事業を行っていると取引の際に代金を後払いにする機会が多くあります。法律上はひとくくりに「金銭債権」と呼ばれますが、会計上は売掛金や未収入金など勘定科目に違いがあります。

この記事では、未収入金とは何か、売掛金との違いや仕訳方法について解説していきます。

 

未収入金(未収金)とは

未収入金とは、営業活動以外の取引により生じた金銭債権のことです。有価証券や備品を売却した場合や不動産業者でないものが行う不動産の売却に伴う未回収債権などがあります。「未収金」と呼ぶこともあります。

医療機関や建設業など本業での金銭債権であっても未収入金(未収金)を用いる業種もあります。

 

<関連記事>建設業における売掛金とは?回収する方法をご紹介

 

未収入金の仕訳方法

未収入金の仕訳は、「未収入金が生じたとき」および「未収入金が回収されたとき」に必要となります。営業活動としての商品取引ではないため三分法ではなく分記法で仕訳します。

 

固定資産以外の売却

消耗品として購入した物を1,000円で売却して後払いとした。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

未収入金

1,000円

雑収入

1,000円

 

後日、後払いにした消耗品代として1,000円が普通預金口座に振り込まれた。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

普通預金

1,000円

未収入金

1,000円

 

固定資産の売却(土地以外)

50万円で購入した備品について40万円で売却して代金を後払いとした。減価償却累計額は12万円の場合。

 

<直接法>

借方

借方金額

貸方

貸方金額

減価償却費

120,000円

備品

120,000円

 

売却時

借方

借方金額

貸方

貸方金額

未収入金

400,000円

備品

380,000円

 

 

固定資産売却益

20,000円

 

固定資産については減価償却を考慮に入れる必要があります。減価償却の仕訳方法は、「直接法」と「間接法」の2つあります。

直接法では、固定資産の帳簿価格から直接減価償却費を差し引きます。

売却時に帳簿価額との差額が生じた場合には固定資産売却益(損)を計上します。

 

<間接法>(期首売却の場合)

借方

借方金額

貸方

貸方金額

減価償却費

120,000円

備品減価償却累計額

120,000円

 

売却時

借方

借方金額

貸方

貸方金額

備品減価償却累計額

120,000円

備品

500,000円

未収入金

400,000円

固定資産売却益

20,000円

 

間接法では、直接固定資産の帳簿価格を減らすのではなく減価償却累計額という勘定科目を使います。この方法では購入時の価格から減価償却累計額を減じることで帳簿価格が分かります。

 

<間接法>(期中売却の場合の例)

期中売却であれば月割りによる減価償却費も計上します。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

備品減価償却累計額

120,000円

備品

500,000円

減価償却費

10,000円

固定資産売却益

30,000円

未収入金

400,000円

 

 

 

後日、後払いにした備品代40万円が現金で支払われたら次のような仕訳となります。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

現金

400,000円

未収入金

400,000円

 

土地の売却

1千万円で購入した土地を980万円で売却し代金後払いとした場合。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

未収入金

9,800,000円

土地

10,000,000円

固定資産売却損

200,000円

 

 

 

土地は固定資産であっても減価償却しません。

 

後日980万円が預金口座に振り込まれた場合は以下の通りです。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

普通預金

9,800,000円

未収入金

9,800,000円

 

未収入金の注意点

未収入金の取り扱いは帳簿上正しく行うことで債権回収に役立ちます。

 

未収入金は発生主義で処理する

発生主義とは、現金の実際のやり取りに関係なく取引が発生した段階で収益や費用を計上する方法です。これに対して現金の授受の時点で収益や費用を認識する方法を現金主義といいます。個人事業主の中には現金主義で仕訳する方もいますがそれ以外の方でも未収入金については売掛金と違い現金主義になっているケースがあるようです。現金主義では未収入金が帳簿上に現れないため債権額などが分かりにくくなります。資産や損益の状況を知るために発生主義で処理することが大切です。

 

未収入金の回収予定を確認する

未収入金は回収できなければ意味がありません。未収入金の支払期日を把握しておき期日が経過した場合には速やかに回収に当たる必要があります。売掛金と同様に滞納期間が長くなるほど回収が難しくなるからです。支払いが遅れている原因を早期に把握し相手の信用状態が悪化している場合には貸倒引当金の計上なども必要となります。

 

未収収益を未収入金とした場合の再振替仕訳

未収収益を未収入金として処理しているケースがあります。このような場合には未収収益において必要となる経過勘定処理を忘れてしまう恐れがあります。翌期首に行うべき再振替仕訳を忘れてしまうなど経過勘定処理を適切に行わないと誤った時期の収益として表示されることになります。

 

<関連記事>貸倒引当金とは?計算方法や仕訳について詳しく解説

 

売掛金とは

売掛金とは、事業者が営業上の取引により提供した商品やサービスの代金について後払いとした場合に代金を請求できる権利のことです。

 

