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駐車場料金を滞納された場合にどう対応するかはケースによって異なります。まずは原因を突き止めて必要な対応を検討することになります。
駐車場料金の滞納は同時に車両の撤去の問題となることがあります。その場合、所有者の調査が必要となりますし、車両の価値の有無によって競売の可否など取り扱いが変わってきます。
この記事では、駐車場料金を滞納された場合の督促等の対応方法を解説します。
駐車場の賃料滞納者への対応方法
駐車場料金の滞納があった場合には状況に合わせて対応を変える必要があります。「連絡が取れるのか取れないのか」、「支払いの意思があるのかないのか」などにより対処方法が変わります。
電話交渉・直接交渉を行う
駐車場料金の滞納があった場合には初期の段階で利用者に連絡を入れ督促することが重要です。駐車場料金の滞納の原因によっては連絡をするだけで解決することもあります。うっかり支払いを忘れていることもあるからです。
滞納者に支払いの意思があるケース
滞納者に支払うつもりがあるのであれば支払ってもらうことで解決します。問題はすぐに支払えない場合です。お金の持ち合わせがなく支払えないときはいつ支払えるかを確認します。支払いが難しい場合には期限の延長や分割払いを提案する方法もあります。滞納者とよく話し合って返済計画を立てて実行してもらうことが大切です。
口頭での約束だけでは形として残らないため書面にして署名をもらうことが有効です。法的手続きをとる際の証拠になるだけでなく、「約束を守らないといけない」という気持ちを高める意味があります。
滞納者に支払いの意思がないケース
駐車場利用料金の滞納者の中には支払うつもりのない人もいます。督促しても連絡がつかず一向に支払いに応じてくれないような場合です。
このような滞納者に対しては支払期限を示したうえで、このまま滞納し続けると駐車場契約を解除する旨を伝えます。
支払期限を過ぎても駐車場料金の滞納が続く場合には契約の解除を通知して利用契約を終了させます。
滞納期間があまりに短いと駐車場契約の解除が認められない可能性もありますが、2~3か月以上の滞納が続き督促にも応じないケースでは解除通知を出した方がいいでしょう。
内容証明郵便を送付
契約の解除については内容証明郵便を利用します。訴訟などの法的手続きをとる際に解除の有効性や時期が問題となることがありますが、相手が争ってくる場合には客観的な証拠が必要となるからです。
内容証明郵便は郵便局がいつ誰から誰に対してどのような文書が送られたかを証明してくれるものです。そのため解除の時期などが明確になるというメリットがあります。また、滞納者が内容証明郵便に慣れていない人であれば心理的なプレッシャーにより話し合いに応じてもらえる可能性もあります。
駐車場滞納金の督促をするだけでなく期限までに支払いがなければ当然に契約を解除する旨を記載することもできます。解除された場合に備えて自動車の撤去も期限付きで催告しておきます。
内容証明郵便による契約解除の方法等については、「家賃滞納が起きた場合の内容証明郵便の書き方を詳しく解説」をご参照ください。
訴訟を行う
駐車場料金を督促しても滞納し続ける場合には、法的手段により支払いや駐車場の明け渡しを求めていくことになります。
手続きの流れとしては、1.訴訟を起こして勝訴判決をもらい、それでも利用者が支払いや自動車の撤去に応じないときには、2.強制執行をすることになります。
訴訟以外にも法的手段には支払督促などの方法がありますが支払督促については土地の明け渡しには使えません。
<関連記事>明け渡し訴訟とは?検討した方が良いケースや手順を解説
強制執行
訴えを起こし勝訴して判決が確定した場合には判決書を執行裁判所に提出することで判決の内容を強制的に実現する「強制執行」を申し立てることができます。もちろん駐車場利用者が自分から滞納料金の支払いや自動車の撤去に応じてくれればその必要はありません。
撤去対象の自動車に価値がある場合には競売等により処分することになります。申立人自身が買受人となる方法もありますが買取業者に連絡を取っておき買い受けてもらった方が処分の手間が省けるかもしれません。
自動車に価値がなく売却できないときには駐車場の明け渡しを目的として手続きを進めることになり専門業者に依頼して廃棄します。
<関連記事>立ち退きの流れとは|交渉の仕方、裁判・和解について詳しく解説
自動車撤去の注意点
自動車を撤去する際には以下の点に注意する必要があります。
自力救済の禁止
