債権譲渡契約書には最低限記載した方がいい内容があります。

この記事では、債権譲渡契約書の基本から記載例、作成時の注意点などを解説します。

 

債権譲渡契約書とは

債権譲渡というのは、債権を持っている人からそれを手に入れたい人に対して債権の同一性を維持したまま譲り渡すものです。したがって債権者が交代することになります。債権譲渡は、持っている債権の支払期日が来る前に現金化して資金繰りを良くしたり、債務の弁済や担保に充てたりするときに利用されます。債権譲渡をする際には債務者への通知などが必要となります。債権譲渡契約書は債権譲渡の約束を書面にしたものです。

 

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債権譲渡契約書における書式

債権譲渡契約書の作成についてテンプレートを基に解説していきます。

 

債権譲渡契約書の雛形(売却)

債権を第三者に売却した場合の債権譲渡契約書のテンプレートです。債権譲渡契約書を作成する際は対象の債権を明確にすることが必要です。債権の種類、原因日付、当事者、債権金額、利息、弁済期などできるだけ詳しく記載して他の債権と区別できるようにします。

 

債権譲渡契約書

 

譲渡人〇〇〇〇(以下「甲」という。)と、譲受人〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、以下の通り債権譲渡契約(以下「本契約」という。)を締結した。

第1条(債権譲渡)

甲は、乙に対して、甲が有する下記債権及びこれに基づく一切の債権(以下「本譲渡債権」という。)を代金〇円により譲り渡し、乙はこれを譲り受けた。

 

①債務者

住所

氏名(名称)〇〇〇〇(以下「丙」という。)

②譲渡債権

債権の発生原因:〇年〇月〇日付甲丙間の〇〇契約に基づく債権

債権額:金〇円

弁済期日:〇年〇月〇日

第2条(代金の支払い)

乙は甲に対し、〇年〇月〇日限り、前条の代金を甲の指定する金融機関の口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。

第3条(対抗要件の具備)

1 甲は、丙に対し、〇年〇月〇日までに遅滞なく本契約に関する債権譲渡の通知をし、又は丙の承諾を得なければならない。

2 前項の通知又は承諾は確定日付のある証書によって行わなければならない。

3 通知又は承諾にかかる費用は、甲の負担とする。

第4条(保証)

1 甲は、本譲渡債権につき、丙その他第三者から相殺、譲渡禁止特約等一切の抗弁、権利が主張されず、有効に権利を行使できることを保証する。

2 甲は、本譲渡債権について、乙の承諾なく取立て、譲渡、その他乙の権利行使を妨げる行為をしてはならない。

3 乙は、前2項の規定に違反する事実が明らかになったときは、何らの催告をすることなく本契約を解除することができる。丙が弁済期日に全額の弁済をしなかったときも同様とする。本契約の解除によって乙が被った損害については甲の負担とする。

 

本契約の成立を証するため本契約書2通を作成し、各自その内容を確認し署名押印の上、各1通を保有する。

〇年〇月〇日

甲(譲渡人):住所

(名称)〇〇〇〇

代表取締役 〇〇〇〇 印

乙(譲受人):住所

(名称)〇〇〇〇

代表取締役 〇〇〇〇 印

 

債権譲渡契約書の雛形(債務の弁済)

債務者が債権者に対して債務の弁済を目的として債権譲渡する場合の債権譲渡契約書のテンプレートです。

 

債権譲渡契約書

 

譲渡人〇〇〇〇(以下「甲」という。)と、譲受人〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、以下の通り債権譲渡契約(以下「本契約」という。)を締結した。

第1条(債権譲渡)

甲は、乙に対して、甲が有する下記債権及びこれに基づく一切の債権(以下「本譲渡債権」という。)を、甲乙間の〇年〇月〇日付〇〇契約に基づく甲の乙に対する債務(以下「本件債務」という。)金〇円の弁済に充てるため譲り渡し、乙はこれを譲り受けた。

①債務者

住所

氏名(名称)〇〇〇〇(以下「丙」という。)

②譲渡債権

債権の発生原因:〇年〇月〇日付甲丙間の〇〇契約に基づく債権

債権額:金〇円

弁済期日:〇年〇月〇日

第2条(対抗要件の具備)

1 甲は、丙に対し、〇年〇月〇日までに遅滞なく本契約に関する債権譲渡の通知をし、又は丙の承諾を得なければならない。

2 前項の通知又は承諾は確定日付のある証書によって行わなければならない。

3 通知又は承諾にかかる費用は、甲の負担とする。

第3条(保証)

