債権には種類があり分類方法によってとらえ方が変わってきます。例えば金銭の支払いを求めたり、物の引き渡しを求めたり、騒音を出さない等の不作為を求める債権もあります。一般的に債権回収というと金銭債権が念頭にありますが金銭債権にも種類があります。

 

この記事では、債権の種類や債権回収の流れなどを紹介していきます。

 

債権の種類

債権とは、ある人(債権者)が別のある人(債務者)に対して一定の給付を求めることができる権利のことをいいます。給付とは、債権が目的とする債務者の行為のことです。例えば商品を買ったのであれば代金を支払うという行為、売った側であれば商品を引き渡すという行為が給付に当たります。

 

特定物債権

特定物を引き渡すことを内容とした債権を特定物債権といいます。特定物とは取引の際に当事者が物の個性に着目した物のことです。例えば、自動車売買の際に展示された「この自動車」のように指定したような場合です。特定物の引き渡しが済むまで債務者にはその物の保存につき善良な管理者としての注意義務が課されます(民法400条)。

 

種類債権

債権の目的物として、一定の種類に属する物の一定量の引き渡しを内容としたものを種類債権といいます。不特定物債権と呼ばれることもあります。例えば、米1トン、石油100リットルなどと種類と数量のみ指定して取り引きしたような場合です。債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了した場合には特定物債権として扱われます(民法401条2項)。

 

金銭債権

金銭債権とは金銭の支払いをしてもらう権利のことです。商品を売った場合やお金を貸したような場合には金銭債権を持っていることになります。ただし契約の内容によっては特殊な金銭債権が発生することがあります。

 

相対的金種債権

特定の種類に属する金銭の一定量の引き渡しを内容とした債権を(相対的)金種債権といいます(民法402条1項ただし書き)。例えば、1万円の支払い義務がある場合に金銭の種類として1万円札での支払いを約束したときには5千円札や千円札での支払いは認められません。ただし支払いの期日に通貨としての力(強制通用力)がなくなった場合には他の通貨で支払う必要があります(同条2項)。

 

絶対的金種債権

特定の種類の金銭の引き渡しのみを目的としたものは絶対的金種債権といいます。硬貨や紙幣の中にはそこに記載されている金額とは異なる価値をもつものがあります。希少性や美術品としての価値のある金銭についてはコレクターの収集対象となります。例えば、「国際博覧会壱万円記念金貨」と指定して売買したのであれば、売主は指定された種類の金銭を引き渡さなければならず、強制通用力がなくなったとしても他の通貨は原則として使えません。

 

特定金銭債権

特定の金銭の引き渡しを求める債権は特定金銭債権といいます。つまりコインショップなどの店頭で「この銀貨」などと特定して売買したような場合です。特定物債権と同様に考えることができます。

 

金銭債権について詳しくは、「金銭債権とは? 特徴や種類、具体例を詳しく解説」をご覧ください。

 

利息債権

利息の支払いを求める権利を利息債権といいます。貸し付けたお金そのものを請求する権利は元本債権といいます。利息の支払いを約束したのに利率を定めなかったときには法定利息を請求することができます(民法404条)。お金の貸し借りの際には利息の約束ができますが利息制限法により上限金利が定められています。

 

利息制限法の利率については「借用書とは?法的効力や書き方を詳しく解説」をご参照ください。

 

選択債権

数個の選択肢の中から一つを給付してもらう債権を選択債権といいます。例えば、商品Aと商品Bのどちらかを受け取る権利があるときには選択債権を持っていることになります。選択権は原則として債務者(給付する人)にあります(民法406条)。期日を過ぎているのに選択権を行使しない場合、相手方が相当の期間を定めて催告することで期間内に選択されないときは選択権が相手に移ります(408条)。

 

債権の成立根拠による分類

債権は一定の原因があることで発生します。当事者が望んで発生するものや意図せずに発生するものなど種類が存在します。

 

約定債権

当事者が合意することで発生する種類の債権を約定債権といいます。売買やお金の貸し借りなど契約によって生じる種類の債権です。債権の内容は(法令の範囲内で)当事者が決めることになります。

