請求書を出し忘れるとあわててしまうかもしれません。請求し忘れたことに気づいたときには落ち着いて必要な対応をしていくことが大切です。一番よくないことは請求し忘れたことに気づいたときに対処せずに放置してしまうことです。売掛金などの請求権には時効があります。請求をし忘れたときにすぐに対処することが重要です。

 

この記事では、請求書を出し忘れた場合の対処法を時効も含めて解説します。

 

請求書を出し忘れるとどうなる

請求書とは、商品やサービスを提供した場合に提供先に対して発行する代金を求める書類のことです。請求書の発行は売掛金の回収という観点からは絶対に必要なものというわけではありません。インボイス制度など他の目的で必要となることはありますが請求書を発行していなくても商品やサービスを提供している以上代金を請求していくことは可能です。

しかし請求書を発行することで取引先は正確な代金や支払期日を知ることができます。商品やサービスによっては請求書の発行時点で代金が確定することもあります。言い換えると取引先にとっては請求書を受け取るまでは代金を支払いたくても支払うことが難しくなります。

そのため請求書を出し忘れると取引先は支払い業務を行わないため入金してもらえないことになります。

 

請求書の時効

厳密にいうと請求書に時効があるわけではありません。請求書の発行自体に時効があるわけではなく請求の根拠となる代金請求権に時効があります。人に何かを請求できる権利のことを「債権」といいますが債権は一定期間が経過すると時効によって消滅する可能性があるのです。

 

時効期間

一般的な請求権の時効は5年となっています(請求権の発生時期や権利の種類、契約上の条件によっては期間が異なることがあります。)。

もっとも、時効期間が経過したからといって当然に権利が消滅するわけではありません。期間経過後に時効によって利益を受ける人が時効の援用をすることによって請求権が消滅します。時効の援用というのは、時効によって利益を受ける人が時効の利益を受ける意思表示をすることです。

時効を阻止する方法もあります。時効期間をリセットしたり一時的に完成を猶予したりする方法です。

そのため請求を忘れてしまっても時効期間が経過し、かつ時効の援用がされていなければ売掛金等の請求権は消滅しません。また時効援用がされても時効の更新や猶予により時効が完成していないこともあります。

 

時効の更新

時効の更新というのは一定の事由があった場合に、時効期間がリセットされて初めから期間を数え直すことです。取引先である債務者が請求権の存在を認めたり、訴訟により請求権が認められたりすると時効期間が更新されます。詳しくは後述します。

 

時効の完成猶予

時効期間が更新されてはいないものの一時的に時効の完成を猶予してもらえることもあります。例えば、時効完成が間近に迫っている場合に相手に支払いを請求すると6か月間だけですが時効の完成が猶予されます。猶予されている間に訴訟などにより時効を更新することになります。もっとも猶予期間中に請求を繰り返しても猶予の効果は生じません。請求による時効完成猶予をするときには内容証明郵便など証拠に残すことが大切です。

他にも仮差押えや民事調停などの手続きにより一時的に時効が猶予されます。

 

<関連記事>内容証明郵便を出す方法や費用は?弁護士に依頼するメリットも解説

 

電子化と時効

請求書の発行も電子メールなどにより行われることがあります。相手から支払期限の猶予の申し込みが電子メールなどで行われたときには債務の承認を示す証拠となりえます。時効期間が間近で内容証明を送付する余裕もないときにはメールで請求して時効の完成を猶予する方法も考えられます。

 

時効について詳しくは、「債権回収、借金には、時効がある!消滅時効とその対処方法について解説!」をご覧ください。

 

請求書を出し忘れた際の対処法

請求書を出し忘れたことに気づいたときには落ち着いて対処することが大切です。

 

上司と取引先に連絡する

請求書を出し忘れた期間が長いと時効にかかる恐れもありますが、時効にかからなくても相手の経理処理への影響などもあるため上司の判断を仰ぐことが大切です。取引先の資金繰りに支障が生じる可能性があり、また自社への信頼に影響するためなるべく早く事実を報告する必要があります。

 