1 甲は、本譲渡債権につき、丙その他第三者から相殺、譲渡禁止特約等一切の抗弁、権利が主張されず、有効に権利を行使できることを保証する。

2 甲は、本譲渡債権について、乙の承諾なく取立て、譲渡、その他乙の権利行使を妨げる行為をしてはならない。

第4条(弁済)

1 乙は、本譲渡債権について、その支払期日に丙から直接弁済を受け本件債務に充当し、その限度で本件債務は消滅する。

2 甲は、本件債務に残額がある場合には責任をもって弁済しなければならない。

 

本契約の成立を証するため本契約書2通を作成し、各自その内容を確認し署名押印の上、各1通を保有する。

〇年〇月〇日

甲(譲渡人):住所

(名称)〇〇〇〇

代表取締役 〇〇〇〇 印

乙(譲受人):住所

(名称)〇〇〇〇

代表取締役 〇〇〇〇 印

 

本件債務が消滅する条件や範囲、完済しなかった場合に残額の支払い義務があることを明記しておきます。

 

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債権譲渡契約書の雛形(弁済に過不足があるときに備える場合)

第三債務者(雛形の「丙」)の弁済が不十分であったり余分に弁済されてしまったりすることもあります。

売却による債権譲渡がされた場合に一部しか弁済されなかったときに備えて保証条項を以下のようにすることも考えられます。

 

第4条(保証)

1 甲は、本譲渡債権につき、丙その他第三者から相殺、譲渡禁止特約等一切の抗弁、権利が主張されず、有効に権利を行使できること、及び本契約代金の限度で丙の資力を保証する。丙が弁済期日に、乙に対し、本契約代金を満たす弁済をしないときは、甲は乙に対して不足額を支払わなければならない。

 

債務の弁済を目的とした債権譲渡がされた場合に余分に弁済される可能性があるときは以下のような条項を入れることも考えられます。

 

本件債務額を超えて丙が乙に弁済したときは、乙は甲に対し、その差額を支払わなければならない。

※譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律92条1項、48条2項参考

 

<関連記事>債権譲渡担保とは?メリットや注意点を解説

 

債権譲渡契約書の注意点

債権譲渡契約書を作成する際には以下の点に留意します。

 

債権の有効性を担保する

債権が弁済済みであったり譲渡禁止特約があったりすると債権譲渡契約の目的を果たせないことがあります。債務者に口頭で確認するだけではなく債権譲渡契約書に保証条項を設けて法的な責任を明確にしておきます。

 

<関連記事>債権譲渡禁止特約とは?民法改正で変わったことを分かりやすく解説

 

対抗要件について明記する

債権譲渡契約がなされても当然には第三債務者に対抗することができず通知や承諾等が必要となります。また債権が二重譲渡された場合に備えて対抗要件を備えることも必要です。

 

対抗要件について詳しくは、「債権譲渡通知書とは?作成方法や債権譲渡登記制度の活用について詳しく解説」をご覧ください。

 

債権譲渡契約書の作成費用

債権譲渡契約書の作成費用としては弁護士費用や印紙税があります。

 

弁護士費用

弁護士費用は事務所によって異なりますが、債権譲渡契約書の作成費用としては、経済的利益の額が1000万円未満のものであれば5~10万円程度が目安となります((旧)日本弁護士連合会報酬等基準参考)。

 

印紙税

債権譲渡契約書の印紙税は、記載された契約金額が1万円未満は非課税、1万円以上は200円、契約金額が記載されていないときは200円とされています(印紙税法別表第一課税物件表15号)。

電子契約の場合には印紙税は不課税です。印紙税の対象は文書ですがPDFやメール等は電磁的記録であり文書とは区別されているからです。ただし印字した場合には課税対象となることがあります。

 

<関連記事>売掛債権の譲渡に消費税はかからない?債権譲渡における消費税について詳しく解説

 

まとめ

・債権譲渡契約書とは、債権をその同一性を維持したまま譲渡するとの約束を書面にしたものです。資金繰りや債務の弁済などに利用されます。

債権譲渡契約書では、譲渡債権を他の債権と区別するため債権の種類、原因日付、当事者等を記載して特定します。

・債権譲渡契約書を作成する際は、弁済額が不十分だった場合の取り扱いなどを記載します。

 

※記事の内容は執筆された当時の法令等に基づいております。細心の注意を払っておりますが内容について保証するものではありません。債権譲渡契約書は事案によって適切な内容が異なります。実際に作成する際には弁護士にご相談ください。

 

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