自力救済というのは、裁判所の手を借りずに権利者自身が実力によって権利を実現することです。自力救済は例外的な場合にしか認められず原則として違法です。契約を解除されたのに駐車場を利用し続けることは不法行為にあたりますが土地の所有者であっても原則として自らの手で車両を撤去することはできません。
仮に、土地所有者が無断で車両を撤去してしまうと撤去行為自体が不法行為として損害賠償責任が発生したり、刑事上の責任が発生したりすることがあります。
所有者の特定
法的手続きをとる際には自動車の所有者を特定する必要があります。駐車場契約者が所有者とは限らないからです。普通自動車の場合には最寄りの運輸支局(陸運支局)で登録事項証明書をもらい所有者を確認することができます。
登録事項証明書の交付を受けるには、自動車登録番号(ナンバープレート番号)や車台番号(車検証の記載事項)が必要です。駐車場の放置車両については登録番号のみでも申請可能ですが、放置車両の写真や見取り図などが必要となります。
軽自動車については自動車登録されないため軽自動車検査協会で確認することになります。この際の調査方法については弁護士会照会の方法と検査ファイル照会の2つの方法がありますが、後者の方法は要件が厳しくなっています。弁護士による調査でなければ難しいかもしれません。
所有権留保の特約がある場合
自動車にローンが残っている場合には車両の所有者が販売店や信販会社となっていることがあります。購入者が割賦金の支払いを怠ったときは車両を引き上げて売却しローンの返済に充てる特約があるようなケースです。この場合、留保所有権者(販売店等)に撤去義務があるとされます(最判平成21年3月21日)。
また、土地使用代に相当する損害賠償責任については駐車場を不法に使用している事実を知った時から責任を追及できるとされています(同判決)。つまり、所有権留保があるときには留保所有権者に撤去や損害賠償金を請求できる可能性があります。
滞納させないための予防策
駐車場料金の滞納問題については滞納自体が起こりにくくすることが大切です。
駐車場契約書を作成
契約書は約束した内容を書面という形に残すことができるため、合意した内容が明確になり当事者は約束を守りやすくなります。万が一、契約違反が起こったとしても適法な解除方法を記載しておけば契約の解消もしやすくなります。
<関連記事>契約書作成におけるチェックポイントと注意事項を解説
申込者の信用調査
長期の駐車場契約をする際には継続して支払い続ける能力が必要となります。そのため申込者の職業や年齢、資産などの調査を行い支払いに不安材料がないか契約前にチェックすることが必要です。
適切な債権管理と督促
入金確認をこまめに実施することで駐車場料金の滞納にすぐに気づくことが可能となり督促を速やかに行うことができます。督促が遅れてしまうと「滞納しても多めに見てもらえる」と誤解され滞納が深刻化する恐れがあります。
<関連記事>売掛金管理とは?管理の仕方やトラブルの対処法を解説
保証人を立ててもらう
駐車場料金の滞納があっても連帯保証人がいればその人に督促していくことが可能となります。また、連帯保証人に迷惑をかけたくない人も多いため滞納しないように注意してもらいやすくなります。連帯保証人についても信用調査を行うことが大切です。
連帯保証人と通常の保証人の違いについては、「連帯保証人に支払い拒否されたらどうする?対処法をご紹介」をご覧ください。
まとめ
・駐車場料金の滞納があった場合に電話などで督促する際には支払いの意思を確認することが必要です。支払うつもりがあるのであればいつ支払えるのか確認し、一括での支払いが無理であれば分割払いに応じることも検討します。
・督促しても滞納が解消しないときは駐車場契約を解除します。解除通知は証拠に残すため内容証明郵便を利用します。
・車両の撤去が必要な場合には車両の所有者を調査して撤去を求めます。自動車ローンが残っているときは信販会社などが所有者となっていることがあります。
・督促しても支払いや撤去に応じてくれないときは訴訟を起こし強制執行により駐車場を明け渡してもらいます。
・自力救済は原則として禁止されています。勝手に自動車を撤去してしまうと法的な責任を問われることがあります。裁判所を利用した手続きをとることが必要です。
駐車場料金の滞納でお悩みなら弁護士法人東京新橋法律事務所
駐車場料金を滞納されている場合、料金の督促の問題だけでなく車両撤去の問題もあります。車両撤去は所有者の調査など通常の債権回収とは異なる難しさがあります。そのため弁護士に依頼される際には不動産執行に強い事務所を探されることをおすすめします。
当事務所は不動産トラブルにも力を入れています。
駐車場料金の滞納など不動産トラブルにお困りの方はお気軽にご相談ください。顧問契約も可能です。
※借金などの債務の返済ができずお困りの方はこちらの記事をご参照ください。