売掛金の仕訳方法

売掛金も一般的に発生主義で仕訳するため、「売り上げの時点」と「入金した時点」での仕訳が必要となります。売掛金は営業上の商品販売であるため未収入金と違い三分法で仕訳できます。

 

営業で商品やサービスを提供した場合

商品を3万円で販売したが代金の支払いを後日とした場合。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

売掛金

30,000円

売上

30,000円

 

売掛金は資産であるため借方に計上されます。収益として売り上げを貸方に記帳します。

 

その後、商品代金が普通預金口座に振り込まれた場合。

 

借方

借方金額

貸方

貸方金額

普通預金

30,000円

売掛金

30,000円

 

普通預金という資産が増加したため借方に、売掛金という資産が減ったため貸方に記録します。

 

売掛金の注意点

売掛金は取引機会の拡大や効率化をもたらしてくれますが適切に回収できなければ会社経営に支障を来すことがあります。

 

時効がある

売掛金や未収入金は時効によって消滅することがあります。売掛金はいつまでも請求できるわけではないのです。売掛金は基本的に5年が時効期間とされています。厳密にいうと「権利を行使できることを知った時から5年」です。知らなかったとしても「権利行使できる時から10年」で時効にかかる可能性があります。売掛金や未収入金は支払期日が到来すれば権利行使できますが、支払期日は知っているはずですので通常は5年となります(債権の発生時期や種類によって期間が異なることがあります。)。

ただし、時効は売掛金の支払期日から5年経過したとしても当然には成立しません。時効は阻止することが可能だからです。債務者が支払い義務を認めた場合や訴訟等により時効期間をリセットすることができます。そのため売掛金や未収入金の支払期日から5年が経過していても回収できることがあります。

 

売掛金の時効について詳しくは、「売掛金の時効はいつ?未回収にさせないためにするべきこと」をご参照ください。

 

貸し倒れのおそれがある

売掛金は債権に過ぎないため代金が支払われるか未確定です。支払期日から時間が経つほど時効にかかる恐れや資金繰りの悪化などにより貸し倒れのリスクが高まります。そのため代金の回収は速やかに行うことが重要です。

 

<関連記事>売掛金とは?回収・未回収時の仕訳方法や注意点をわかりやすく説明

 

売掛金と未収入金の違い

売掛金は、本業である営業取引により生じた金銭債権です。一方で未収入金は営業取引以外の一時的な取引によって生じる金銭債権です。

このように売掛金と未収入金を区別する理由は本業による収益とそうでないものを帳簿上で明確に区別するためです。区別されていないと税務当局や金融機関などから不正会計を疑われる可能性もあります。売掛金と未収入金の区別があいまいなまま仕訳してしまうと決算書の正確性に疑念を持たれるからです。

売掛金と未収入金の違いを意識して正確に仕訳することで税務当局や金融機関から無用な不信感を生じさせないことが必要です。

 

未収入金は流動資産の扱いですが決算日の翌日から1年以上回収にかかる見込みのものについては「長期未収入金」として固定資産となります。

売掛金については「長期滞留売掛金」などとします。回収が難しければ貸倒損失などを検討することになります。

 

<関連記事>売掛金が回収不能な場合の対応方法(貸倒損失)とは?対策も徹底解説

 

※記事の事例は簡易化しています。ケースによって適切な取り扱いが異なるため税理士等の専門家にご相談ください。

 

まとめ

・未収入金とは、営業活動以外の取引により生じる金銭債権のことです。備品や有価証券、自社ビルの売却などによる未回収債権のことです。「未収金」ともいいます。ただし、建設業など売掛金に近い形で未収入金を用いることもあります。

・売掛金とは、営業活動上の取引により生じる金銭債権のことです。未収入金と売掛金の違いは営業上の取引として行われたか否かにあります。

・未収入金を現金主義で仕訳すると帳簿上で未収入金の残高が分からないため発生主義で記帳することが大切です。

・売掛金や未収入金には時効があるため迅速に回収するようにします。

 

未収入金、売掛金の回収でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所

債権回収に特化した顧問契約は月9,800円のワンプランとなっています。

 

当事務所は事業で生じた債権の回収に強い事務所です。

 

当事務所では、未収金が入金されてはじめて報酬が発生する成功報酬制です。

「着手金0円(法的手続きを除く。)」、「請求実費0円」、「相談料0円」となっておりご相談いただきやすい体制を整えております。

※個人間や単独の債権については相談料・着手金がかかります。くわしくは弁護士費用のページをご覧ください。

 

少額債権(数千円単位)や債務者が行方不明など他事務所では難しい債権の回収も可能です。

「多額の未収入金の滞納があって処理に困っている」

「毎月一定額以上の売掛金が継続的に発生している」

このような問題を抱えているのであればお気軽にご相談ください。