることです。
例えば、自動車の売買契約をした後に事故によって自動車が滅失してしまい買主に引き渡せなくなった場合です。
ただし、損害賠償請求をするときには債務者の責めに帰すべき事由が必要とされています。前例のケースであれば売主の過失によって事故を起こした場合に債権者は損害賠償請求できます。
履行不能について当事者双方に帰責性がない場合には危険負担の問題となります。
<関連記事>危険負担とは?民法改正での変更点やポイントを詳しく解説
履行遅滞
履行遅滞とは、債務者が履行できるにもかかわらず履行しなければならない期日になっても債務の履行をしないことです。
例えば、自動車の売買契約をした場合に引渡し期日を1か月後に定めたにもかかわらず、債務者が1か月を経過しても引き渡さなかったときです。
債権者は債務者に早く履行するよう履行請求ができます。
履行遅滞の場合にも損害賠償債権が生じるには債務者に帰責性が必要です。履行遅滞の後に目的物が滅失したような場合には履行不能となります。
※金銭債務の不履行については履行不能とはならず必ず履行遅滞となります。不可抗力であっても責任を免れません。その際の損害賠償額は定められた利率によって決まります。
不完全履行
不完全履行とは、債務者が義務の履行として給付をしたが本来の目的を果たしていないものです。一応履行はしたけれど不十分なものであり、履行遅滞・履行不能に当たらないものです。
例えば、新車を注文した場合に注文と異なる自動車が納品されたような場合です。
債権者は債務者に本来の債務を履行するよう履行請求できます。
不完全履行の場合にも損害賠償債権を取得するには債務者の帰責性が必要です。
債務不履行の効果をまとめると以下のようになります。
・履行請求(強制履行) ・損賠賠償債権の発生 ・契約解除権の発生 |
まとめ
・債権者とは、ある人が特定の人に対して一定の行為を請求できる場合の権利者のことです。
・債務者とは、ある人が特定の人に対して一定の行為をしなければならない場合の義務者のことです。
・契約の内容により当事者双方が債権者であり債務者となるものを双務契約といいます。片方の当事者のみが債権者や債務者となるものは片務契約といいます。
・債務者が債務を履行しないときは債務不履行となり、債権者は履行請求や損害賠償債権の取得、契約解除権の行使が一定の要件のもとで認められます。
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