誰かに対して明確に意思を伝えるときの手段として内容証明郵便があります。しかし内容証明郵便には書き方に一定のルールがあります。

 

この記事では内容証明郵便の書き方や費用などを解説します。

 

内容証明とは

内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出したのか郵便局に証明してもらうサービスです。

具体的には、差出人が差し出した文書の謄本(コピー)が元の文書と同じであると証明してもらいます。5年間は郵便局にも謄本が保管されているので閲覧したり再度証明を受けたりすることもできます。

 

内容証明を送るケース

内容証明郵便は一般的に以下のようなケースで利用されます。

 

未払金の督促

商品やサービスの代金を支払ってもらえない場合に心理的な圧力を加えて支払いを促します。

 

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物やサービスの請求

お金を支払ったのに約束した物やサービスを提供してもらえないことがあります。このような場合にもプレッシャーをかけるため内容証明郵便を利用することがあります。

 

契約の解除通知

相手が代金を支払わない場合や商品やサービスを提供しない場合には契約を解除したいことがあります。このような場合には代金の支払いや引き渡しを催告した上で解除の意思表示が必要です。催告や解除の意思表示をしたことを証明するために内容証明郵便が有効です。

 

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損害賠償(慰謝料)の請求

犯罪や事故、不貞行為などにより損害賠償請求することがあります。毅然とした態度を示し心理的なプレッシャーをかけるために内容証明郵便を利用することがあります。

 

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内容証明郵便の効力

内容証明郵便には心理的なプレッシャーだけでなく法的な意味もあります。

 

法的手段をとる際に証拠になる

裁判所を利用した手続きでは客観的な証拠が重要です。例えば養育費は請求した時点以降のものについて支払ってもらうことが一般的ですが、内容証明で請求しておけば請求した時点を証明することができます。ほかにも契約の解除が適切になされたことなどの証明になります。

 

弁護士が送付すると強いプレッシャーとなる

内容証明郵便を一般の方が送付したとしても相手によってはプレッシャーを感じないことがあります。しかし内容証明郵便が弁護士から届いた場合にはプレッシャーを感じやすくなります。

 

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消滅時効の成立が猶予される

お金を請求できる権利には時効があり長期間放置すると消滅してしまします。ただし時効期間は絶対的なものではなく一定の出来事があれば完成が猶予されます。時効完成が間近のときには催告することで6か月間だけですが時効の猶予が認められます(再度の催告は猶予されません。)。催告した事実を証明するために配達証明付きの内容証明郵便が有効です。

 

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確定日付が付与される

内容証明を利用すると使用した文書には確定日付が付与されます。確定日付のある証書は債権譲渡の第三者対抗要件になるため、債権譲渡をするときには債務者に対する通知をする際に内容証明郵便を使うことが大切です。

 

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相殺に利用する

お互いにお金を請求できる権利をもっているときには実際に支払いをしなくても相殺できることがあります。実際にお金のやり取りをする必然性がないからです。相殺をするには意思表示が必要なため内容証明郵便を利用することがあります。

 

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内容証明の書式ルール

内容証明郵便には書き方に決まりごとがあります。

 

用紙

内容証明郵便を利用するには、送付する文書のほかに差出人と郵便局で保管するものが必要なため3通必要となります。

用紙の大きさや記載用具に制限はないため市販の内容証明用紙を使う必要はありません。そのためパソコンを使って印刷したものでも構いません。コピーによって作成することもできます。縦書きだけではなく横書きにも対応しています。謄本の枚数が複数のときは謄本のつづり目に契印が必要です(内国郵便約款123条1項3号)。

 

文字数

謄本(差出人と郵便局が保管する文書)には字数と行数に制限があります。そのため、市販の内容証明用紙を使用すると誤りを避けやすいというメリットがあります。

 

<窓口で送付する場合の制限>

【縦書きの場合】

・1行20字以内、1枚26行以内

【横書きの場合】

・1行20字以内、1枚26行以内

・1行13字以内、1枚40行以内

・1行26行以内、1枚20行以内

 

文字数の数え方

句読点「、」「。」は1字として計算します。

行間をあけた際の空白や文字と文字の間をあけた際の空白は行数や字数に数えません。

カッコは、開きカッコと閉じカッコをセットで1字として数え、開きカッコのある行の字数にします。

(かっこの例)

債務者(鈴木                                   (6字)

一郎)                                              (2字)

 

文字や数字を円や三角形などの枠で囲ったものについては、文字数+1字とします。

(円で囲った場合の例)

③                                                     (2字)

⑩                                                     (3字)

 

ただし、序列を表すために使う場合には1字として数えます。

(序列の例)

①金額                                              (3字)

②支払期日                                       (5字)

 

※文字や行数の制限は、差出人と郵便局が保管する謄本についてのものであり、相手に送付する文書にはこのような制限はありません。

 

使用できる文字

原則ひらがな、カタカナ、漢字、数字です(内国郵便約款121条1項)。

英字は固有名詞に限り使えます(同条2項)。つまり英文は使用できません。括弧、句点その他一般に記号として使用されるものも使えます。

 