請求書を改めて送付する

請求書自体の作成を忘れていた場合には改めて発行して速やかに送付します。

作成した請求書が手元に残っている場合であっても支払期日などに変更があれば再発行する必要があります。

相手の事務処理や資金繰りにも影響することから請求書の発行に際し何か要望がないか事前に確認しておいた方がいいかもしれません。

 

改善策を考える

一度起こったことは何度も起こる可能性があります。そのため請求書出し忘れの原因を分析して同じことを起こさないようにすることが大切です。同じ取引相手に再び請求書の出し忘れをしてしまうと請求書以外の部分でもミスがあるのではないかと不安を与えてしまい取引の見直しにつながる恐れがあります。原因に応じて請求書の出し忘れを防ぐ方法を検討する必要があります。

 

売掛金管理については、「売掛金管理とは?管理の仕方やトラブルの対処法を解説」をご参照ください。

 

請求書の時効を更新する方法

請求書を出し忘れて売掛金の時効が迫っている場合には時効期間を更新することが必要です。時効期間が更新されることで期間がリセットされ時効を阻止することができます。請求権の時効の更新方法にはいくつか種類があります。

 

判決や調停などによる更新

訴訟を起こすことで請求権の時効を防ぐことができます。訴訟中は時効の完成が猶予され、勝訴判決をもらうことができれば判決の確定により時効が更新されます。判決以外にも訴訟上で和解したときや民事調停、家事調停が成立したときにも期間が更新されて請求権の時効が伸びることになります。

確定判決やそれと同等の効力をもつ裁判上の和解や調停により権利が確定したときには時効期間は10年となります。

調停などが不成立となったときには請求権の時効はリセットされませんが、手続き終了時から6か月間は時効の完成が猶予されます。そのため期間内であれば改めて訴訟などにより売掛金の請求をしていくことも可能です。

 

強制執行による更新

強制執行をすることでも時効期間を更新することができます。強制執行をするためには事前に確定判決書や執行証書などの債務名義と呼ばれる公的な文書が必要となります。抵当権などの担保権を実行することでも請求権の時効を更新することができます。担保権の実行は債務名義がなくても行うことができます。

仮差押えについては請求権の時効をリセットする効果はありません。しかし手続き終了時から6か月間は時効の完成が猶予されます。そのため時効の完成を阻止するために仮差押えをしたときは時効が猶予されている間に訴訟などを起こす必要があります。

 

<関連記事>強制執行による債権回収|手続きの流れを分かりやすく解説

 

債務の承認による更新

取引相手である債務者に売掛金請求権が存在することを認めてもらう方法もあります。債務の承認により時効期間が更新され最初から期間を数え直すことになります。債務の承認の方法は特に決まっていませんが口頭でのやり取りでは物証がなくトラブルになりやすいので書面などに残すことが必要です。

未払いの売掛金がいくら残っているかを記した書類に署名押印してもらうことが有効です。

また、全額ではなくても一部を支払ってもらうことも承認にあたるため時効が更新されます。請求権の存在を認めたからこそ支払いに応じたと考えられるからです。銀行などを通じて支払ってもらえば証拠に残ります。

 

債務の承認について詳しくは、「消滅時効援用における「債務の承認」とは?分かりやすく解説」をご参照ください。

 

まとめ

・請求書を出し忘れても売掛金などの請求ができなくなるわけではありません。時効期間が経過して、かつ時効の援用がなされることで請求権は消滅します。

・売掛金の時効期間は原則として5年です。請求権の発生時期や種類、契約条件などにより期間が異なることがあります。

・時効の援用がなされたとしても請求権が消滅するとは限りません。時効は更新されたり猶予されたりすることがあります。

・請求書を出し忘れたときには関係者に速やかに報告して改めて送付します。

時効期間は債務者による債務の承認や訴訟などにより更新、猶予されます。

 

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請求書を出し忘れても直ちに時効によって権利が消滅するわけではありません。また時効期間が経過したとしても当然に請求権がなくなるわけでもありません。時効が本当に成立しているのか一度債権回収を専門にしている弁護士に相談されることをおすすめします。

 

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