 

法定債権

当事者の合意がなくても法律上の要件を満たすことで発生する債権のことを法定債権といいます。この種類の債権としては「事務管理」、「不当利得」、「不法行為」があります。

 

債権の発生原因について詳しくは、「債権の発生原因とは?それぞれの特徴をわかりやすく解説」をご参照ください。

 

契約形態による分類

契約は債権を発生させる主な原因となります。債権に対して一定の給付をしなければならない義務のことを「債務」といいます。契約の種類によっては債務が一方にしか生じないことがあります。

 

双務契約

物の売り買いや貸し借りなど多くの契約はお互いに債権を取得するとともに債務も負担します。例えば、売買契約では売主は買主に対して代金債権を持つことになり、買主は売主に対して物の引き渡しを求める債権を取得します。このようにお互いに対価的な債務を負う契約を「双務契約」といいます。

 

片務契約

契約の当事者の一方のみが債務を負う種類の契約もあります。例えば、無償で物の貸し借りをすることを「使用貸借契約」といいますが、借主は目的物の返還債務を負う一方で貸主は債務を負いません。このように一方のみが債務を負う種類の契約や双方が債務を負うケースでも対価的でない種類の契約を「片務契約」といいます。

 

<関連記事>債権とは?債務・物権・債券との違い、種類を分かりやすく解説

 

債務不履行が起きた場合の債権回収の流れ

債権の回収方法には種類がありますが例えば以下のように行います。

 

書面での請求

期限までに支払いをしてくれない場合には電話や訪問、メールなどで請求をしていきますが、連絡が取れなかったりはぐらかされたりして支払いに応じてもらえないことがあります。このような場合には書面で改めて請求することが一般的です。相手にプレッシャーを与えることが必要であるため改めて期日を指定します。支払いがない場合に備えて法的手段を警告することもあります。契約解除が必要な場合など内容証明郵便が効果的なこともあります。

 

<関連記事>内容証明郵便の書き方とは?出し方、費用を解説

 

支払督促

お金の支払いが目的の場合には簡易裁判所の書記官から支払督促を出してもらう方法もあります。相手から異議が出されると訴訟に移行してしまうため争いのあるようなケースには向きませんが選択肢の一つとして覚えておくといいでしょう。

 

<関連記事>仮執行宣言付支払督促とは?取得する方法と注意点を解説

 

民事訴訟

金銭債権に限らず債権を強制的に実現するには民事訴訟を検討します。相手の財産を差し押さえるなど強制的に権利を実現していくためには「債務名義」というものが必要となります。債務名義というのは強制執行できる力を認められた公的な文書のことです。確定判決書も債務名義であるため訴訟を起こして勝訴することができれば債権を強制的に実現していくことができます。

 

<関連記事>債権回収の民事訴訟を起こす上で知っておきたいメリットとデメリット、手続きの流れを解説

 

強制執行

訴訟で勝つことができたとしても相手が自分から義務を果たしてくれるとは限りません。代金や貸金の支払い、目的物の引き渡しなどの債務を履行してくれないときには裁判所に頼んで強制的に債権を実現してもらうことになります。訴訟に勝ってもそれで終わりではありません。最終的には裁判所による強制執行により債権を回収していくことになります。

 

<関連記事>債務不履行に基づく損害賠償の時効や条件について解説

 

まとめ

債権は他人に一定の行為を求める権利ですがさまざまな種類、分類方法があります。

・特定物債権とは、特定物を引き渡すことを目的とした債権のことです。

・種類債権とは、一定の種類に属する物の一定量の引き渡しを目的とした債権のことです。

・金銭債権にも種類があり、特定の種類の金銭で支払うことを約束したものを金種債権といいます。

・選択債権とは、数個の選択肢の内一つを給付させる債権のことです。原則債務者に選択権があります。

・債権の発生原因が当事者の合意によるものを「約定債権」、それとは無関係に法律上発生するものを「法定債権」といいます。

・双務契約とは、相互に対価的な債務を負う契約のことです。片務契約とは、一方のみが債務を負うか双方が債務を負担しても対価的ではない契約のことです。

 

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