訂正する時

謄本に誤りがあるときには訂正することができます。誤りのある箇所を削除するには元の字が読めるように二本線などで削除します。文字を挿入するにはどの箇所にどの文字が入るのかわかるように適宜記載します。そして、欄外や末尾に訂正した文字数と「削除」「挿入」「訂正」と記載し、差出人の印を押印します。わからないときには書き直すか郵便局の人に教えてもらってください。

 

封筒

差出人と受取人の住所氏名を記載した封筒が必要です。内容文書以外のもの(図面や返信用封筒など)を入れることはできません。

 

内容証明郵便の基本構成

内容証明郵便には以下のような項目を記載します。

 

タイトルと日付

タイトルは必須ではありませんが、どのような内容の文書かわかるような表題を付けることが一般的です。作成日は内容証明の差出日と同じ日付である必要はありません。

 

差出人と受取人の住所氏名

誰から誰に対して宛てられた文書なのか示すことは誤解を生まないために重要です(内国郵便約款123条1項5号参照)。

 

本文の構成

何を伝えたいのかを明確に記載します。金銭の請求であれば何が原因で生じた金銭請求権なのかいくら請求するのか、支払方法(振込先、支払期限)などを記載します。

 

結びの文言

何をしてもらいたいのか明確に記載します。必要に応じて法的措置などを警告します。

 

債権回収・催促の内容証明のテンプレート(ひな形)

必要に応じて内容を変更してください。

 

督促状

(催告書、通知書、警告書、売掛金請求書など)

当社は、貴殿との間において以下の内容の契約を締結いたしました。

契約の種類 売買契約(○○サービス契約、消費貸借契約など)

契約日 令和○年○月○日

商品名(サービス名) ○○○○

金額 ○○○○○円

納品日 令和○年○月○日

(サービス提供日、貸渡日など)

しかし、貴殿は現在に至るまで必要な弁済をされておりません。

つきましては、支払期日までに残金をお支払い頂きたく請求いたします。

尚、期日までに弁済いただけない場合には法的措置を採らざるを得ないことをご承知おき下さい。

支払期日 令和○年○月○日

残金 ○○○○円

振込先 〇〇銀行 新橋支店 普通12345 A株式会社

令和○年○月○日

東京都○○市○○1-2-3

A株式会社

代表取締役 田中五郎

東京都○○区○○7-8-9

鈴木一郎 殿

 

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内容証明の出し方

内容証明郵便を差し出すときにも注意点があります。配達証明もつけ忘れないようにします。

 

差出郵便局へ文書、封筒を持参する

内容証明はどの郵便局でも利用できるわけではなく、集配郵便局と指定郵便局のみ対応しているので事前に確認しておきます。窓口には以下のものを持っていきます。

 

・内容文書(送付する文書)

・内容文書の謄本2通(差出人と郵便局の保管用)

・差出人と受取人の住所氏名を記載した封筒(封はしません)

・郵便料金(内容証明の加算料金も必要)

 

差出人の印鑑を持っていく

内容証明に不備があった際に修正が必要となるため差出人の印鑑を持参します。

 

e内容証明(電子内容証明)の出し方

内容証明はインターネットを使って発送することもできます。Word文書をアップロードすることで自動化された機械により内容証明郵便として送付してくれます。文面を郵便局員に知られたくないときや大量に送付する場合に便利なサービスです。

e内容証明は以下のような手続きで利用します。

 

1.専用サイトにログインします。※無料の会員登録が必要

2.Wordで作成した内容証明ファイルをアップロード(指定のひな形を使用)

3.差出人と宛先を指定

4.料金の支払い(クレジットカード、料金後納)

5.郵便局の機械で印刷、封緘され発送

6.受取人に正本、差出人に謄本が一般書留で届く

 

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内容証明郵便の費用

内容証明郵便の費用は窓口とネットの場合で異なります。料金は2025年5月23日時点のものです。

 

内容証明郵便の費用

内容証明郵便は通常郵便料金と内容証明料金、書留料金がかかります。配達証明はオプションです。

 

内容

料金

郵便料金

110円~

内容証明料金

1枚480円(2枚目以降290円)

書留料金(一般書留(手紙))

480円

配達証明料金

350円

合計

1420円~

※1枚520文字まで

 

e内容証明(電子内容証明)の費用

1枚に記載できる文字数は窓口に比べて多い約1584文字であることから文字数によっては電子内容証明の方が安くなります。

 

内容

料金

郵便料金

110円~

電子郵便料金

1枚目19円(2枚目以降6円)

内容証明料金

1枚382円(2枚目以降360円)※

書留料金(一般書留(手紙))

480円

配達証明料金

350円

謄本送付料金

304円※

合計

1645円~

※複数の人に送付するときには料金が異なることがあります。

 

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まとめ

・内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰あてに差し出したかについて証明する郵便局のサービスです。

・内容証明郵便には書き方のルールがあります。英字などの使用には制限があり文字数や行数の制限があります。

・インターネットを利用して送付することもできます。

 

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