貸したお金や売掛金などは早目に回収することが大切です。債権には時効期間があるため支払期日から長期間経過していると権利を失うおそれがあります。

 

この記事では、債権の時効期間について解説していきます。

 

※時効期間は2020年4月1日施行の改正民法により変更されています。本記事は改正法にもとづいて記載しています。

 

時効とは

時効とは、ある事実上の状態がしばらく継続した場合には、その事実上の状態が真実の法律関係と違ったとしても、その継続した事実状態を尊重して法的な効果を生じさせる制度のことです。権利がしばらく行使されていないのであれば権利を消滅させ(消滅時効)、権利があるかのようにしばらくふるまっていたのであれば権利が正式に認められるなどの効果が与えられます(取得時効)。

 

時効制度の目的

時効というと刑事事件における訴追のタイムリミットをイメージされる方も多いかもしれません。しかし民事上の時効は一定期間が経過することで権利を失ったり取得したりするものです。

民事上の時効制度の目的は、永続した事実状態を守ることで法律関係を安定させたり、長年月が経過することで真実の法律関係を証明することが難しくなることから立証を容易にしたりするためです。消滅時効については権利を長年放置していた人は保護する必要性が乏しいことも理由です。

 

民事上の時効

民事上の時効には2種類あります。権利を失うことになる消滅時効と権利を取得できる取得時効です。

 

消滅時効

消滅時効とは、権利を適切に行使しないで一定期間経過することにより権利が消滅する制度のことです。所有権を除いて財産権は時効期間が設けられています。貸付金や売掛金などの権利を持っていたとしても長期間放置してしまうと権利を失う恐れがあります。決められた時効期間を経過し債務者など権利の消滅によって利益を受ける人が援用することで権利は消滅します。

 

取得時効

取得時効とは、物や財産権を一定期間使用し続けている場合に、真実は正当な権利がなかったとしてもその人に権利を付与する制度のことです。

 

取得時効や時効の援用については、「時効は何年?種類別の期間や注意事項について分かりやすく解説」をご参照ください。

 

一般債権の時効期間

時効期間をカウントし始める出発点を起算点と呼びます。一般の債権は債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間で時効によって消滅することになります(主観的起算点、民法166条1項1号)。また権利行使できることを知らなかったとしても権利を行使することができる時から10年間行使しないときにも消滅します(客観的起算点、同項2号)。

注意点としては期間の計算では初日は算入しないことです(140条本文)。例えば3月31日が支払期限のときには4月1日を1日目として数え始めます。ただし期間が午前0時から始まるときには初日から数えることになっています(同条ただし書)。売掛金など一般の債権の場合には慣習等により取引時間内にしか弁済の請求ができないため(484条2項)、翌日から数えることになります。

 

現行の民法上の債権消滅時効期間(原則)

起算点

時効期間

権利を行使できることを知った時から(主観的起算点)

5年

権利を行使することができる時から(客観的起算点)

10年

 

主な契約類型と時効の起算点

契約の種類ごとに時効期間の具体例を見ていきます。

 

売買契約に基づく債権

売買契約を結んだ場合には売主は代金を請求できる金銭債権を取得します。この債権は5年または10年の時効期間で消滅する可能性があります。売買代金の支払期限が定められている場合には支払期限の到来した時が「権利を行使することができる時」にあたることになります。また支払期限が定められているのであれば債権者はその日から権利行使できることを知っているため「権利を行使できることを知った時」にもあたります。そのため早く到来する5年で時効消滅することになります。代金の支払期限を定めていなかったときは、いつでも請求できるため売買した時点が客観的起算点となり、同時に主観的起算点ともなるため売買契約の翌日から5年で時効にかかることになります。

例えば、売買契約をしたのが2025年5月10日であり同月31日が支払期日であるときは、初日不算入で6月1日が起算日となり、5年後の2030年5月31日を経過した6月1日に権利を失う恐れがあります。

 

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賃貸借契約に基づく債権

賃貸借契約を結んだ場合には貸主は賃料を請求できる金銭債権を取得します。家賃の場合には一般的に毎月の支払期日が定められているためその日から支払いを請求可能であり、同時に大家さんは権利を行使できることを知っているため各支払期日の翌日から5年経過することで順次時効にかかることになります。

賃料のような定期に発生する債権は定期給付債権といいます。定期給付債権については「債権回収の時効は?期間や時効を迎えた時の対応を解説」もご参照ください。

 

請負契約に基づく債権

請負代金についても通常は10年を経過する前に請負代金を請求できる時期を知るため5年の時効期間が適用されることが一般的です。契約で支払期日が定められているときにはその日の翌日、支払期日を特に定めていないときには引渡しの翌日(引き渡し不要のときは仕事完成の翌日)が起算日になると考えられます。

 

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金銭消費貸借契約に基づく債権

お金の貸し借りのことを金銭消費貸借といいます。貸主は返済期日が到来することで返済を請求できるためその日の翌日を起算日として5年の時効期間にかかることになります。一方で支払期日を定めなかった場合には問題があります。消費貸借では返還時期を定めなかったときには貸主は相当な期間を定めて返還の催告をする必要があるからです(民法591条1項)。借りたお金を返せと言われてもすぐに用意できないからです。そのため時効期間の起算点は契約時から相当期間経過した時とする見解もあります。しかし古い判例は契約時に弁済期にあるとしているため債権者としては判例の見解に沿って契約の翌日から5年を時効期間と考えて早めに対策をとった方が無難でしょう。

 

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不法行為に基づく損害賠償請求権の期間

不法行為によって損害を受けたときには賠償請求権を取得しますが、その時効期間は通常の債権とは異なります。原則として「損害および加害者を知った時から3年(人の生命や身体侵害の場合は5年)」、または「不法行為の時から20年」が時効期間です。

 

不法行為の時効期間

起算点

時効期間

損害及び加害者を知った時から(主観的起算点)

3年

※生命、身体侵害の場合は5年

不法行為の時から(客観的起算点)

20年

 

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2020年民法改正の変更点

2020年4月1日から改正民法が施行されており、この日以降に発生した民法上の債権については原則として新法の時効期間が適用されます。改正前は民法上の債権は原則として権利を行使できる時から10年とされており、請負工事など3年以下の短期消滅時効も規定されていました。現在は権利を行使できることを知った時から5年、または権利行使できる時から10年が原則的な時効期間とされています(労働基準法上の債権など時効期間が異なるものは現在でもあります。)。

ただし、改正法施行日前に民法上の債権が生じた場合の時効期間については旧法の規定が適用されます(改正民法附則10条4項)。施行日以後に生じた債権であっても原因となった法律行為が施行日前にされたときも同様です(同条1項)。商事債権についても「施行日前にされた商行為によって生じた債権に係る消滅時効の期間については、なお従前の例による」とされます(民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律4条7項)。

 

当初の時効期間を経過したとしても直ちに権利を失うわけではありません。時効期間はリセットされたり完成が猶予されたりすることがあるからです。詳しくは、「時効の中断とは?民法改正による変更点など詳しく解説」をご参照ください。

 

まとめ

・時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合にはそれが真実の権利関係と一致しなくても法的な保護を与える制度です。取得時効と消滅時効があります。

・債権の消滅時効期間は原則「権利を行使できることを知った時から5年」(主観的起算点)、または「権利を行使できる時から10年」(客観的起算点)です。ただし債権の種類や発生時期によって異なることがあります。

 

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