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譲渡担保は法律に直接規定されていません。担保権の一種ですが似たような権利には抵当権や質権が存在しています。譲渡担保は実行方法が簡易的ですが2つの清算方式があります。
この記事では、譲渡担保について種類や他の権利との違いを見ていきます。
譲渡担保とは
担保とは、債務者が責任を果たさない場合に備えて債権者のために用意される義務の履行を確保する手段のことです。抵当権や質権など物的な担保だけでなく人的な担保として「保証人」もあります。
譲渡担保とは、債務者や物上保証人から財産権を形式的に債権者に移して返済が滞った場合にその財産から弁済を受けられる担保権です。
譲渡担保は、法律に直接定められているものではないので民法の条文を探しても見つかりません。解釈上認められているものにすぎませんが最高裁判所からも認められています。
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譲渡担保を設定するメリット
譲渡担保の大きなメリットは、担保権の実行が必要なときに裁判所を関与させず私的に実行できることにあります。抵当権の場合、債務者が債務不履行をしたときには裁判所に担保権の実行を申し立てる必要があり物件の差し押さえ、現況調査、競売・換価などの手続きを民事執行法に基づき厳格に行っていく必要があります。費用も高額なため担保権の実行手続により回収できるか不安もあります。
しかし譲渡担保であれば担保権の実行は私的に実行できるため裁判所による法的な手続きをとらずに柔軟に売却して回収することが可能です。
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譲渡担保の種類
譲渡担保は債務不履行が生じた場合の実行方法として「帰属清算型」と「処分清算型」の2種類に分けることができます。どちらの方法をとるかは事前に契約書に明記しておくことが大切です。
帰属清算方式
帰属清算型は、債権者が譲渡担保目的物の所有権を確定的に取得して物の価値を適正に評価して精算金を支払う方式です。権利を確定的に取得する方法は債権額以上に儲けられるという意味ではなく、物の価格と債権額を比較して前者が上回る場合には差額を清算金として譲渡担保設定者に返すことが必要です。
担保権の実行をするには債務者に対して通告することが必要です。目的物は債務者のもとにあることから引き渡しを求めることになります。清算金が生じるときにはこれを支払ってはじめて引き渡しに応じてもらえることになります。
処分清算方式
処分清算型は、担保目的物を任意に処分してその代金から回収する方式です。
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抵当権との違い
抵当権とは、債務者や第三者が担保として提供した不動産などの目的物を担保提供者が使用収益可能な状態にしておき、債務不履行時に目的物から優先弁済を受けられる権利です。
不動産担保の代表格は抵当権ですが担保権の私的実行のメリットがあるため譲渡担保が利用されることもあります。
抵当権は民法上に規定がある典型担保ですが譲渡担保は明文の規定がない非典型担保です。抵当権の実行により債権を回収するには裁判所に対して不動産競売や担保不動産収益執行を申し立てる必要があります。不動産競売は民事執行法の定めに従い競売手続きが行われて売却代金から回収する方法です。担保不動産収益執行は管理人を選任して賃料により債権回収をしていくものです。
譲渡担保の場合には裁判所の手続きではなく私的実行が可能であり、譲渡担保契約の内容に従って任意に売却して代金から回収したり、譲渡担保権者が確定的に所有権者となったりすることができます。
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質権との違い
質権は債権を担保するために債務者や第三者(物上保証人)から目的物を受け取り、弁済が完了するまで債権者が留置して弁済の圧力をかけ、弁済がないときにはその物から優先弁済を受ける権利です。
質権は目的物の引き渡しが要件であるため目的物を設定者のもとに置いたまま設定することができません。そのようなこともあり動産や債権を目的として設定されることが多く不動産質はあまり利用されていません。
譲渡担保であれば設定者のもとに目的物を残したまま担保を設定することができるため設定者にとって担保を利用しやすくなっています。
また質権の場合には債権を回収するには競売など裁判所を利用した手続きが基本的に必要です(債権質であれば第三債務者から直接取り立てることも可能です。)。
譲渡担保であれば私的実行により売却して代金から回収したり権利を取得したりすることができます。
譲渡担保の設定方法
譲渡担保を利用するには譲渡担保契約を結ぶ必要があり登記などの対抗要件も備える必要があります。
譲渡担保設定契約を締結する
譲渡担保権の発生には設定契約が必要です。書面を交わす必然性はありませんが後日の紛争を予防するためには必ず作成しなければなりません。特に集合物を対象とするにはその対象を明示しておかないと効力が否定されることがあるため契約書の作成は必須となります。
集合物であれば種類や数量・所在地などを示すことで対象を特定することが求められています。例えば、「A県B市C1-1にあるX倉庫にあるY社製品全部」などと特定します。気をつけなければならないのが量的な範囲です。債務者の負担を軽くするために「48トン中28トン」などの定め方をすることがありますがこれでは対象が明確でないため効力が認められません。そのため負担を過大なものとしないためには、数量としては「一切の製品」などの表現を用いてあいまいさをなくし、場所と種類で対象を絞るほうが問題は少なくてすみます。
債権譲渡担保の場合、第三債務者を識別できる住所名称等の事項、種類や発生原因など可能な限り対象を具体的に契約書に示します。いまだ発生していない債権についてはいつからいつまでに発生する債権であるか明示することが大切です。ただし、あまりに長期になると無効とされる恐れがあるため顧問弁護士にご相談ください。
不動産や動産であるときは担保権を実行した場合に権利者に最終的に権利を帰属させるのか処分して債務に充当するのかを契約上明確にしておきます。
債権譲渡担保について詳しくは、「債権譲渡担保とは?メリットや注意点を解説」をご参照ください。
対抗要件を具備する
不動産譲渡担保を第三者に対抗するには権利の移転登記が必要です。ただし登録免許税が高いこともあり仮登記で済ませることもあります。これにより設定者は無断で目的物を処分することができなくなります。
動産の対抗要件は原則として引渡しです。設定者が譲渡担保権者のために占有することを示すことで引き渡した扱いとなり対抗力が発生します。これは占有改定という方法です。
動産についても登記制度があり登記することで対抗力を得ることが可能です。ただしこの制度を利用するには譲渡人が法人である場合に限定されています。集合物にも対応しています。高価な商品が対象である場合や譲渡担保権者がほかにも想定されるようなときに有効な方法と考えられます。
債権譲渡担保の場合には対抗要件の問題はやや複雑となります。第三債務者と二重譲受人などの第三者それぞれに対抗問題が生じるためです。債務者に対する対抗要件は譲渡人からの単なる通知または債務者の承諾で備えることができます。
これに対し、第三者に対する対抗要件は確定日付のある通知または承諾とされています。通常は内容証明郵便を利用することになります。譲渡人から通知しなければなりませんが譲渡人に通知書を作成してもらい権利者が預かっておく方法が実務上用いられることがあります。返済が滞ったときに譲受人が書面を発送するためです。
債権においても登記が普及してきています。登記をすることで第三者対抗要件を備えることになります。債務者対抗要件については登記事項証明書を送付することで備えることができます。
<関連記事>債権譲渡通知書とは?作成方法や債権譲渡登記制度の活用について詳しく解説
まとめ
・譲渡担保とは、債務者や物上保証人から財産権を形式的に債権者に移して弁済できなかったときにその財産から弁済を受ける権利です。抵当権のように民法に規定されている担保権ではないため非典型担保といわれます。
・譲渡担保のメリットは、担保権の私的実行が可能なことです。
・譲渡担保の種類には、帰属清算型と処分清算型の2種類があります。
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